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12話

本日、1話目です。





3人で学校を出て、サラダ焼きを食べに売店へと向かう。


「本気でサラダ焼き食べに行くのー?」


「ともちー!お腹減ったでしょ?これじゃ勉強できないじゃん。」


「いや、家で食べろよ。」


「十森はうるさい。」


校門を出て、歩道を歩いていく。ほとんどの生徒は下校が済んでおり、周りに人の姿は見られなかった。前に紗英と清水が歩いて後ろをオレがついていく形で道を進む。


学校を出て、しばらく進むと前から人影が見えてきた。


「お、智じゃん。何してんの?」


男子バド部で副部長でもある智だった。小走りで向こうから歩いてきていた。


「お、刹那か。女子と一緒になにしてんの?」


「いや、2人とは学校で話してて、返ってるところだよ。んで、何してんの?」


智はなぜか後ろを気にしていた。まるで、なにかから追われているようだった。


「実はさ、さっきクラスの友達とたこ焼きを食べにいつもの売店に行ったら、生徒指導の栗原にあってさ。死に物狂いでにげているところなんだよ。」


オレたちがこれからいこうとしていたサラダ焼きの売店はたこ焼きや六方焼なども売っており、生徒指導の先生たちも巡回のポイントになっている。


「それは、大変だったな。早くいけよ。もし、栗原にあったらごまかしとくよ。」


「まじか。ありがとう!!んじゃ、またな!」


そう言って、智は売店から離れるように走っていった。


「紗英ーこれさサラダ焼き食べに行ったら私たちも栗原先生に会っちゃうんじゃないのー?」


「たしかに。ウチは逃げ切れる自信あるけどね!!」


「わたしは無理だよー文化部だし。中学3年で生徒指導に捕まったら、高校受験を失敗しちゃうかもしれないしー。」


オレが智と話している間に2人で話を進めていたようだ。


「どうするー?大人しく帰るー?」


「んー十森はどうしたい?」


急に紗英から話を振られて、思考を巡らせる。中学生という身分でできることは限られているとはいえ、紗英たちとできることがないか。



「そこの3人、ちょっと待て。」


交差点で信号待ちをしているときに、横から声をかけられた。咄嗟に2人の前に体を乗り出して、声の主を見る。


「栗原先生。どうしたんですか?」


生徒指導の栗原先生だった。吹奏楽部の顧問とは思えないぐらいの筋肉隆々の様子はスーツからはみ出しそうになっているところから容易に想像できる。そして、何より顔が無表情なのだ。他者に威圧感を与えるのは怒りの表情だと思う人もいるかもしれないが、この人の話を聞くと怖いのは無表情なのだと学んだ。指導されているときも生徒が笑っているときも常に無表情なのだ。次に何をするかわからない不気味さを感じさせる栗原先生の顔の表情は体格の良さとマッチしている。


「この辺で走っている男子生徒見なかったか?」


「なんか、あっちの方向に走っていく人なら見ましたよ。」


オレは、智が走った方向とは別の方向を指さしながら伝える。


「そうか。お前らも明日のテストに備えて、さっさと帰れよ。」


そう残して、栗原先生は指さした方向に向かって歩いていった。


「今日は大人しく帰ろっかー」


栗原先生が視界から消えた頃に清水が切り出した。


「そうだね。女バドの先生にバレると試合に出してもらえなくなるから解散しよっか。」


「そうだな。また、今度だな。」


3人で合意をとり、大人しく下校することになった。それぞれの道に別れて帰ることになる。オレは、一人で家までの道を歩いていく、お昼を何にしようかと考えていると前からきた車が目に止まる。その車は目の前で止まり、窓が開く。


「あれ、刹那!学校は?」


母親だった。余所行きの服を着て、化粧もしていた。これからお出かけでもするのだろうか。


「今日はテストだって言ったじゃん。午前中で終わりだよ。」


「あーー!!そうだった。ごめん、これからお出かけするんだけどお昼を用意してない!」


まじかよ。お昼はてっきり用意してもらえているものだと思っていた。この時間から食べられるものと言えば、カップ麺ぐらいだな。


「わかったよ。カップ麺でも食べるよ。」


「お願いね!ホントにごめんね!!」


母親の乗った車は、止まっていたところからスピードを出していく。母親が乗っていた車は軽自動車だからだろうか、まるでスポーツカーの排気音のごとく大きな音が閑静な住宅街にこだましている。そうとう急いでいたのだろうか。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


家について、カップ麺が保管されている戸棚を開けると、そこにはいつもあるはずのラーメンがなかった。食べ物がありそうな冷蔵庫や机の上をみるが、中学生のお腹を満たしてくれる食材は見当たらなかった。


