第33話 遊ぶぞー!
私はゲートをくぐった瞬間、眼の前の光景に戦慄していた。
すげぇ、なんかよくわからないけど、すげぇ。
西洋? みたいな感じの大通り? が私を待ち構えていた。そして、初ウニバが貸し切りなんて、なんという僥倖ッ……!
それは私にとっての僥倖であったッ……!
というか、このウニバの貸し切りは全額ウニバ負担らしい。
なん……だと……。
そして、新コーナーであるマリモゾーンを紹介してほしいらしい。
なので、私は初ウニバの時間をマリモに費やすことがほとんど決定しているのだ。
というか、マリモゾーンってよく聞くとシュールだよね。私はそう思う。
私のそんな(心の中)マシンガントークをものともせず、茜柳先輩は私と一緒に歩く。というか、この後編集でここに3D映像を付け足すらしい。
そんなことを言われてしまうと、アフレコさせればいいのではなどと邪な考えがよぎるが、行ったほうがいいのだろうと思う。
まあ、行ってくれたほうが私的には最高なんだけど。
でも、フライング・ダイソーぐらいは乗りたいので、私がスタッフに掛け合うと了承してくれた。ひゃっほう!
「ということで、フライング・ダイソーに乗っていきましょう!」
「………………」
ノリノリな私の横で茜柳先輩が震えている。もちろん、その震えは武者震い的なやつではなく単純に恐怖からくるものだろう。
そんなことはどうでもいい。いや、むしろ楽しみにしながら、私達は並んでいる客がゼロでガラガラなフライング・ダイソーの列を通り過ぎ、茜柳先輩と一緒に乗り込む。
店員さんに案内され、フライング・ダイソーの一番前に乗り込むと、シートベルトの上位互換みたいなやつのチェックをされ、発射のベルがけたたましく鳴る。
店員さんのそれではいってらっしゃ~い。という、もうお決まりの台詞を聞きながら、フライング・ダイソーが発信する。
ダイソー初号機、発進! 神経パルスに異常はありません!
茜柳先輩はあるかもしれない。
フライング・ダイソーは進むと、ゆっくりとゆっくりと坂を登っていく。
ギギギ……と、思い金属を感じながら、これから来る強風に心を踊らせる。
ふと、横目で茜柳先輩を確認すると、顔が青ざめていた。
ちょっと可哀想、と思った。
坂を登り終えると、フライング・ダイソーの車体が前に向く。
刹那、フライング・ダイソーが急降下する。
私が叫びそうになった瞬間、
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
と、あまりにも事件性がありすぎる絶叫が、耳を貫通するかの勢いで響く。
今の私の状態は、感動モノの映画で私がちょっと涙ぐんで、泣きそうかな……って時に真横で大号泣している人がいて、……スンってなるあの感じに近い。
期待は空中で一回転し、降下時には下腹部がヒュンッとなる。
そんなことんなで、かなり楽しかったのだが、茜柳先輩はそうではないらしい。
「や、やばかったね、ゆほちゃん……。やっぱり私にジェットコースターは向いてないよ」
「いや、ジェットコースターに向き不向きなんてないですよ」
私と茜柳先輩はそんな会話を交わしながら、フライング・ダイソーを出る。
いや、それにしても題材の映画殆ど見ていないなあ、なんて思いながら歩いていると、先に大きなサメ、ジョーンズが見える。
「なんか、ジョーンズってジーンズみたいですよねー」
「急にどうしたの……」
「いや、唐突に思ったんですよ」
「そういえば、あれって本当に燃えるらしいよ」
「えっ? そうなんですか? 安全性とか大丈夫なんですかね……」
「大丈夫じゃなかったここに存在してないでしょ。即撤去だと思うよ」
「まあ、それもそうですね……」
そんな他愛もない話をしながら、今回案件をいただいたマリモコーナーへと向かう。
マリモコーナーと聞くと、北海道の研究センターの一角かな? みたいな気もしなくもないけれど、このマリモはマリモでもマリモではないと、小泉さんもびっくりな存在だ。
ちなみに私はゴーストマリモキングが一番好きだ。
他のマリモとは違って、白くて浮遊していて、頭には金の王冠を乗せている。
なぜ好きなのかは説明できないけれど、私は好きだ。マリモカートでもゴーストマリモキング使ってたし。
「まず、最近オープンした「マリモコングランド」の撮影からお願いします」
そういえばいた。マリモコングってやつが。マリモなのかゴリラなのかはっきりしてほしい見た目のアイツだ。
ちなみに、このマリモコングはマリモのくせしてバナナが好きらしい。
バナナが好きなんて、マリモの風上にも置けないやつだな。
というか、マリモの好物って一体何なんだろう。
案外、バナナだったりするのかな? いや、そもそもマリモは植物だから、好物は光なのか? まあ、それはそれで面白みにかけるから、ゲームの開発陣がマリモコングの好きな食べ物をバナナにした理由もわからなくはない。
まあ、コングってバナナ好きそうな気がするし。
そんな心底どうでもいいことを考えながら、スタッフが導くままにマリモコングランドへと入場していく。




