5話
本日3話目です。
席がとなりになってから、2週間が経った。紗英との関係は相変わらずの関係であった。朝に挨拶をする程度の関係を継続していた。
体験入部が始まったことに対してそれぞれの部活の状況報告をすることもあったが、他に話すこともなく、単調な日々を過ごしていた。
今日も何事もなく、部活を終えて家についた。
「ただいま〜」
玄関を見ると、姉の靴を見かけた。
「おかえり〜〜♪」
「どうしたの?テンション高いじゃん。」
2つ年上で高校2年生、姉の亜美が無駄にテンションを上げて廊下を歩いてこちらに近づいていた。
「最近できた彼氏がプレゼントしてくれたんだよね〜〜♪」
そう言って、見せてきたのは、この時期に流行していたWILLCOMの携帯電話だった。定額で話し放題ができる携帯電話としてリリースされて、一躍有名になった機器だ。よくカップルで揃えて長電話をするために使っていると聞いたことがあった。
「よかったじゃん。でも、誰が携帯料金払っているん?」
「もちろん彼氏だよ〜。今回の彼氏はバイト先の店長だからお金に余裕があってすごいんだよ〜」
そう言えば、この頃に姉はラーメン店でバイトしてバイト先の店長と付き合っていたんだった。しかも、相手は30歳の男性だったはず。あの頃はすごいとしか思わなかったが、以前の自分と似たような年だと思うと、恐ろしさを感じてしまう。
プルルルルルルルルルルルル〜〜♪♪
年の差のカップルの恐ろしさに呆然としていると姉の持っている携帯が鳴った。
「あ、彼氏から電話だ〜♪母が帰ってきてもウチはいないって言っといてね〜〜!」
そう言って、玄関から出て行ってしまった。若いときの恋愛は視野を狭めてしまうのだなと思ったが、精神的には、今の紗英とオレでは姉と店長以上の年の差があることに気づいた。
そんな思いを振り払いながら、2階にある自室のパソコンの電源をつける。
「それにしても懐かしいな。中学生のころはパソコンでメールしていたよな。」
YAHOO!のサイトからメール利用のログイン画面に移動した。
この世界にきて、とても困ったのがパスワードだった。思い出すことができずに何回も試行錯誤してようやく思い出して利用できている。
新着メールを確認すると3通きていた。1つずつ見ていこうとカーソルを移動していく。
1つ目
【From 眞島
今日の授業で言ってた宿題ってなんだっけ?教えて〜】
マッシーからのメールは定期的に来るが、ほとんどが宿題のことだった。たしか今回のは、英語の予習があったはずだ。
【From 十森
今日の宿題はUnit2の予習だから、がんばれよ。】
2つ目
【From 智
なんか、女バドの難波からお前のアドレスを教えてくれって言われたんだけど教えていいか?】
智からのメールをみて心がはねた。思いもしない言葉におどろいた。冷静を装いながら返信をする。
【From 十森
いいよー】
メールを送りながら、何かしてしまったのだろうかと考えを巡らせてみたが、全く分からなかった。このままでは埒が明かないので、3つ目のメールを確認した。
3つ目
【From 秀樹
明日さ。学校行くときに一緒に行こうぜ!】
登校のお誘いメールだった。多分だが、紗英とのことを聞かれるんだろうな。少し嫌な予感もするが、ここで断れば、秀樹との関係が悪くなるのも嫌だ。
【From 十森
オッケー。おれんちに着いたらチャイムでも鳴らしてくれー】
来ていたメールを返し終えて、メールサイトを更新する。万が一、新しいメールが来ていたときのことを考えていつもしているのだ。
すると、新着メールが2通来ていた。
1つは智からだった。開いてみてみると、教えたことに対するメールだった。2つ目のメールは知らないアドレスからのメールだった。
【From ??
やっほー!十森だよね?!誰だと思う?】
【From 十森
難波だろ?智から聞いてるぞ!】
数分あとには同じアドレスからメールが来ていた。
【From ??
正解!!紗英だょ〜!登録してね〜〜!】
【From 十森
わかったよ どうしたん?】
メールアドレスを登録して名前を表示できるように設定した。登録名を難波にした。
【From 難波
テスト範囲を教えてほしいの!】
紗英からのメールの返信は早い。この時代はほとんどの中学生がパソコン機器でメールをしており、すぐに返ってこないことが基本である。しかし、一部、携帯をもっている選ばれし人間たちは携帯電話でメールをする。返信が早く、リア充には必須のアイテムである。オレもお願いはしてみたこともあるが、母親から高校生でないと買わないと言われている。
紗英は携帯を持っていることがアドレスからわかるため、羨ましく思いながらテスト範囲を伝えた。
【From 難波
ありがと〜〜!すごい助かる!てか、テスト勉強してる?】
このメール内容にも懐かしさを感じる。中学生あるあるなのだろうと思い、
【From 十森
もちろんしてるに決まってるだろ〜次の中間テストで勝負しようぜ!】
【From 難波
いいよ!点数で負けたら罰ゲームね!!】
【From 十森
おけ!覚悟しとけよ!】
何気ないやり取りをしてメールを終わりにしようとしていた。次のメールがきたら理由をつけて終わりにしようとメールを待っていた。
【From 難波
あとさ、十森のこと好きだって言う子いるんだけど、どう思う?】
心臓がバクバク破裂しそうなリズムで鳴り始める。驚きと疑問で返信ができなかった。
手が動かずにパソコンの画面を見て動けずにいた。すると、玄関からのインターホンが鳴り響いた。
急いで下に降りて、玄関をあけた。新聞の勧誘だった。
「今、親が外に出てしまっていて伝えておきます。」
そう言ってから、階段をあがりパソコンを向き合う。
なんて返信をしよう。紗英がオレのことを好き、、、なのか?いや、このパターンは紗英の知り合いが紹介してほしいと言っているのかもしれない。そもそも、『どう思う?』ということは、確定ではないということだ。
メールの返信場面で止まっていたため、あくまでも知らないということで返信をしようとキーボードに手をおいたとき、ふと、あの頃のことを思い出した。あいまいなやり取りのせいで冷戦をしてしまったこと。ずっと後悔していた。そう思った瞬間にキーボードで書き殴っていた。
【From 十森
それって、お前のこと?】
送信のところまでカーソルを持っていく、あとは、クリックするだけだ。マウスを持つ手が震える。押すまでの刹那のような時間が非常に長く感じた。
送っていいのか。これで、違ったらどうしよう。もしかしたら違うのかも知れない。
だけど、嫌だ!!!!!
クリックをし、画面が変わった。
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