6話
本日、1話目です。
翌日、朝の準備をして秀樹が来るのを待っていた。
ピンポーン♪
チャイムで外に出て、秀樹とともに学校へと向かう。他愛もない会話をしていつも通りの道を歩んでいた。
「ちなみにさ、十森って好きなやつっている?」
「なんだよ急に。そんなの聞いて恋バナでもする気かよ!」
話題も尽きようとしていたときに秀樹から恋愛の話が入ってきた。オレは何がなんでもこの話を成立させたくなかった。
「十森はいるのかと単純に気になったんだよ〜んで、いるの?」
「そんな真面目な話、今までしたことないじゃん!」
「いいからさ、教えてくれよ〜オレの好きな人も教えるからさ。てか、付き合っている人とかいたりするの?」
秀樹と今だけはこの話題をしたくなかった。何としてでも話題を変えたい!
そう思って、考えているフリをしながら周りの様子に注意を向ける。すると、同じ男子バド部の西岡を見つけた。
西岡淳同じ年で笑顔が爽やかなイケメンだ。しかも、運動もできるし、頭もいい。さらに、ピアノが弾ける!小学校から弾いていて、全校集会で校歌の伴奏もしていたほど上手い!
その西岡が彼女と歩いているのを見かけた。たしか、最近になって付き合い始めたはずだ。
「おい!そんなことより、秀樹!見てみろ!西岡が彼女と一緒に歩いているぞ!見たことある顔だ!」
「まじか!誰だ?!」
「あの子は、たしか、、女子バド部の子だ!!秀樹、名前とかわかるか?!」
「待て!その話は本当か?!どこだ!!」
オレが指で示した先を秀樹と一緒に見つめる。西岡が自転車を引いていて、女子と一緒に歩いていた。お互いに笑顔でとてもいい雰囲気で歩いていた。付き合いたての距離感だというのが見ているだけでよくわかった。
横目で秀樹の方を見ると、完全に意識が西岡たちに移っており、西岡の彼女の顔を見つめていた。
「十森!あの2人って付き合っているのか?!」
「わからない。でも、朝の登校の時間に自転車を降りて一緒に歩くぐらいの関係性であるということだ!」
「くそ〜〜〜〜!イケメンめ〜〜〜!!!」
「秀樹、これは、部活のときに問い詰めるしかないようだな。」
「そうだな。部員みんなで会議だな。」
そこからは、秀樹と2人で西岡たちの動向に注意を向けながら、学校の門をくぐっていった。
なんとか、秀樹との会話を切ることができた。。。
紗英との関係性が変化してしまった、あの事件だけは避けたいと直感的に感じてしまっているのだ。
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「ちょっと!十森!」
教室に入り、カバンを自分の机の上においた瞬間に紗英から声をかけられた。
正直に言って、非常に気まずい。とりあえず、挨拶だけしておこう。。。
「おう、難波か。おはよう。」
「おはよう。じゃない!昨日のメールなんだけど!」
紗英は怒っていた。理由は簡単だ。
メールを送ろうとして送信ボタンをクリックした。ここまでは良かったのだ。画面が変わったときには、ログイン画面に戻っていたのだ。おそらく、長い間、ログインして操作しなかったからログアウトされてしまったのだと思う。
その後に、もう一度、送信しようとしてみたのだが、なかなか踏ん切りがつかず、ズルズルと引き伸ばしにしていた結果、夜中になってしまい送ることを断念したのだ。
「ごめん!あのあと、パソコンを姉にとられてさ。なんか大事なメールだった?」
とぼけることにした。パソコンのメールだからこそできる方法だった。昔は「寝ていたから返せなかった。」とか「パソコンが壊れてメールできなかった。」といった、あくまでも自分の原因ではないのだと責任逃れする方法があったのだ。
さすがに、この方法なら紗英も納得してくれるはずだ。
「なにそれ!メール来るの待ってたんだけど!!夜にでも返してくれればよかったじゃん!」
ダメだった。。。そう言えば、一度怒らせると、なかなか許してくれないのだ。こうなったら、、、
「ごめんなさい!!!許してください!!何でもします!!」
許してもらえるまで頭を下げるしかないのである。紗英の気が済むまで頭を下げてやる!
前の世界で培った営業スキルをフルに使い、謝り続けた。
「え、十森ってそんなんだっけ?いや、別にそんなに怒っていたわけじゃないけどさ。」
嘘つけ。そのセリフは、オレを叩こうと用意した教科書を前に無理がありすぎる。
だが、もちろん思ったことを言うと、火に油を注ぐことになることを容易に想像ができた。だから、黙って台風が通り過ぎるのを待っていたのだ。
「わかったよ。それなら、部活の帰り道にサラダ焼き買ってくれたら許す。」
「でも、買い食いは校則違反になっちゃうんじゃ、、?」
「え?なんか言った?それとも、もっと高いものがいいの?」
「はい。奢らせていただきます。ただ、今日はお金ないから明日でもいいか?」
「仕方ないな〜〜いいよ!」
気づいたら、サラダ焼きをおごることになっていた。おそろい子だ。女性を怒らせるといいことが何一つないのは、子どものときもそうなんだと実感した。
「そうだ。部活から帰るときは近くの公園に集合ね。一人できてね。」
「わかりました。」
わかっている。これは、公園に行くと女子バド部が大量に待っていて、すごい量を奢らされるに決まっている。今日のうちにお小遣いもらえないか相談しておこう。
「そういえば、難波。そんなに怒るぐらい大事なメールってなんだったんだ?」
「う〜〜んとね。その時はすごい大事だったの。でも、もういいや。」
「え?もういいのにサラダ焼きをおごるんですか?」
「当たり前でしょ?十森がメールを返してくれれば夜もぐっすり眠れたのに。」
「そんなにかよ!今言えよ!」
「もういいの!じゃ、またね!」
そんなことを言って、紗英はクラスで仲良くなった友だちのところに話しかけにいった。
気が重い。1000円あれば許してくれるだろうか。
前の世界で社会人だったときは、1000円ぐらいならすぐに払えていたが、中学生では厳しい部分が大きい。
今年もらったお年玉の残りを探すしかないか。朝から憂鬱になりながらも1日の用意を進めるか。




