3話
お疲れさまです、
本日も2話くらいは投稿したいと思います。
その日の5時間目に部活動紹介が体育館で行われる予定になっていた。新入生に対して、それぞれの部活動が活動内容を紹介する。人気の少ない部活にとっては、部員を確保するために笑えるような劇をする場所になっており、ある程度の人気がある部活においては話をするだけか、男バスのように悪ふざけをして自分たちがたのしむ催し物になっていることもある。
昼休みのうちに着替えたユニフォームだったが、寒さの抜けない4月の最初は肌寒く感じていた。
基本的には、ユニフォームでの参加になっているが、上から運動着の長そでや長ズボンを着ている部活が大半であった。
先生たちに促され、立ち位置につくと副部長の智と最終の打ち合わせをした。
「ここでオレが挨拶をして、それに続けてほかのやつらが揃えてかけごえをするでいいんだよな、智。」
「そうそう。てか、十森、余裕そうだな。緊張とかしないのかよ。」
「うん?まあ、本番には強いからなー。」
「何いってんだよ、試合になると体肩余ってるくせによく言うぜ。」
中学生のころのオレは、緊張しがちでこういうイベントや試合のときには体中に汗を流して緊張していたな。
でも、社会人のときに何回も大勢の前でプレゼンや挨拶をしてきたから、今は余裕なのかもしれない。
智たちにとって唯一の掛け声をあわせる練習をしている様子を横目にぼーっとしながら、順番を待っていると、次の女子バドミントン部の話し声が聞こえてきた。
「うちが『基礎打ちー!』って言ったら、返事してやってこう!」
「「「はい!」」」
女子部長の話に他の部員が返事で答える。すごい連携だなと感心する。
「そして、最後はスマッシュになるから、派手にやっていこう!」
「「「はい!」」」
「じゃ、みんなよろしくね!」
「「「はい!!」」」
気合は十分のようだった。何気なく、紗英を探していると集まりから少し離れてそわそわしていた。
「よ、難波。」
「うわ!十森か!おどかせないでよ!」
「いや、そんなつもりではないけど、緊張してる?」
「緊張っていうか、うち、スマッシュ苦手でさ。少し心配でさ。」
そういえば、やり直しの前に話ししたことを思い出す。
【4月にあった部活紹介のこと覚えてる?実は、あのとき最後のスマッシュが失敗して、しばらくトイレで落ち込んでたんだよね。】
なんとかできないか思案を巡らせてみたが、すぐに妙案が思い浮かぶわけもなく、準備のアナウンスが流れて智に呼ばれた。
残された数秒しかなかったが、紗英の緊張した顔を見ながら
「大丈夫!難波が練習して、副部長としてがんばってるの知ってる!それに万が一、失敗しても人はたくさんいるからバレないと思うし、1年生にばれても気にしなくてもいいと思し、それに基礎打ちは2人んでするから難波だけの失敗にもならないと思うからさー、なんか、ごめん、話がまとまらなくて。」
紗英を励まそうといろいろ言ってみたけど、話が全くまとまらない。何を話しようとしたのかわからないまま、自分の言葉足らずさを悔やむばかりだ。
無意識に外していた視線を紗英にもどしてみると、紗英が笑っていた。
「十森!ありがと!なんか自分よりも緊張して話ししてる十森を見てたら、嘘みたいに緊張がなくなっちゃた!がんばってやってみるね!」
そう言い残して、紗英は女子グループとともに体育館の方へと移動していった。
紗英のいなくなった廊下を見ていると、後ろから衝撃がはしった。
「痛っ!!」
「おい!部長!行くぞ!」
智だった。男子グループの方も練習が終わって、移動しようとしているところだった。
教室から体育館へつながる渡り廊下を歩いていた。体育館の方から笑い声が聞こえてきた。たしか、俺達の前はバスケ部だったはずだ。誰かが肩車でダンクでも決めたんだろう。さすがは、男子バスケ部だ。練習は不真面目だが、ふざけることには真面目で有名だから、顧問の先生にいつも叩かれているらしい。そんなことを思いながら渡り廊下を歩いていた。
「なあ、刹那。」
声をかけられた。だれかと思って振り返ると、秀樹だった。
「おう、どした?」
「刹那って紗英と仲良かったん?一緒にいるところ見かけてよ。」
「クラス一緒になって、少し話すようになったんだよ。」
「そっか。ごめん、変なこと聞いたわ。部活紹介、がんばろうぜ。」
そう言って、秀樹は走って行ってしまった。いつもの秀樹らしくない態度に少し驚いていた。長く感じていた渡り廊下も残り少しで体育館に着きそうになる。
どうやら、女子バドミントン部がはじまったようだ。さっきまで落ち着いていたのに、また、そわそわして体育館をのぞいてしまう。
「次!スマッシュ!!」
「「「はい!!」」」
号令に合わせてシャトルの打つ音が激しいものに変わった。シャトルを打つときにラケットに正しく当たったときの音はいつ聞いても気持ちがよい。乾いた「パン!」という音が体育館内を走り回っている。プロになるとガットの張る強さがかなりのものになるので、金属音に近い音になるのだが、中学生のラケットではそこまでは出ない。気持ち良い音に耳を傾けていると、
カンッ!!