お腹が鳴る。食べ盛りのオレの腹は1食すら抜くことを許さないとでも言っているようだった。


空腹感が飢餓感に変わり行く中で、解決法を考えていると、家の固定電話が鳴った。


「もしもし」


「もしもし、あれ、せつくん?」


せつくんと呼ぶ電話の主に聞き覚えがあった。それもとても懐かしい。母方の祖母だった。


「せつくん、お母さんはいる?」


「今、出かけてるよ。」


「あら、それは残念。そう言えば、せつくん学校は?」


「今日はテストだから帰るの早かったんだよ。」


祖母の声を聞いてると、涙が出そうになる。あたたかい、いつもオレを気にかけてくれるおばあちゃんが好きだった。


「あら、お昼食べてないんだったら食べにおいで。」


「ありがと、おばあちゃん。じゃ、今から行くね。」


電話を切って、すぐに出かけられるように制服を脱いで、私服に着替える。自転車の鍵を見つけて、外に出る。


自転車に乗っている最中に祖母のことを思い出す。前の世界ではオレが大学4年生の終わりに癌で亡くなった。学生のころは、よく昼を食べさせてもらっていたが、大学を県外にしたこともあって病気が発覚するまでは会うことがなく、久々にあったときには病気に侵されており、元気がない姿が新しい記憶として占めていた。


そういえば、祖母が好きなおはぎが行く途中のスーパーマーケットに売っているのを思い出して、自転車で向かうことにした。



祖母の近所にあるスーパーマーケットにつき、おはぎが売っている食品コーナーを探していると、惣菜コーナーに置いてあるおはぎを見つけた。


「あれ、十森?」


「ん?難波じゃんか。」


そこには私服姿の紗英がいた。髪型も学校とは違い、ツインテールになっており、今どきの女子中学生とは思えないくらい大人っぽい雰囲気だった。


「こんなところで何してんの?」


「見てわかるだろ。おはぎを買いに来たんだよ。」


「あんた、おはぎ好きだったの?」


「いや、今からばあちゃんちに行くからお土産にな。」


「意外。十森って気を遣えたんだね。」


「うるせーな。難波は何しに来たんだよ。」


「言いたくない。」


紗英の顔に影が差した。直感的にこの話題は避けたほうがいいのだと思った。


「難波っておはぎ食べる?」


なせ、そんなことを聞いたんだ!あまりにも気まずいからと言って、おはぎが好きな女子なんているわけないだろー!


「うん。よくウチがおはぎ好きだってわかったね。」


セーフ!!耐えた!!もしこれで、「何言っての?」みたいなこと言われたらメンタルブレイクされていた!


「まあ、直感で?3個入りしかないから1個食べる?」


「いいの?!」


レジを通して、イートインスペースでおはぎを開けて、紗英に差し出す。紗英は一口でおはぎを食べてしまった。そして、満面の笑みで咀嚼している。食べることに夢中になっているようだった。また、意外な一面を見つけてしまったみたいで得した気持ちになる。紗英の食べている様子を見ていると、紗英と目が合い、さっきまで下がっていた目尻が上にあがる。


「何見てんの。」


「いや、何でもいいじゃん。」


長いこと紗英を見すぎたようで、訝しげな表情で紗英が見つめてくる。


「ごめんごめん。難波が美味しそうに食べるからつい。」


「忘れろっ!」


紗英が机の下で足を蹴ってくる。学校の机とは違い、イートインスペースの机は大きめのためか足に来る衝撃波は控えめだ。紗英からの攻撃を耐えていると、







「紗英?こんなところで何してるの?」



いい雰囲気だったところに水が差される。声の方向を見ると、紗英のお母さんらしき女性が立っている。近くには紗英に似ている姿の少女がいた。



「ごめんなさい。」


紗英は先程までのハイテンションから一転、まるで悪いことをしていた子どもが親に見つかってしまったときのような声を出して、席を立つ。そのまま、声をかけてきた女性の方に行く。そして、こちらを振り返らずに


「じゃあね。」


そう残して、去って行ってしまった。あっという間の出来事だった。


それにしてもさっきの人はお母さんなのか?なんか紗英が怖がっているところを見ると、よほど怖い人なのかな。


ご飯前におはぎ食べて怒られてたら悪いことしたかも知れないな。あとで、メールで謝るか。


紗英の様子の変化が気になりながらも祖母のことを思い出して、店をあとにする。




自転車に乗り、祖母宅へと急ぐ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




最近は、1話しか投稿できていませんが、継続していきたいと思います。

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