第32話 遊園地に到着!
USJ。ウニバーサル・スタンディング・ジャポン。ウニバとも。
そんな多種多様な異名を持つ、ウニバ。私はそんなところにカメラマンと、なにより茜柳先輩といっしょに来ている。楽しみしすぎてやばい。
というか、東京の事務所から、大阪まで車で走っている。
夜に東京を出て、茜柳先輩は車の奥で眠っている。現在時刻は、三時。
事前に寝ていたため、そこまで眠気はないが、直前まで配信をしていた茜柳先輩はそれは眠かったことだろう。さすがは配信モンスターの異名を授かるだけはある。
大きめのワゴン車だ。安心感がすごい。私はこいつを信用している。頼んだぞ。
そろそろ、京都につく頃だ。今回、ウニバに向かうルートは東京から名古屋、京都から大阪を経由するルートらしい。……グクっただけだけれども。
いやいや、それはいいんだけど。
ウニバってさ、なんとなく雲丹に近いような気がしてならないんだよね。
というか、そのものみたいな感じがして、雲丹が立ち上がる国、日本。みたいな意味不明な感じになっていると思うんだ。うん。
ちなみに、茜柳先輩は私の隣で寝ている。
あわよくば、私の方にもたれかかってくれないかなあ……なんて、一切考えていないし考えたこともない。
……寝顔が可愛い。
そんな茜柳先輩にたいして、純粋で無垢でピュアな感情を抱いていると、茜柳先輩が大きくあくびをし、「あれ? ゆほちゃん?」と、なぜ私がこんなところにいるのがわからないような顔をするも、すぐにウニバへの移動中だということを理解し、「そういえばそうだったっけ」と、一人で勝手に納得している。
現在時刻は四時。京都市を抜ける。
せめて観光とかさせてほしいなあ。なんて……。
すると、助手席に座っている私のマネちゃんが、「そろそろ、到着ですので、映像撮りますね。車内の映像なので、ぬいぐるみ渡しますねー」
「あー、はい」
私はマネージャーから、Vliveが公式で出している、ぬいぐるみ。「Vlive plush」を受け取る。
「はーい。じゃあ、撮りますねー。スリー、ツー、ワン、はい」
「ゆほちゃん。もうすぐ着くねー」
「そうですねー」
「ゆほちゃんはずっと起きてた?」
「いや。結構寝てましたよー」
「私は今の今までずっと寝てたよー」
「そうですよね。ずっとねてましたよねー」
「あとちょっとで着くらしいですよ」
「えー。そうなの? 六時間もあっという間だねー」
「いや、茜柳先輩の場合は、ずっと寝たからでしょー」
「そうかも!」
「―――はーい。ありがとうございます」
「あと、どのくらいで着きますか?」
「あー。あと三十分、四十分ぐらいですねー」
「ありがとうございます」
✕ ✕ ✕ ✕
現在時刻は午前五時。
徐々に日も昇り始め、清々しい太陽を感じながら、私はあの代表的な地球の前に立っていた。ずっと回転しているアレ。真ん中に大きく「ウニバーサルスタンディングジャポン」と書かれている。
私は高揚感に胸を躍らせながら、奥に足を踏み入れる。
もちろん、茜柳先輩も一緒に。あと、Vlive plushも一緒に。
あとあと、カメラマンも一緒に。いや、カメラマンと言っても一人だしマネージャーだし、どっちかって言うとマネージャー兼カメラマンという方が正しいと思う。
そんなことはさておき、バカでかい地球儀の前で撮影を挟むらしい。
「はーい、ということでやってまいりました! ウニバーサルスタンディングジャポンでーす!」
「いやー、楽しみだねぇ。ゆほちゃん!」
「ほんとですよー。わたし、来るの初めてなんですよ―」
「あ、そうなんだー。わたしも、来るの初めてなんだよ」
「えぇ! じゃあ、処女ってことですか?」
「しょっ―――…………まあ、「《《ウニバ》》」処女ね」
かつてないほど、ウニバを強調して発言する先輩。
なにか思うところでもあるのだろうか。……というか、ありまくりなのだろう。
まあ、私が何かを指摘するわけでもないし、別にそれを悪くも思わない。むしろ、プラスだ。というか茜柳先輩。私も同士ですよ……。
「それじゃー、元気に行ってみましょー!」
私は気持ちを切り替え、茜柳先輩にそんな声をかけて、バカでかいゲートを潜る。
私の初ウニバライフは今日、始まったのだ。
そして私は、頭のネジを何本も飛ばして、アホみたいな発言を繰り返し、アホみたいに羽目を外して遊ぶのだ。
そもそも、私はVtuberが好きだからという至極単純、真っ当な理由でVliveに入ったのだが、やってみれば意外とVtuberという職業はきつい。
いや、それも楽しいから続けれているのだが。
そもそも、会話ができない。できないからこそ、一人で喋り続けるというのも意外にしんどい。配信中は話題を探すことに必死になりながらも、コメント欄を読みつつ話題を変えていく。それをさらっとやってのける茜柳先輩はとてもすごいと思う。
いやいや、そんなことはさておき。私は意気揚々とウニバの地面を踏みながら進んでいく。
……もちろん、茜柳先輩もセットで。いや、セットっていい方は良くないな。などと思いながら、私は足を進める。




