第7話 同期とコラボ!
コラボしたいなー。なんでもいいからコラボがしたい。
私は今、コラボの悪魔にとりかれているのかもしれない。もっとも、そんな悪魔弱すぎて瞬殺されてしまいそうだけど。
とりあえず、仲のいい同期に声をかけようかな。
誰にしようかなっと。うーん、城鐘 ひすい。君に決めた!
そうと決まれば、私はVliveから支給されたスマホを使い、ひーちゃんに連絡を入れる。
―――ひーちゃん。今日、空いてる?
私がそう送ると、五分後に、
―――うん、空いてるよ。どうしたの?
と送られてきた。
空いているわかれば後は話が早い。
「コラボしようずぇ」と言い、そのまま流れで、運営に連絡を入れ枠を取り、そのまま華麗な流れで、配信までノンストップで行く。
一応、SNSで告知だけはしておく。見てくれる人は多ければ多いほどいい。
たくさんの人に楽しんでもらえるし、何より儲かる。ぐへへ。
―――今日、コラボ配信しない?
―――うん。いいよ
―――企画、どうする?
―――私が考えておくよ
とのことなので、企画はひーちゃんに丸投げ。
まあ、ひーちゃんすごいからね。(語彙力)どうにかしてくれるよね。(他力本願)
ひーちゃん先生の企画にご期待ください!
それはそうとして、どうしようかな。
企画はいいとして、いつから始めるか。
時間は……とりあえず、運営に連絡する前には配信開始時間を決める連絡は入れとこう。
✕ ✕ ✕ ✕
自室のカーテンを開けると、空は茜差しており、橙色に染まった空が綺麗だ。
そんなことを考えて、私はVtuber兼、小説家とかに成れるんじゃないか? とかそんな画舫を抱くようなことを考えながら、私はパソコンとにらめっこしている。
私がどれだけ、唸ろうが、睨もうが、パソコンはうんともすんとも言わない。私は、うんもすんも言っているというのに。
それはともかく、ひーちゃんと約束した時間が七時。今現在は六時行くか行かないか。そんなかんじ。というか、もう五時になるってのに、茜差してるとか。夏さんマジでぱねえっす。本当に。今は部屋の中で、クーラーの効いたところで過ごしているから全然不満なんて湧きようもないけど、外に出た瞬間。太陽の熱は我が身を焦がし、その上からセミの大合唱。出迎えてくれるのは非常に結構なのだが、幾らなんでも暑すぎる。
いや、いまさらながらに思うけど、日本ダービーでしっかり負けてからもう二ヶ月が経過してんだよな。ほんと、時の流れにはいつも驚かされますな。
私が遅いのかと気が早いのかはわからないけど、多分時が早いんでしょう。
そんなことを考えていると、スマホが鳴る。
なんだ。と思い、画面を確認すると、そこには、
―――ゆーちゃん。打ち来ない?
そう、魅力的なお誘いが舞い込んできた。
返信することも忘れ、私は車に乗り込んだ。
途中で返信はちゃんとした。
✕ ✕ ✕ ✕
徐々に暗くなってきたものの、まだ十分に司会を保てる程度の明るさのある、七時。
私は、画面の前で、マウスをカチカチしていた。
私の2Dアバターを画面上にセットするのはいつものことだけど、今回はコラボ配信。ひーちゃんのアバターを私の隣に配置する。
ちなみに、ひーちゃんがサムネを作ってくれて、待機画面にも使用しているけど、サムネから察せるところはいろいろあるんだよね。
それでも、普段と違うところがある。
それは、今使っているパソコンが馬鹿デカいものじゃなくなっていることも去ることながら、やっぱり部屋が違う。
私の汚部屋とは比べ物にならないぐらい綺麗な空間である。
ただ、ひーちゃんのデスクの上に私でも聞いたことのあるようなクソゲーが並んでいるのが個人的にはマイナスポイントだけど、汚部屋の奴が何いってんだ。みたいなところはあるので、もういい。
ほら、みてみな? なに?「勝って掴んでやるよ、俺たちの優勝をな!(台パン)なクソゲーをプレイしていく!」と、かかれている。なんだよ勝って掴んでやるよ、俺たちの優勝をな!(台パン)なクソゲーって。どういうこと、いや、いろいろとインパクトがすごい。
勝って掴んでやるよ、俺たちの優勝をな!(台パン)なクソゲー? なんでクソゲーやりたがんの。
そういえば、あれだった。ひーちゃんクソゲー好きだったんだ。
なんで好きなの? って聞いたら、苛々して台パンしてしまうぐらいクソだと、逆に愛着枠からクソ。っていってた。なに? どういうこと? なんで、「好き」なの? って聞いたはずなのに、いつのまにか「クソ」に変換されてるんだけど。
どういうことなんだろう。あれは。ひーちゃんなりのメッセージなのか、本当にクソ=好きになっているのか。そうだったとしたら末期過ぎるんだけど。
そんなことを考えている間に、待機画面は開けていて、私のアバターの目が動いている。いやー。本当にVtuberってよくできてるよなあ。
「はい。どうも、サムネを見て不安しかない、優楽ゆほです……」
「どうもー! クソofクソを目指す、クソVtuberアイドル! 城鐘 ひすいです!」
画面には、 茶色く、首筋にかかるかかからないかぐらいに切りそれえた髪。赤みががった目。それなりの大きさのある胸。野暮ったいパーカーをかぶった私。優楽ゆほと。
エメラルドを連想させるような明るい翡翠色の目に、薄く緑がかった神は肩甲骨のあたりまで伸びていて、白を基調とした衣装は鎖骨辺りが開いているが、「断崖絶壁」というほかないその胸は、私に安心感を与えてくれる。
背景など、ないに等しく。みずたま模様がアバターの奥に表示されており、その大部分が画面中央に配置された「メジャーNii究極クローザー」と表示されている。
それはごく一般的なNiiの画面だった。
:どういうことだ?
:まるで意味が分からんぞ
:クソofクソを目指す、クソVtuberアイドルとは?
:困惑
:Vtuberがクソだといろいろと不味いのでは?
「はい、今回はですね。私も、企画を手渡された側なのでよくわからないんですけど、プレイしていく! を見たらわかる通り、嫌な未来しか見えないので、私は考えるのをやめました!」
「ということで、今回、ゆほちゃんと一緒にやっていくゲームは! 一人に聞いたらクソ。十人に聞いてもクソ。百人に聞いたとしても全員が必ずクソと答える、本物のクソofクソ。top ofクソ! 超々伝説のクソゲー。「メジャーNii究極クローザー」だよー!」
:なん、だと?
:おいおいおい。それはやめとけ
:舐めてた。俺は舐めてたぞ
:え? なに? そんなすごいもんなのか?
:↑すごいなんてもんじゃない
:これが、「テニヌ」ならぬ、「やきぬ」なんですね。わかりません
コメント欄の反応を見ると、よくないものであることは確実だ。
ちょっと、やりたくないかもしれない。
でもまあ、ひーちゃんに企画丸投げした私も悪いので……。
「任せてみんな! 骨は拾ってください!」
:ゆほぉぉぉ!
:感動
:骨は拾われる気満々なのね
:当たって砕けろ!
さあ、お手並み拝見と行きましょうか。クソゲーさんよ。