明らかに失敗した音が聞こえた。それと同時にオレの心臓が跳ねた。バドミントンというスポーツはラケットのフレームに当たってしまうと先程のような音が出てしまう。さらに、スピードも出ないので、ほとんどの場合は相手コートに行くことはない。万が一、行ったとしてもスマッシュにはならない。
すぐに紗英を探した。音の下方向を見ると、紗英のラケットから音がしたようだった。
紗英は少しうつむいていて、ペアの子がすぐに再開しようとしているのに気づいていないようだった。このままではまずいと思った。
「ファイトーーー!!!」
とっさに大きな声が出た。それは、基礎打ちのときに部員全員が掛け声にしている言葉だった。周りにいた男子バドミントン部の部員の視線がオレに集まっていた。オレは、その中にいる智に目で合図をした。
「ファイトーー!!!」
智がオレに続くように掛け声を出す。それに続くように男子バドミントン部が声を出し始める。その声に反応するように紗英が顔を上げる。そして、こちらをみたときに目が合う。
そして、紗英のペアの子がシャトルをあげる。紗英はとっさに反応をして、シャトルに追いつけるように最短距離を足のステップを活かして動く。シャトルの下に追いついて力強くラケット振るために体にひねり運動を加えていく。紗英の動作に目を奪われてしまう。そして、紗英がラケットを振り抜いたと同時に乾いた音が響く。シャトルはペアの子がいるコートへと真っ直ぐに進み、相手コートに落ちる。
それは、まるで自分のチームが決勝戦で優勝が決定した最後のような気持ちになった。
「ナイッショーーー!!」
気づいたら声が出ていた。それは試合の中で相手コートに落ちるようなナイスショットが決まったときに使う応援のセリフだった。
「いやいや、試合じゃないんだから、それはおかしいだろ。」
智が振り向いて言う。たしかにそうだ、試合で使うセリフを練習中には使わない。ただ、この気持ちの高ぶりを止められなかった。
「いいだろ!盛り上げてやろうぜ!」
「それもそうだな。ナイショーー!!!」
それを皮切りに男子バドミントン部全体で掛け声を女子バドミントン部の基礎打ちに向かって行う。新入生からも応援の声が聞こえるようになってきた。体育館で見ている人たちが女子バドミントン部を応援していた。
女子バドミントン部も応援に応えるようにラケットを振っていた。シャトルを追いかける体のキレもよくなっているのがよくわかる。
そのまま部活紹介の終わりまで続いて、終わりの挨拶を終えたときの拍手はそれまでの部活動よりも多いように感じた。
全ての部活動紹介が終わり、そのまま下校の流れになった。職員会議があり、部活はなく下校になった。
智たちとも明日の部活について少し話をして帰ることにした。
「刹那ーサラダ焼き食べにいこうぜ!」
智が校門を出たところで誘ってきた。
学校の帰り道に六方焼の売っている売店があり、たいやき生地の中にハムとサラダそしてマヨネーズを主体とした餡が中学生の心を掴み、非常に人気になっている。校則では禁止されているが中学校の生徒が大好きで寄り道することが多い。
「いいな!行こうぜ。」
学校からは少しだけ離れた住宅街にきた。中学生に愛されているサラダ焼きだが、なんといっても味と値段のバランスがよてもよいのだ。1個百円という学生にとって買いやすい価格帯であることで小銭を持ち歩かなくてもすむのが愛されている理由の一つであった。
みんなで注文して店の近くで食べながら明日からの部活について話をしていた。新入生の体験入部の練習メニューを考えていた。
「てか、女子の部活紹介のときに刹那が大声だしたのびっくりしたわ。
「オレもそう思う。どうして掛け声なんかしたの?」
部員たちから部活紹介で起きたことについて聞かれた。
「いや、特に理由なんかないよ。」
「そう言えば、刹那が声を出す前に女子のメンバーでミスしてパニックになってた子いなかった?」
