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(一応)清楚系Vtuber、配信でギャンブルしたらキャラ崩壊したけどリスナーにめちゃウケてV人生変わった話。  作者: 団栗珈琲。
第二章 パーフェクトくそ―じゃん

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第8話 ダメジャー、ダメじゃん


 そんな決意をしたのち、私はふと、「メジャーNii究極クローザー」のパッケージに目をやると、TAKARATOMIと書かれていた。


「ん? 宝富タカラトミ? 大手企業じゃん」


「? なにってんの宝富タカラトミはクソゲー生成企業だよ?」


 いや、そんなことを言われても。っていうか、宝富タカラトミって大企業だよね? そんなクソゲー作れるの?


宝富タカラトミは、おもちゃを作らせると一流。ゲームを作らせると、三流ゲーム職人がどや顔できるぐらいのクソゲーを作れる会社なんだよ!」


 いや、そんなこと言われても呷られるのは不安だけなんだが。

 どういうこと? つまり、どうしようもないクソゲーってこと?


「そもそも、私、ゲームって大体世間の評価を見てから買うからね。クソゲーなんてやったことないや」

「えー。もったいない」


 :いや、もったいなくない

 :むしろ、クソゲーに使う時間がもったいない

 :何を以てしてもったいないと言っているんだこの子は

 :やっぱVliveだわ

 :よくこんな子入れたよな

 :Vliveの決断力に敬礼!


「そろそろ始めていこう!」

 そう、ひすいは、笑って言った。


 そうか、このゲームはクソゲーじゃなくてバカゲーなんだ。

 そうちょっとでも期待してしまった私の心を裏切るような出来事はすぐに起こる。


   ✕   ✕   ✕   ✕


「ということで、まずは私が暗記している、クソゲーオブザイヤー、「メジャーNii究極クローザー」の総評、一部抜粋を聞いてもらおうかと思います」


『二体目の魔物は、タイトルの通り2008年のKOTYのクローザーの座を狙うかのごとく現れた』

「―――ちなみに、二体目の魔物というからには、一体目もあるんですけど、それは、ダメジャー第一作目「メジャーNii剛球! ジャイロボール」のことです」


 :これって、長くなりそう?

 :仕方ない。ひーちゃんの性格がこんなんだから


『「メジャーNii 究極クローザー」今年の開幕投手を務め、Niiでもハイレベルなクソゲーを出して、中継ぎを終えたばかりのメジャーが、脅威のトリプルヘッダーを成し遂げたのだ』


 :全部言い切るの?

 :言い切るんだろうなあ……

 :いつもこんなんだし仕方ない

 :まあ、ひーちゃん、クソゲーの話するときすげえ楽しそうだしな


『開発会社にクソゲーマイスターとして名高い「ドルームファクトリー」を選択したことからもタカラトミーの本気が窺えるだろう。ドルームファクトリー側もプログラマー3人という製作体制で見事これに応え、「追求したのは、本格野球ゲーム」と豪語するその出来は、確かに一味違った』


 :プログラマー三人態勢はやばい

 :てか、人の配信でもクソゲーやるんだな

 :ほう?

 :誰か、クソゲーオブザイヤーのHPいって確認してきてくれ

 :いく

 :いく

 :逝く

 :↑一人だけ昇天してるやつがいるぞ!



『まずは《走》。走者は一切操作できず、勝手に盗塁しては犬死にを繰り返し、犠牲フライはタッチアップ無しで得点として認められる等やりたい放題』


 :犠牲フライとは?

 :外野フライを打ち、捕球されアウトになっても走者が得点、進塁した場合の飛球

 :タッチアップとは?

 :↑フライを打ち上げた後に、ランナーがベースから離れて次の塁へ進むこと

 :ちゃんと教えてあげるこの配信優しい

 :で? このゲームの問題点は?

 :普通犠牲フライは、ワンアウトになるけど、これはノーカウントなの

 :へー。解説助かる


『続いて《攻》。打球が砲丸のように重く、落ちてすぐ止まる一方で、垂直にぶつかった球が斜めに反射し、3イニングに10本の割合で本塁打が飛ぶ』


 :本塁打が飛ぶとは?

 :ホームランのこと

 :イニングとは?

 :攻撃と守備を交互に繰り返す野球の「回」の数え方

 :で? これの問題点は?

 :三回で十点取れる、どんなあたりが悪くてもホームランかファールしかない

 :ほーん。クソだな


『そして《守》。野手はフェンス直撃のライナーを追い掛けて壁を突き抜けたり、後逸した球を即座に諦めて棒立ちになったり、別の意味で目が離せない。塁審は一人も存在せず、ファール球が跳ね返ってフェアになったり、3バント失敗がアウトにならないと言ったルールの誤解が公然とまかり通っている』


 :メジャーのキャラは忍者なんか?

