第25話 マッシュルームキャニオン
続いてのコースは、マッシュルームキャニオン。
最終コーナーでは、独立したキノコの上を車、バイクで跳ねながら駆け抜けるNiiのコースをデラックスでリメイクしたものだ。
何故かよくわからないけど、Niiという単語聞くと頭が痛くなってくる。
トラウマがよみがえってくるような気がするけど、私はそんなゲームしたことないから、全然心当たりがない。
ちょっとだけ五郎の顔がちらつくだけ。ルーレットが頭に過るだけ。
そんな状態で大丈夫か? 大丈夫だ問題ない。
間違えた。問題しかないかもしれない。
いやいや、でも大丈夫でしょ。というか私もやってたしNii。のマリモカート。
マリモカートNii。やっていたけど、やっぱり時間があると腕がなまってくるんだなあ。まあ、まだ私は本気を出してないだけだからね? 本気出せば一位なんて余裕も余裕。楽勝だよ。
「おーい。ゆほ~? 大丈夫か~?」
「ひゃっ! 耳が孕みそうです」
「そんな良い声ですかね~?」
「あ?」
「冗談ですよー」
「とりあえず、はじめしょ?」
「そうだなー。はじめるかー」
画面が転換し、寿限無くんが「ピー、」
青いランプが一つ点灯する。
「ピー、」
青いランプがまた一つ点灯する。
確かここでアクセルを踏んでおくとスタートダッシュを上手く決めれるらしいけど、全然うまく決まらなかったので、ここでAボタンを押さずに最後の旗を合えるところで押すことに決めた。
先ほどとはちがい、画面のゴーストマリモキングとバイクは揺れていない。
「ピー!」
寿限無が旗を上げると同時、私はAボタンを押し込み、先ほどよりかは軽快なスタートダッシュを決めると九位という微妙な位置からのスタートで、木でできた道をバイクでガタガタ言わせながら、進んでいく。
その次のコーナーを曲がると、このマッシュルームキャニオンの巣人口と言っても過言ではないぐらいのマッシュルームが現れる。
私のバイクはマッシュルームに飛び乗ると……飛び跳ねた勢いで遥か彼方へ飛んでいった。
「あああああ! マーーーッシュルーーーーム!」
:マーーーッシュルーーーーム!(迫真)
:草
:草
:草w
私がマッシュルームに対して怒りを抱いているうちに寿限無が私のことを引き上げてくれ、マッシュルームの上にのせてくれた。……優しい。
「うぅ……ありがとう寿限無ぅぅ……」
:寿限無は今日も忙しいな
:寿限無は頑張ってる
:寿限無こんなに働かせられて可哀想
:ブラック企業かな?
私は再びAボタンを押して、バイクを加速させていく。
現在の順位は八位と非常に微妙な感じだ。なんでだー!
そんなこんなしていると、「きゃあああああ!」とらいら先輩の叫び声が響く。
目の前で、ボムソルジャーが爆発していた。ボムにやられたんだな。合掌。
ゴーストマリモキングがアイテムボックスを体当たりで破壊すると、楽しげないつもの音楽が聞こえてきて、確定音が鳴る。
アイテム欄にたたずんでいたのは、
「ゴーーールデンマーッシュルーム!」
そう、ゴールデンマッシュルームさんだ。一定時間無限にマッシュルームが放てるという、使いどころを間違えなければ中々に使えるマッシュルームさんだ。
私はRボタンを思い切り連打し、爆速で駆け抜けていく。殺し屋には少し劣るけれどそれでも問題ないくらいのスピードで駆け抜けていく。
八位でこれが出るっていうのは結構珍しいと思うんだけど、全然問題ない。むしろ、この順位でバナナが出るのも珍しいかもしれないけど、そんなのより全然ましだから。
現在順位は五位。それなりにいい方だと思う。
この順位でゴールすると、ゴーストマリモキングは喜ぶし。
でも、五位って微妙だよね。ゴーストマリモキングは喜んでも私が喜べない。五位になるぐらいなら、十二位のほうがまだ面白い。
いや、よくないんだけど。絵面的にそっちの方が面白いよなぁ。
そんなことを考えていると、先ほど寿限無さんのお世話になったマッシュルームキャニオンのマッシュルームじゃないですか。
私は、マッシュルームに飛び込むと、ゴーストマリモキングの乗ったバイクが大きく跳ねる。しっかりと方向転換し、落ちずに地面に着地した。
「いっよっしゃぁぁぁ!」
:さすがにそれで喜ぶのはどうなんですかね
:普通の人は誰でもできるぞ
:つまりはゆほが普通じゃないって言いたいんだな
:まあ、普通じゃないから仕方ない
:いっよっしゃぁぁぁ!(迫真)
マッシュルームを抜けると、ファイナルラップに突入する。
また、ウッドデッキ? みたいな木でできたところをガタガタ言わせながら、突き進み、二連続マッシュルームを終え。ファイナルマッシュルームを飛び跳ねながら進み、しっかりと地面を踏みしめ、ファイナルコーナーにを左ハンドルを切り、大きく曲がる。
「うわっ!」その目の前で、赤甲羅を投げられたルイネ先輩が回転していた。
私はニヤつきながら、Aボタンをさっきよりも強く押し込んだ。
そのまま、ゴールイン!
気になる結果は三位!
「いよっしゃぁぁぁぁぁ!」
ルイネ先輩も、らいら先輩を抜いての三位。あいにく、一位と二位とは絶望的な差が開いているけど、それでも三位。三位だ。すげぇぇぇ。
もしかして私、マリモカート上手い?
そんなことないか、実際一位と二位に絶望的な差を付けられてゴールだもんなあ。
そんなこんなで、私は三位という結構上位に入選した。素晴らしい。
結局、何試合かやったけど、これ以上いい数字は出なかったせいで、極民には「まぐれかな?」「まぐれだな」「たまたまだったのか? さっきのは」「偶然ってスゴインダナー」などなど。私の結果がまるでまぐれであるかのようなことが言われていた。これは陰謀だ。
そんなことは置いておいて、二時間ほど経過した現在。終わりのようなムードを醸し出している。
「いやー、たのしかったですねー」
「それにしても、毎回強い人がなんで入ってくるのかしらねー?」
「なー。一試合ごとに毎回メンツを変えてるはずなんだけどなあ」
「ま、私は三位でしたけど☆」
:まぐれ
:まぐれがなんか言ってるよ
:まぐれ女が出しゃばんな
:おい、まぐれ。お前、人様に何か言える立場じゃあねえよな?
「ひ、ひでぇ。なんでそんなこと言うんですか! 三位ですよ!? 三位! 凄くないですか? もっと私をほめてください、喜ばせてください!」
:スゴイ
:スゴイナー
:(笑)
:なにいってんだこいつ(なにいってんだこいつ)
「はいはい。じゃあ、この配信はここらへんで終わり。それでは皆さん」
「バイ爆破~」
「おつゆほ~」
「おつしすた~」
✕ ✕ ✕ ✕
ふぅ。終わった。
いやー。三位も取れて満足。満足。
「ゆほちゃん? 今日はありがとうねー」
「いえいえこちらこそー」
「ありがとなー」
「そっそんな……。こちらこそ、ありがとうございました」
「うん。じゃあ、ばいばい~」
「じゃあな」
「あっ、はい」
そうこうしていると、通話が途切れた。ポロンと音を立てて。何気に面白いよね。この音。
こうして、私の初めての先輩とのコラボが終わった。




