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11話

本日1話目です。




テスト1日目は、5教科のうち3教科のみが実施される。そのため、学校は午前中に終わり、部活もないため全員が下校することになっている。帰りの会が終了すると同時に生徒が動き始める。


明日のテストに備えて、勉強をしようと玄関へと向かっていく人。友達と1日目のテストの答え合わせをしている人。


個人的には終わったテストの答え合わせを友達とすることは効果的とは思えない。友達と答え合わせをしていくなかで一緒な答えになれば中も深まるかも知れないが、万が一答えが一致しなかったとき、正答もわからないまま不安にかられながら2日目の勉強をしなければならないのだ。モチベーションも下がるのだから、やる必要なんかないのだ。


横目で紗英と女子が1日目の数学について話をしている様子を見ている。2日目の勉強のために帰ろうとしているのだが、図書館からのことがあって紗英のことが気になって仕方ない。なんとか帰りまでに一言ぐらいは話をしてみたいと思ってはいるのだが、声をかけられないでいる。今日は、諦めて明日の自分に頑張ってもらおう。


下校に向けて、カバンの用意を終わらせて席を立つ。


「ねえねえ!この問題って答えなんて書いた?」


全く、問題の答え合わせなんかしても一点の価値もないというのに誰だ。顔を上げて、声の主を探す。すると、紗英がこちらの方を見ている。


「ねえ!聞いてる?今さ、ともちーと数学の答え合わせをしてるんだけど、ウチの答えと違うの。十森はなんて書いたの?」


紗英だった。どうやら、クラスの友達である清水友美(しみず ともみ 通称ともちー)と数学の答え合わせで2人の答えが不一致だったようだ。


だから、やるべきではないのだ。しかし、ここで答えなければ嫌なやつになってしまうかも知れない。丁寧に答えるとしよう。


「この問題は、先にyでまとめる必要があるから答えは清水の方があってると思うよ。」


「ちょっと!なんで、ともちーの味方なの?!」


紗英がこちらを向いて、叩いてくる。


「え、いてっ!なんでって、合ってるからで、、」


言い訳をすればするほど、紗英のオレを叩く手の力が強くなってきている。今では、手がグーになっている。肩が痛い。


「ちょ!怖いって!許して!」


「ウチの方があってるよね?!」


ここで紗英を否定したら威力がどうなるか分からない。従う他に道はなかった。


「はい。我々が間違ってます!!」


「よろしい。」


紗英はオレを叩いていた手を労るように反対の手でなでている。叩く方も痛かったのだろう。叩かなければいいのにと思わないでもないが、言ってしまうと、いいことがないので黙ることにした。


