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はじめまして。
この作品を読んでみようと開いてくださり誠にありがとうございます。
処女作となります。温かい目線で見てもらえるとありがたいです。
30歳目前の日のことである。公務員として毎日働き続けていた。日々、回される仕事を淡々とこなす。定時に帰れることも少なく、夜も深まったころに明かりのない家に帰る。
そして、アルコールで疲れを癒すことだけが唯一のたのしみだ。
「プハーッ!!うまい!今日のオレもがんばった!!」
こうして人生を徐々にすり減らしていくのだと思う。
「うわ!こいつもついに結婚したのか!!」
最近は、スマホでSNSを見るたびに結婚報告されている。
見てもいいことは何一つもないことをオレはよく知っている。でも、やらずにはいられない。
「そういえば、アイツは何してるんだろ。」
そうして、オレは高校時代から使っているSNSを久しぶりに使ってみた。
「更新なんかされてないだろうな、、、あ!あった!」
それは、中学時代に知り合ったある女友達のSNSだった。
「紗英は相変わらず推し活がんばってんだな。中学時代からアイドルとか好きだったもんな。
めちゃなつかしい。そういや、大学生のときに『30歳になってもお互いに相手がいなかったら結婚しよ』とか酒飲みながら話をしてたな。」
「はあ、あのころはたのしかったよな。」
少し前に中学校時代の同級生と飲み会をしたときにあの頃に戻りたいって話をしていたのを思い出した。
その時は、
『でも、中学生の時は小学生に、高校生の時は中学生に、大学生は高校生に、社会人になると大学生にそれぞれ戻りたくなるって。つまり、今が1番大事なんだよな。』
そう言われたのを思い出した。誰しもが一度は思うことだろう。あの頃に、、、ってそんなことを考えても何も変わらないのを知りながらも。
「どうせ戻るなら、中学生3年生のころに戻りたいな〜〜」
そんなことを言いながら、残ったアルコールを胃に流し込む。
「さて、明日も早いし、さっさとシャワー浴びて寝よ寝よ。よっこいしょ」
そう言って、重い腰をもちあげて立とうとしたときだった。
「ピロン♪」
通知がきた。ロックを解除して確認すると、紗英からだった。
「結婚しました〜〜!そっちにも一度、帰るからみんなでのも〜!!」
まさかの通知だった。しかし、意外と落ち込むほどでもなかった。なんでだろうか、社会人になってからは音信不通になっていたからだろうか。
画像も添付されており、確認すると旦那さんだろうか、男性と一緒に写る紗英の姿だった。
「幸せそうだな。。」
写真に写る紗英の表情は大人っぽい優しい笑顔だった。こんな風にも笑えるのかと感慨深かった。
中学生のころは一緒にバカなことをして、アホみたいに笑った記憶が目に浮かぶ。
「アイツも幸せになれたんだろうか。」そう思いながら、シャワーに入るためにガス給湯の電源を入れた。
その時だった。胸に激しい痛みを感じたのは。
熱い!いたい!なんだこれ!いたすぎる!!くそまじかよ。
そんなことを考えながら、床に倒れていく。初冬になって床が冷たくなってきた。徐々に意識が遠のいていくのがわかった。そんな中でふと、頭に浮かぶのは中学3年生のときの紗英の姿だった、、、、
ーーーーーー
「ん。なんだここ。」
意識が戻ると広い空間に出てきた。周りは白一色でどこか学生時代に旅行で行ったイタリアの教会を彷彿とさせるような場所だった。
「そういえば、オレってどうなったんだろう。病院で助かったのかな。」
白といえば病院か異世界転生かどっちかしか覚えがない。そんなことを思いながら、情報を集めていく。
すると、ドアからスーツ姿の男性と女性が入ってきた。
「そろそろ会場に向かおうか。」
「そうね。スピーチの原稿はちゃんと持った?」
そんな会話が聞こえてきた。自分が想定した場所ではないことがわかった。
二人の服装をよく見ると礼装じゃないことがわかり、葬式でもないだと推測ができた。
『あの、すみません。ここってどこですか?』
今いる場所の情報を探ろうとするが、相手はまるで声が聞こえてないみたいだった。そして、ドアを開けて、違う場所へ行こうとする。
このままでは、いけないと思い、二人を追っていくことにした。ドアが開き、向こう側を覗くと、
「間もなく、結婚式が挙行されます。携帯電話・スマートフォンの電源をお切りください。」
アナウンスが聞こえ、テレビで見たことあるような結婚式場だった。
『え、なんで?結婚式場?』
頭の中が分からないことだらけでパニックになっていた。自分が死んだのかどうかすらもわからなかった。ふと、周りを見ると顔見知りが居ることに気づいた。
『あ!眞島じゃん!まっしー!』
近寄ってみるが、あの二人と同じように声が聞こえていないようだった。
『なんだよ!おい!ってあれ?』
パニックになっていたのもあり、苛ついて眞島の方を叩こうとしたとき、当たらなかった。いや、避けられたのではない。まるで、バーチャル映像に触れようとしたときのような感じになってしまった。
『やっぱり、オレって死んでる?それともこれは夢?』
目の前の出来事に自分が介入できないことを知り、呆然してしまった。
何分たっただろうか。ぼーっとしていると、
「では、新郎の入場です。みなさま拍手でお迎えください。」
