第21話 人生なんかねえよ
『三重県といえばイセエビ
・船で釣る
・素手で取る←
『潮の引いた岩場でイセエビを探そう。あ、岩の隙間の穴にイセエビが掴んで取ろうとしたら岩から手が抜けない!
イセエビを離せばとれることに気いたのは、それから週十分後だった。
疲れちゃって、今日はイセエビをとれなかった……』
「……………………………」
「……………………………」
「……………………………」
「あ、ちなみに、伊勢海老は漁業権かかってる場合しかないので、こういう風に素手で獲ると、しっかり警察に捕まるので、伊勢海老は見かけても、とらないでくださいね」
:もう、ひーちゃんしか喋ってねえ
:もうみんな喋る気力ないんだろ
:しかたないな
✕ ✕ ✕ ✕
―――二時間経過。
「よーし、子供からやりがい搾取するぞー!」
「……………………………」
「……………………………」
「……………………………」
:ほんとに誰もしゃべらねえの
:おーい。生きてますか?
:返事がない。ただの屍のようだ
:生きたい! 私もいっしょに連れてって!
✕ ✕ ✕ ✕
―――三時間経過。
「あ、もうゴール見えてきたよ」
「……………………………?」
「……………………………?」
「……………………………?」
全員が黙る中、けれども雰囲気は先ほどとは全く違う。
やる気に満ち溢れている。
「やりますよぉぉぉぉ!」
「そうね! もうこれで終わりなのよね!」
「よかったよお……!」
「それにしても、みんな嫌いだね。このゲーム。いいと思うけどなあ……。クソイベもほどほどにあって。家族とかでやれば盛り上がると思うのに」
:それはない
:無しよりのなしだな
:そんなの家族でプレーしたら絶縁だぞ?
:友人とやったら絶縁
:恋人とやったら分かれるな
:↑まじか。ちょっと今から、彼女持ちの奴に薦めてくる!
✕ ✕ ✕ ✕
そうこうしてるうちに、ゴールも目前。
サキちゃんはすでにゴールしている。
『やっっっっっっっっっっっっっっっっっっっったあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』と、尋常じゃないぐらい喜んでた。
私もびっくりだ。
そして、いろはすが残り二マス。
ひーちゃんが残り三マス。
私が残り一マスというこの状況で、
ここで私は、
「借金します!」
そういい、Niiリモコンを操作して、九億九千万円を貸し入れさせてもらう。
勿論そんな金持ってない。私の現在の所持金額は、二億程度。
こういうのを負け確というのだ。
:なにやってるの?
:ねえーママあれなにしてるの、ねえ、あれなにしてるの?
:だめ! 見ちゃだめよ!
「ギャンブラーと言えば借金ですからね。今私には十二億円分の金がある! ヒャッハー!」
:笑い方小物過ぎるだろ
:始めて見た、そんな笑い方するやつ
:ヒャッハーwww
私のした馬鹿な選択に、ひーちゃんは、
「やるね。ゆほちゃん」
そう言い残して、ゴールへと向かっていった。
どういうことだろうか、私にその意図はわからないけど、馬鹿には去れてないような気がした。
そして、いろはすもゴールへと向かっていった。
そして、残り一マス。何が出ようが、残り一マスだ。絶対にゴールできる。
「クソイベント、ばいばい。お前とはお別れだ。二度と会いたくないよ」
私はそう言って、Aボタンを押しながらNiiリモコンを振った。
『ゴール!』今となっては慣れた、声が聞こえる。
現在で言うと、所持金が
私がマイナス十億。
ひーちゃんが五億。
いろはすが二億。
サキが一億で。
順当に行くと、一位ひーちゃん。二位いろはす。三位サキ。四位が私。あ、でも資産の清算とかあるんだっけ。
すると、画面が暗転し、今となっては見慣れた、二度と見たくないキャラクターたちがその画面にいる。
あおい、かのん、れな、ななみの四人だ。頼むから消えてくれ。
そんなことを考えていると、モラルがあるで賞、たくさん稼いだで賞とかふざけた称号と共に金が授与されていく。なんなの、これ。
しかもスタッフロール流れてるし。
✕ ✕ ✕ ✕
『第一位は―――』
こういうものって、最下位から先に発表していくもんじゃないの?
『あおいさんです!』
「「「は?」」」
私、サキ、いろはすの声がかぶる。
けど、後ろでひーちゃんはだろうなとうなずいていた。
それから、私、(あおい)の今までの歴史を振り返り、『続いて第二位は―――』とかそんなことを抜かす。
「え? 私が今いくら持ってるとか出ないの?」
「うん。出ないよ」
「まじか……」
『ななみ(ひすい)さんです!』
✕ ✕ ✕ ✕
『第三位は―――れな(いろはす)さんです!』
そしてまた、れな(いろはす)の歩んできた歴史が語られる。
正直いらない。これ。
✕ ✕ ✕ ✕
『第四位は―――かのん(サキ)さんです!』
で、もう飽きてる、歴史が流れる。
そして……。『Giiが使えるようになりました!』
そう画面に表示されて、終わった。
というか、Giiってあれだよね。自分が作ったオリジナルキャラをゲームに登場させたりできる。あれだよね。
あれをクリア報酬にしていいの? 初期装備でもいいと思うけど。
終わった?
「え? これで終わり? 本気で言ってる?」
「本気で言ってるよ」
「なんか、こんなに苦しんだのに、最後がこれってなんか後味悪いわね」
「そうだよお………。なにこれ?」
✕ ✕ ✕ ✕
後味悪すぎでしょ。
気が付けば、配信時間は五時間に到達しようとしていた。
もうすぐ十時だ。
「じゃあ、とりあえず配信はここで終わりにしようか。もう、私なんか疲れちゃったよ……」
「えー。もう一回やろうよ」
「冗談言わないで。ほら。同接数みて見な? はじめは3万人ぐらいいたのに、いまじゃ6000人ぐらいしかいないよ?」
✕ ✕ ✕ ✕
こうして、私の人生は終わった。
というか、なんでゲームのきゃら、ゲーム開始時から、最後のゴールまで一切キャデザ変わらないの? なんで? 不老なの?
『こんな1回プレイしただけで確実に中古ゲーム屋さんに走りたくなる作品が驚きの「6090円」、ちなみに元のハッピーファミリーも同価格である。
超微妙なマイナーチェンジ版の癖して、ビタ1文も安くしないタカラトミの姿勢には本当に頭が痛くなってくる。
これなら俺の人生の方がまだ面白いのではと再確認できた事だけは良かった』
――――――クソゲーオブザイヤー選評から一部抜粋。