 :いや、ただのバグの使い手だ

 :ファール球が跳ね返ってフェアとは?

 :白線の内側フェア、プレー続行。白線の外側ファール、プレー中断、打ち直し

 :で、こいつが空中でフェア→ファール→プレー中断なんだが、そうなってない

 :ほへー

 :野球のことよく知らんが、やばいってことはわかる

 :ルール履き違えてるってことだな

 :球諦めて棒立ちは草w

 :3バント失敗とは?

 :カウントが2で、次ファールに成ったら、アウトになるんだよ

 :なんでこんな野球に詳しいんだお前ら


『ストーリーは原作を尊重し、最終戦ではたとえ5対2で勝っていてもその点差のまま延長戦になり、逆転負けしても勝ちルートのエンディングに突入する。悪送球を野手が取り損ねた瞬間に映像が乱れてアウトになったり、謎の動きで1キャッチで2アウトを取る―――通称「ジャイロキャッチ」等バグも完備である』


 :勝っても負けても延長戦は草

 :原作尊重の精神やな

 :最悪じゃねえか

 :勝っても負けても引き分けでも、話は続く。ドルフなりの優しさ

 :その優しさはいらない

 :確定引き分けイベにしたらよかったのに


『続々と明らかにされていく「本格野球」にスレ住人のボルテージが高まっていく中、ある一連のバグが発覚したことでついにそれが最高潮に達した』


 :ほう?

 :なになに?

 :ほwんwかwくwやwきゅwうw

 :笑いすぎだろ

 :本格野球とは


『そこには、キャッチャーが防具を脱ぎ、審判がピッチャーに背を向け、これまた後ろ向きのバッターが何もない空間からセンターに向けて快打を飛ばし、捕球やベースカバーどころか全く動かない棒立ちの野手を尻目にキャッチャーが一人でセンター前ヒットを追いかけるという未知の光景が広がっていた』


 :草

 :どんな感じなんだろう

 :これから見れるぞ


『果てには主人公・五郎ごろうの首までもが180度ねじれた状態で発見され、球審は説明書の豪快な誤植から《ジョージ・ケツメル(十字・決める)》と命名された』


 :どんなかんじ?

 :「十字」のルビが「じょうじ」になってた

 :誤植わろ

 :説明書もしっかり読み込んでるの凄い


『運命の悪戯か、皮肉にも最後は違う年に生まれていれば、それぞれ栄冠を勝ち得たであろう二本の一騎打ちとなった。この史に残る名勝負を制し、2008年大賞に輝いたソフト――それは『メジャーNii究極クローザー』である』


 :運命もクソもねえよ

 :まあでも、メジャーGS剛球! ジャイロボールは携帯版大賞取れてるし……

 :それを今からやるのか……(不安)


『揃って尻を向ける審判と打者や、センター前キャッチャーゴロなど、一度見たら忘れられない強烈なインパクトはスレはおろか外部でも話題沸騰し、大晦日には公式サイトが謎のパスワード制になる等、最後の最後までスレを沸かせ続けたその圧倒的なポテンシャルは怪物と言うよりほかない』


 :そんなポテンシャル持ちたくない

 :それな

 :そろって尻を向ける、審判と打者ww


『また、同時期にメジャー劇場版公開を控えた絶妙のタイミングで子供たちに全力でクソを投げつけた非情さと、見る者を笑わせ、やってみたいとさえ思わせる爽やかさを併せ持った、まさに至高のクソゲーであると言えよう』


 :至高のクソゲー?

 :至高とは?

 :哲学だな


「―――と、いうことで、これがこのクソゲーの選評。および概要です。ちなみに劇場版は名作らしいですけど、私はクソ映画しか見ないので、そこのところはすみません」


 そう言い切ると、ひーちゃんはニコッと笑った。

 こわ…とは死んでも口に出せないし、そもそも人の趣味を悪く言うのはどうかしてると私は思うんだ。


 :なんで暗記してんだよ

 :ひーちゃんも怖いし、このゲームも怖い

 :ゆほ。ひーちゃん、ちゃんと見ずに言えてる?


「まあ、ひーちゃんは何も見ずに今のを言ってたね。うん。もう怖いよ。っていうか、このゲームの評価も怖いし、このスレの人たちは、何に歓喜してるの? もう、わけがわからないよ」


「ということで、ダメジャー第二作目、一作目と死闘を繰り広げたのち、見事大賞に輝いた、原作を知らなくても、知ってても、誰もが突っ込みたくなるクソゲー。「メジャーNii究極クローザー」をプレイしていきます!」


「うおー。全然楽しみじゃない」

 その直後、コメント欄は草で溢れ返った。

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