第4話 あっけない収益化
「収益化ですよ。もちろん」
:? 何が勿論なんだ?
:勿論とは?
:こんな配信から哲学者が生まれてしまう。
「まあまあ。とりあえずそれは置いておいて。やーっぱあれですね。競馬配信がデカかった。あいつのお陰で収益まで一気に行けたというか、デビュー一か月で収益化できてよかった。というか、早い方なんじゃないですか。どうでしょうか?」
:おめ
:よかった
:収益化。ねえ
:これでニートとじゃなくなる
:社会のお荷物が……
:おい。嘘だよな遊歩。お前は俺と同じニートのはz……
「それにしても、すごいですね。こうやって喋っているのも、お仕事なんですよ。金が入ってくるんですよ。しかもですよ。やっとスパチャが受け取れるようになったんですよ。Vtuberと言ったらスパチャみたいなところありません? あるんですよ」
:¥100
:¥100
「あ、スパチャありがとうございます。まあ、でもあれですよね。私が同期の中で収益化一番遅いんでね。やっぱみんな属性持ってますからね。清楚だけだと弱いのかもしれませんね」
:だからか? だからなのか? 俺の好きな清楚が気が付いたら変わってるのは
:Vtuberに清楚なんていらない―――あっ、おい! ちょっとまてなにするやm
「とにかく、なんかあれです。収益化に際して、記念グッズが出るらしいです。私もVliveから遡言う割れただけで何のグッズが出るのかわかりませんけど。グッズってこんな早々出るもんなんですね。それにしてもですよ。グッズですよ。グッズ。自分のグッズが出るってなんだか感慨深いですよね」
:グッズかあ……
:なに? 遊歩ちゃんが馬にでもまたがってんの?
:↑地味にありそうなのやめろw
:ゆくゆくは、パチンコ台とかでないかなあ
:↑未成年のファンが泣くぞ
「とにかく、やったね! ってわけです。ということで、ね。話すことなんてもうほとんどないに等しいんですけど。あれですよね。競馬には負けたけど、人気出たし。スクラッチには負けたけど、収益化したし。人生、踏んだり蹴ったりってわけにはいかないですね!」
:いや、スクラッチは関係ないだろ
:そもそも、収益化するってのは事前にわかってたことじゃん
:おい! よせお前ら。せっかく現実逃避しようとしてんだ! 邪魔すんな!
:現実を見ようか
:失礼だな。大負けだよ
:↑何が失礼なんだ?
:ゆほ。天国で母ちゃん泣いてるよ
「勝手お母さんを殺さないでください。しっかり生きてますし、ちょっと不謹慎ですよ?」
:不謹慎なぐらいがちょうどいい。それが俺らだろ?
:↑何かっこよさげなこと言ってんだよ
:帰宅部のポスター並みにかっこいい
:帰宅部のポスターなんて、見た目だけだろ。それ以外取り柄がない
:かっこいいだけで十分だろ
「あ、私も学生時代は帰宅部でしたよ? 余りにも家に帰るスピードが速すぎて、帰宅部のエース。通り名は『瞬帰のゆほ』って呼ばれてました。「私のあまりの帰宅スピードには、風をも置き去りにする」って」
:癖になってんだ。足を消して帰るの
:↑消す意味ねえww
:なんで癖になってんだ?(純粋な疑問)
:草
:草
✕ ✕ ✕ ✕
「ということで、この配信はここらへんで。おつゆほ~」
:おつゆほ~
:おつゆほ~
:オッス、オラ虚空
:↑なにもんだお前
:なんだ。虚空か
:虚空ってなんだよ
と、私は配信画面を切った。なんか最後、虚空が現れてたような気がするけど。まあいっか。
それにしても、収益化はうれしいし、グッズ化もうれしい。
なんか、一気に夢がかないそう。
それにしても、一応Vliveってアイドルなんだよね。
全然アイドルじゃないと思うんだけど、私が思っちゃダメかな。
いやでも、普通に配信で下ネタ言ってる人もいるし、Vliveは「Vtuberアイドル事務所」から、「Vtuberアイドル(笑)事務所」に変えたほうが賢明だと思う。
収益化が受理されたから、スパチャも受け取れるようになったし。
やっぱり配信者と言えばスパチャだよね。というか、スパチャなくして配信者が成り立たない。みたいなそんな感じ。いつかは私も、赤スパをポンポンもらったりする日が来るのかなあ。……ぐへへ。
でも、やっぱりVliveの影響力ってすごいよね。Vlive所属の私だからこそしみじみ実感する。私がもし、個人勢だったら、アバターも安っぽかっただろうし、そもそもここまで数字が伸びたとも思えないので、やっぱりVlive最高だぜ! っていうところに戻ってくる。
同期とコラボ配信したり。オフコラボしたり。憧れの先輩とコラボしたり……ぐへへ。
それにしても、スクラッチ負けたけど、損としては少ない方でよかった。不幸中の幸いってやつだ。さっきは踏んだり蹴ったりなんてないとか言ったけど、やっぱり踏んだり蹴ったりだった。
人生ってどうしようもないね。
私は、ようつべを開く。配信終了したのは十数分前だっていうのに、もう切り抜きが上がってた。
悪質な切り抜きとかも存在するらしいけど、私をわざわざ取り上げてくれるのは普通にうれしい。
なんか私も、芸能人? になったような気がする。