誰かが余計な一言をつぶやいた。
「え、そうだった?」
「あれ誰だったかな。遠くて顔がよく見えなかったんだよな。見てたやつ居る?」
まずい、変な予測をされてもいいことがない。なんとしてでもバレないようにしなければ。そう思い、話をそらせる話題を考え出す。すると、秀樹がひらめいたような顔でこちらを見た。
「もしかして、刹那がみてた人ってsーー」
「おい!お前ら!買食いしてるやつら!校則違反だぞ!」
怒鳴り声が聞こえてきた。声を方をみると、大通りの方から生徒指導部の先生が走ってきていた。
「ヤバい!!おい!にげるぞ!!」
「そうだな!みんな別々に逃げろ!捕まるな!」
そう言って、部員の全員が散り散りに逃げていく。オレも全力疾走で逃げた。
幸いにも部活が休みでラケットを持ってきていないため遠目ではバドミントンであることがバレることはない。あとは、だれも捕まることがなければバレることはない。
必死に逃げた。家の方とは別の方向に逃げた。気がつくと、部活で使用している場所の近くにあるファミレㇲまで来ていた。建物の影で息を整えて、今後のことを考えた。
部員のやつらには後でメールして確かめるとして、先生がうろついてるかもしれないから、家に帰るのは少し遅らせてからにしよう。そんなことを考えていると、
「あれ、十森じゃん、こんなところでどうしたの?」
高い声に聞き覚えがあった。顔をあげると目の前に閑野静だった。閑野は、ハーフのような見た目でキレイな用紙をしており、茶色の地毛が似合う女子だった。
閑野とは、中1のときに同じクラスで一時期とはいえ仲良く話をしていた間柄だった。1年生の2学期以降は話すことはなくなり、閑野は女子バドミントン部だったが、それもやめてしまって話すことは全くなくなっていた。
「お、閑野じゃん。久しぶりだね。」
「そうだね。で、こんなところで何してるの?」
「ちょっとね、逃げて来たと言うか。閑野はなんでここにいるの?」
「私は友だちと話をして帰っていたところ。何から逃げてきたの?」
「いや、それはちょっと言えないんだ。」
「言えない人間ってことは女子トラブル??」
「違う!先生から逃げてたんだよ!」
そんな他愛もない話をしばらくしていた。少し時間がたち、帰ろうと話を終えようとした。
「んじゃ、オレはそろそろ帰るわ。またな。」
「ん。女子を怒らせたらすぐに謝ったほうがいいからね。」
「違うっての!!」
閑野と別れて家までの道を急ぐ。部活帰りの途でもあるため先生たちが知らないような裏道で帰っていた。
車では通るのが難しい道を歩いていく。桜も散り始めた木々たちがよく目につく。花びらの間から葉っぱが見え隠れしている。風が吹くたびに花びらが舞い落ちて学生服の上に落ちてくる。
「お!刹那じゃん!」
振り返ると秀樹がいた。
「秀樹も逃げ切れたか。捕まったやつがいるか知ってる?」
「あーオレたちは捕まっていないと思う。オレが逃げてるときに先生に電話が鳴って、出ていたから逃げ切れていると思う。」
「それならよかった。一応、後でメールで聞いてみようか。」
「てか、さっきの話の続きなんだけどyーー」
「そういえば!明日の体験入部のときに秀樹が新入生たちに説明とかしてくれないか?」
秀樹が店の前で話をしていた続きをしようとしているのに気づいた。話題を変えることに力を入れる。
「なんでだよ。部長であるお前がやれよ。」
「いやいや、話がうまいのは部活の中で秀樹が1番だからたのむよ。」
「わかったよ。どんなことを話せばいいの?」
なんとか話題をすり替えることに成功した。家につくまえで話を持たせてみせる。
そのあと、オレの家の前まで2人で歩いてきた。
「んじゃ、そういうことで秀樹、明日はよろしくな。」
「ああ。わかったよ。じゃあな。」
家の玄関を開けて座り込む。
すごい頑張った。30分ぐらい話し続けるのはしんどかった。今日は、さっさと寝よう。
ーーーーーーーーーーー