アナウンスと同時に白いスーツに身を包んだ男性が出てきた。テレビのコマーシャルで見たことあるような仕草で目の前を通り過ぎていく。顔が近づいたとき、どこかでみたことあるような、そんな思いにかられた。
『どこかで、、、』嫌な予感がした。すると、新婦も入場してきた。
その予感はすぐに直感に変わった。新婦は紗英だったのだ。急な出来事に頭の中が整理できない。
パニックになっている自分をよそに式は進んでいく。そして、紗英が近いのキスをしている様子を目の当たりにしたとき、心の中がざわついた。
それは、今まで心に蓋をしていた気持ちが溢れ出していることに気づく。中学生のあの頃に自ら諦めることでしか自分が守ることができずに無理やりに心の奥底に封じ込めていたものが何年も経って、ドロドロの感情に変わっていることがわかった。自分でもよく分かるこの感情に名前がすでにある。それは「嫉妬」だろう。だが、今の自分にはこの世界に触れることもできない。ただの傍観者に過ぎない無気力感が自分のこの気持ちと相まって、呆然とすることしか選べない。
『あ、そうか。』オレは後悔しているのだ。中学生のあの頃に1度の失敗を経て、学んだはずだった。あんな思いをしないようにしようと。自分の人生に生かすことしかできないのだから。
それなのに、また失敗したのだ。もしや世の中にいる神様と呼ばれる存在がオレにこれを見せたかったのだろうか。それが本当だとするなら意地が悪すぎる。
思いを巡らせていると、場面が入れ替わり、披露宴の場になった。
それぞれのグループがテーブルを囲んで話をしている。眞島のグループは、中学・高校生の同級生が集まっているようだ。
「紗英もついに結婚だな。そういや、ここに居るグループは中学校のとき3年8組だったよな。」
「そうだね。懐かしいね。8組って言えば、担任のやばTのこと風のうわさで聞いたんだけど、不祥事で丸坊主にしたらしいよ。」
「まじ?!たしかに、あの人は担任としては好きではなかったらかな。ついにやっちまったか。」
オレも知らないような話が出ている。最近は、仕事が忙しかったのもあって、同級生たちとあの頃の話を聞いていると気持ちが和らぐのがわかった。しばらく、耳を傾けていた。
「でも、3年8組ってマッシーがリーダーで楽しかったよね。」
「うちの学校は人数だけは県内でもトップで多かったから、卒業式になっても話したことない人もいて、すごかったよね。」
「そう言えば、十森って来てないの?」
「刹那にも招待状を送ったけど、返信がないって紗英が言ってたよ。」
やっぱり、オレってあのときに死んじゃったのかな。まだ、29歳だったのになー。
アメリカに旅行したかったな。そんなことを考えていると、
「十森といえば、紗英と中学の時にけっこう仲良かったよな。」
「それな!!クラスのみんな付き合っていると思ってたのに、十森に聞いたら『付き合ってない』とか言ってて、本人同士も自分の気持に気づいてないようすだったよな。」
「でも、2人って1学期の途中から急に話さなくなったよね。」
「そうそう!あれぐらいのときに紗英に彼氏ができたんじゃなかったかな。」
オレたちの話をしているようだった。新婦の披露宴でする話でもないだろうに、と思って聞いていたら、
「みんな!来てくれてありがと!!」
紗英だった。結婚式での白いドレス姿も綺麗だったが、今着ているミントグリーンのドレスもとても似合っていた。正直に言うと、見惚れていた。
「紗英!結婚おめでとう!ドレス姿もすごいきれいだよ!」
「ありがとう!恭子もドレス姿似合っているよ!」
紗英の女友達からそう言われて、紗英もうれしそうだ。
旧友と話している姿を見ると、中学生のころを思い出してしまう。休み時間になると必ず、新出恭子と当時、流行っていたアイドルグループの推しについて互いに話をしていたな。
「紗英、そういえば、十森のヤツから連絡あったの?」
「うーん。なかったんだよね。招待状は送れたみたいだったから見てくれていると思うんだけどね。」
「ったく、せっかくの紗英の晴れ舞台なんだから、返信ぐらいしろって感じだよね。」
「仕事が忙しいのかも知れないし、生きていればいいんだけね。」
そんな会話が聞こえてきた。申し訳ないと思っていると、
「てか、ホントは来てほしくなかったかも、、」
紗英が小さい声で呟いた。ショックだった。紗英とは仲が良かったと自負していたら、来てほしくないと言われて、叫びたくなった。だけど、紗英の声は続いた。
「せっかく、結婚するって決めたのに。今、十森にあったら、揺らいじゃうよ。」
周りには聞こえないぐらいの小さい声だった。
「え?紗英、今なんて言ったの?」恭子が聞き出そうとしたとき、
ガシャーン!!!大きな音がなった。それは、親戚側のテーブルで子どもが食器を落としてしまった音だった。
「恭子ごめんね!ちょっと見てくる!みんなもゆっくりしていってね!」
そう言って、紗英は音の鳴ったテーブルへと歩いていった。
え、どういうことだ?揺らぐって何が?オレの顔を見て心が揺らぐってこと?
頭の中に疑問符ばかり浮かんできた。しかし、今さらそんなことを思っても結果は何も変わらない。自分は何もしてこなかった。紗英は、違う人と結婚をしたんだ。
そんなことを考えていたら、胸が激しく痛くなった。
おい!またかよ!何がしたいんだよ!さっさとあの世に送ってくれよ!
ここにはいない誰かに恨み言を叫んでいると意識が遠のいていく。
ちくしょー、、、くそが、、、
目の前が真っ暗になり、オレの意識が消えていった。




