第26話 この、人殺し!
「そんな……。らいら先輩。どうして……。いったい誰が!」
長い、青い空色の髪に、これまた青を基調とした修道服。それを身に着けた女性が地に濡れて横たわっていた。背中の心臓部分にはナイフが突き立てられており、周りを鮮血で濡らしていた。
この場にいる全員が目を瞑って黙祷をしていた。
「誰が、誰が一体らいらを!」
「お、落ち着いてください、ルイネ先輩!」
「わってるよ。んなこと……」
「クソッ。その犯人がこの中にいるなんてっ!」
✕ ✕ ✕ ✕
「……Vliveメンバー全員参加企画?」
「ええ。そうです」
マネージャーがそんなことをわたしに言ってきた。
「今回優楽さんに参加してもらうゲームが、「人狼―人コロシアム―」というゲームです」
「人狼―人コロシアム―? 何ですか? それ」
「え? ゆほさん知らないんですか? 有名なゲームですよ。相手の手の内を読み、読まれ。ある程度の自由時間、緊急会議で人狼を探し出し、投票を行って人狼を探し出す。人狼は人間を全員殺す。そういうゲームです」
「な、なるほど?」
「まあ、百聞は一見に如かずです。やってみてください」
「はぁ……」
✕ ✕ ✕ ✕
「どうもー零期生の茜柳 えにしですー」
「こんにちはー。二期生の優楽ゆほですー」
伝説の零期生の茜柳先輩。伝説と言ってもそこらにいる伝説だけど。
伝説は伝説だから。うん。
まだ私の初配信から半年もたっていない。先輩は忙しいのか、というかw他紙が誘えばいいだけの話なんだけど、気恥ずかしさというか、私が一ファンだったからおこがましいというか、……そんなこと気にしても仕方ないのはわかってるけど、一ファンとしてどうしても気にしちゃうのは人間の性だと思う。
いつか茜柳先輩ともコラボしてみたいなー。なんて。
「同じく二期生の希雨サキです」
「二期生の紅葉 彩派です」
「同じく、二期生の城鐘ひすいです」
「一期生の柊らいらですー」
「同じく一期生の轟軌ルイネだ」
「同じく、一期生の錦谷 セリンだよ~」
錦谷セリン先輩。も、コラボしたことはない。
真っ黄色の髪に黄緑がかった目。短く切りそろえたその髪はすごくきれい。
語彙力が死んでいるけど大体そんな感じで合ってるはず。
「とり!」と大きく書かれた黄色のだぼだぼTシャツにデニムのようなショートパンツ。Tシャツをノースリーブにして、エプロンを着たら裸エプロンになるとか考えてしまう。
それはそうと、私は早速人狼―人コロシアム―にログインする。
名前は「ギャンブルの申し子ゆほ」にした。なかなかユニークな名前だと思う。
実際はギャンブルに物申すどころか、どっぷりと浸かってしまっているわけだけど。
明るい翡翠色の目に、薄く緑がかった神は肩甲骨のあたりまで伸びていて、白を基調とした衣装は鎖骨辺りが開いているが、いつもどおり、「断崖絶壁」というほかないその胸は、みているとなんだかほっこりしてくる。鐘城ひすい。
眉毛にかかった金髪、その金髪を後ろに一つに束ねている。俗にいうポニーテールに幼げのある童顔。碧い目にブレザーを脱いで、シャツだけになっている。希雨サキ。
画面では途切れてしまうほど長い赤い髪に、右目の下にある涙黒子。すらりと細身で、赤紫を基調としたセーターに、私のアバターと比べ物にならないぐらいに膨らんだ胸からは、セーターの上からでも、その存在感を露わにしていた。
いろはすと同じぐらい長い、青い空色の髪に、これまた青を基調とした修道服に、でっけえぺえ。群青の色の目、柊らいら先輩。
うなじ? なにそれおいしいの? ってぐらいの長さの後ろ髪に、ぴょんぴょんと複数のアホ毛が飛んでおり、紅い目はルビーみたいで、先が尖り、短く切った深緑の髪。機械機械しい、翡翠の近未来の服のようなものを着ている。
茜柳先輩は肩辺りで切りそろえたショートカットの黒髪に黒目。極一般的な群青のセーラー服。なんでも、システムの関係でこんな簡素な服装になったらしいけど、今はいろんな服装があるはず。なんでわざわざこの服にしたんだろう。
と、そんな疑問はさておき、現在この配信は各Vliveメンバーが個々に配信枠を立てているのだ。私も枠をたたているし、同期も先輩もみんな枠を立てている。
なんせ人数が多いからね。仕方ないね。
そろそろ、配信が開始する。
✕ ✕ ✕ ✕
背信待機画面が開け、茶色く、首筋にかかるか、かからないかぐらいに切りそれえた髪。赤みががった目。それなりの大きさのある胸。野暮ったいパーカーをかぶった、私が画面に映る。
「こんゆほ~。Vlive二期生、遊楽ゆほでーす」
:こんゆほ~
:こんゆほ~
:始まったか
:二期生加入始まって以来の初全メンバーコラボ!
:ドキドキが止まらねぇなぁ!
:うおおおぉぉぉぉ!
:↑せめてなんかかけ
「ということで今回は、運営提供企画。人狼―人コロシアム―をやっていきたいと思います!」
:あーあれか
:頭回る人が勝って、頭の回らない奴が負けるゲームね
:ちなみにこいつは後者
:まあ、ギャンブラーって頭弱そうだもんな
:いや、実際頭弱いから
「なんか、私だけじゃなく、ギャンブラーの方々にまで誹謗中傷が飛んでるんだけど……。と、それはともかく、もうすぐ始まりますので、とりあえずプロローグ流しますねー」
私はマウスを移動させて、右クリックする。すると、映像が流れだす―――。