「ホントに仲がいいね、ふたり。」


紗英の横にいた清水がやり取りを見て、笑いながら言った。


「これは、仲がいいとは言わないだろ。暴力だDVだ!DV被害で警察に行くぞ!」


「何がDVよ。十森だって、ウチの足をよく蹴ってくるでしょうが!お互い様だよ。」


「それは、先に難波が蹴ってくるからだろうが。目には目をだ!」


「それもアンタがウチを怒らせるようなことをいうからでしょうが!」


「はい!認めましたね!先に足を出したことを認めました!DVです!」


「うっさい!!!!!」


また、手がくると思って上半身に力を入れていたら、足を強く蹴られてしまった。意識がなかった分痛さが尋常ではなく、よろめいてしまう。


「紗英、やめなよー十森が死んじゃうよ。」


清水がオレたちのやり取りを苦笑いで眺めていたが、紗英が蹴ったところで口をだしてきた。


「だって!十森が!」


紗英がオレを指さして、清水に向かって弁解を始める。


「ちなみにさ、DVって家庭内暴力だから。2人ってやっぱり夫婦だったの?」


「ちがう!!てか、ともちー!やっぱりって何?!」


「だって、2人っていつも夫婦漫才してるってみんな言ってるから。」


まさか、裏でそんなことを言われているとは思わなかった。足が痛すぎて、会話に参加できずにいたが、紗英が否定している話を耳できいて、少しショックを受けていた。


「そんなことより、ともちー帰ろっ!」


「いいけど、十森がそこで足痛めているみたいだから、助けてあげたらー。」


「ともちーが言うなら、、、保健室で保冷剤もらってくる。」


そう言って、紗英は教室を飛び出していった。オレはというと、足の痛みよりも否定されたショックに打ちひしがれていた。


やっぱり、紗英と付き合うのって難しいのかな。ちゃんと話すようになってから2か月しかたってないから仕方ないけど、、、


「十森。大丈夫ー?」


清水は紗英とは性格が違くおっとりしてしっかりしているが、紗英とは推しが一緒なことで仲良くなったらしい。


「ああ、ありがと。」


足の痛みはすでに治っていたため、立ち上がり清水のほうに顔を向ける。


「紗英、保健室いったから待っていないといけないね。十森は、テストどうだった?」


「んー控えめに言って自信ありだ。」


清水と2人で話をするのは初めてのためか、ありきたりな会話をして紗英を待つしかない。


「なにそれ。いいなー私は自信ないよー」


「いやいや清水も別に点数悪いわけじゃないんだろ。」


たしか、前の世界でも清水は平均点で75点ぐらいは取っていたはずだ。最初は謙遜をしているのだと思っていた。


「だってーテスト期間は推しのライブDVDを見てたから勉強してなくてー」


そうだった。清水はアイドルにどっぷりとハマっている女子中学生だったのだ。推しのキーホルダーや団扇を買っていたのを思い出した。


「それは、清水が悪いだろ。でも、そんなこと言って、数学の問題も紗英より正解してそうじゃん。」


「そりゃねー紗英は誰かさんと図書館で教えてもらっていたらしいけど、テストでは出なかったって言ってたからさー」



清水の目線がこちらを向く。まさか、バレているのか。清水から紗英にオレの気持ちをバラされるわけにはいかない。


「ふーん。そうなんだ。難波も大変だな。」


「んー?十森じゃないんだー?」


「何のことだ?」


「まーどっちでもいいけどさー」


よし。誤魔化すことができたはずだ。このまま違う話題に転換しよう。


「それよりも、清水の好きだって言っていた足ドルだけどさ。ライブとかはいかないの?」


「聞いちゃうー?!それがさーファンの会に入ってさーでも、チケットが買えなくてー。どうにかならないかなー」


「それは、きっと転売ヤーが買い占めてるじゃないの?」


「転売ヤー?なにそれー?」


あ、この世界はまだアイドルのライブチケットが転売されていることが社会問題になる前だった。てことは、今のうちからオレが転売をすれば、小金持ちに?!


よく考えてみれば、未来から来ているのだから仮想通貨や株を買っておけば、大人になるころにはオレも夢の億万長者だ。


「ねえ!2人で何たのしく話ししてんのよ?!」


後ろから衝撃が背中にはしる。


「イテッ!!!なに?!」


急な衝撃にバランスを崩しながらも足で踏ん張って後ろを見る。


「十森!ウチのともちーに気安く話しかけないでよ!」


「おい!なぜ、それでオレの背中にタックルをする必要があるんだ。」


「だって。せっかく、十森のために保冷剤をとりにいってあげたのに、ともちーと楽しそうに話ししてるから、イラッとしたの!」



「なにそれ。怖い!難波さんよ?勝手に保健室に行ったのはお前だろうがー!理不尽すぎる!」


「あ!お前って言った!ひどい!ともちー!十森がいじめてくる!!」


「十森、女子に向かってお前はダメだよー謝りなー。」


理不尽すぎる。ここにオレの味方はいないのだろうか。周りを見渡すが教室に残っているのはオレたち3人しかいなかった。


「てか、十森さー紗英が来てるの教えてあげてたのに上の空でヘラヘラと笑ってたよー」


「なにそれ!?ともちーにも謝って!!」


あ、これは謝らないとどうにもならないやつだ。


「すみませんでした。」


なぜ、オレが謝っているのだろう。叩かれ、蹴られて、タックルされて謝る。これはいじめではないのだろうか。


「ほら、もう帰ろ!」


紗英と清水が踵を返して、教室の出口へと向かう。真剣に落ち込んで椅子に座ろうとしていると、


「ほら、十森も!残ってると先生に怒られるよ!」


紗英がオレの腕を掴む。紗英の手はオレの小さくて、赤くなっていた。オレを叩いていたからだろうか。


「帰りにみんなでサラダ焼き食べに行こ!」


紗英はそう言って、オレの腕を強く引っ張って出口まで連れて行く。玄関まで紗英に腕を引っ張られていたオレは、その間、腕に神経を集中して紗英の手の感触にむずむずしていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「てか、私、お邪魔じゃないー?」



「ダメ!!昼は誰がいるかわからないから、恥ずかしいの。」





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