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10話

貯めていた分がなくなってしまったので、遅くなってしまいました。



図書館から自転車で家に帰るために漕ぎ始めてから気づく。家には母親の友達がきているのだった。すると、行く先を考える前に行きたいところがあったため、その場所へ向かい始める。


そこに着いたときに見えたものは森だった。樹齢が百数十年はあろうというおおきな木々が生い茂っていた。木々の合間に見えているのは古びた鳥居だ。ここは、神社であると同時に古墳なんだそうだ。そのため、小高い丘になっており、急な石段が正面から見えてくる。


自転車から降りて、神社へと向かう。階段を登って、頂上を目指していく。手入れがされていないだろう階段は苔だらけでところどころが風化して破損している。頂上につくと、社に向かってお辞儀をして境内に入る。そして、お賽銭箱の横にある段差のところに腰を下ろす。


ここは昔からのオレだけの秘密基地なのだ。生い茂った木々によって外からは見ることはできず、古い神社であるため誰もお参りに来ているところをみたことがない。


ここは、前の世界では切り開かれて綺麗にされていまい、オレの秘密基地ではなくなってしまったのだ。そのため、この時間は限られているのをオレだけがしっている。周りを見渡して感傷に浸る。


優しい風が時折、吹いていて気持ちがいい。風が顔にあたったとき、嗅いだことのある匂いが鼻腔をくすぐる。それは、マヨネーズを主軸にした生地を焼いたときにでる独特な匂いだった。サラダ焼きを食べるときに漂う匂いに間違いなかった。少し耳を澄ませると学生の声が聞こえてくる。おそらく、遊びのついでにサラダ焼きを買って食べているのだろう。


サラダ焼きといえば、最近、紗英と食べたことを思い出す。さらには、図書館で一緒に勉強したりと前の世界ではしたことのないことばかりで今まででは考えられないことだった。


紗英の様々な笑顔が思い出される中、ふと負の感情を浮かべている顔を思い出した。この世界で見たのではない。前の世界でオレが間違えた結果に嫌われてしまったのだ。


それは、前の世界では2人の中で通称「冷戦」と呼ばれる出来事が起きたのだ。口喧嘩をしたことは前の世界でもあったことだ。次の日になればいつも通りに話し始めていたが、あの日からは違っていたことをふと思い出す。



ーーーーーーーーーーーー


オレはあの日、紗英と普段通りメールをしていた。いつものようにテストのことや勉強のことをメインにふざけ半分のメールをしていた。



【From 十森

 てか、紗英ってすごいおもしろいけど、彼氏とかいないの?】


何気ない一言だった。やましい気持ちなんかなかった。


【From 紗英

 何?気になるの?】



そうしていく中で、紗英に彼氏を聞いたことから話題が恋愛になっていった。最初のうちはよかった。彼氏がいないというところから始まり、好きなタイプや芸能人の話をしていた。ちなみに紗英は某有名な5人アイドルグループのゲームが大好きな男性アイドルが好きらしい。


そして、問題のメールをしてしまう。



【From 十森

 紗英ってさ、好きな人いるん?】


【From 紗英

 それさ。秀樹からも聞かれてるんだけど、どうしたん?】


そのメールを見て、オレは驚いた。すぐにメールを返す。


【From 十森

 秀樹と付き合うの?】


メールの返信がすぐに来る。


【From 紗英

 どうかな?】


メールの意図が当時のオレには読み切れていなかった。頭の中で紗英と秀樹が2人で付き合うイメージが脳内でいっぱいになっていた。2年生のころから仲がよかったのだから、自分なんかよりも親密なのは当然なのだ。むしろ、オレのほうが紗英と仲がよくなっていたのだと勘違いしていた恥ずかしい人間のように感じられた。


その瞬間、粘度が強い嫌な黒い感情に任せるままにメールを打ってしまう。


【From 十森

 いいんじゃね オレにはかんけいないし】


メール送信完了の画面を呆然と見つめる。そして、送ったことに後悔をした。今さら、送信取り消しなんてできるはずもない。後悔と戦っているうちに返信が届く。



【From 紗英

 なんで、お前にそんなこと言われないといけないの。ウチの勝手でしょ。】



そのメールを見てから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。実際には数分なのかもしれない。しかし、ここで考えている間にも紗英と秀樹がお互いに両思いであることを知って、付き合い始めているのかと思うと、謝罪のメールを打つことができなかった。


そのまま、紗英からのメールに返信しないまま寝落ちをしていた。朝になり、いつものように学校へと登校する。今までに比べて、色が抜け落ちてしまったような風景しかない。歩いていれば、気持ちが晴れるかと思ったが、登校の道は同じ中学生の人たちが視界のどこかにはいて、紗英と秀樹が並んで歩いているイメージが勝手に湧いてくる。できるだけ、視界に何もいれないように下を向いて、何も見ないように歩いた。


学校に着いてから、教室に入る。紗英の後ろ姿が視界に入る。反射的に視界の中から紗英の姿を消して、席に座る。


紗英から話しかけられることはなかった。


月日は流れ、紗英とコミュニケーションを取らないまま1か月が過ぎていた。オレから話しかけることはできず、プリントをもらうときは目を合わせられなかった。おそらく、紗英はこんな情けないオレに失望しているのだと思った。


さらに追い打ちをかけるように風のうわさで「紗英と秀樹が付き合っているらしい」という内容が耳に入ってきた。その瞬間に気づいてしまった。オレは紗英のことが好きだったのだという気持ちに。それと同時にもう、全てが終わったのだと悟った。


あのメールの瞬間、オレは勝負の舞台から自ら降りた。勝負することを諦めたのだ。一方で、秀樹は振られれば傷つくことを恐れずに勝負して勝ち取ったのだ。


もう、オレが紗英と秀樹のことに何も口も割り込みさえも出せないし、できないのだ。



紗英への恋心に蓋をして、抑えつけて、抑え続けて、紗英との関わりをゼロにして、半年以上、話すことはもちろんのこと目を合わせることもなかったのだ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「あのときは、すごかったんですよ。1月までの半年以上を話さないってすごくないですか。」



オレは、社の方をみて呟く。


「さらにこのあと、大学まで紗英とは遊んだり、温泉旅行も行ったんですけど、友達以上の関係のままだったんですよ。」



深い溜息をつく。風が吹いた拍子に木々が揺れる。オレのため息は葉の擦れる音の中に消えていったのだ。




「よし!決めた!この世界では、難波に好きになってもらって、未来を変えてやる!!」



オレは立ち上がり、神社に誓いの言葉として、大きな声で宣誓をする。



そして、境内から出ようと背を向けて歩き出す。その瞬間に後ろから背中に大きな風がぶつかった。それはまるでオレの背中を押してくれているようだった。勇気をもらった気がした。


自転車に跨って、走り出した。




連休中にたくさん書いていくぞ!

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