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067.ランドバルト侯爵邸での出来事

「ラント、お帰りなさい」

「「「お帰りなさいませ、旦那様」」」


 マリーがラントの帰宅を祝ってくれる。使用人たちが一斉に頭を下げる。この光景にも慣れていた。使用人に外套とローブを渡す。次の日には綺麗にブラッシングされ、畳まれて部屋に置かれている。躾の行き届いた使用人たちだ。信用に値する。

 ラントが騎士服になるとマリーが抱きついてくる。これもいつものことだ。使用人たちの目など気にならないのだろう。ラントも気にしないことにしている。

 マリーを抱き寄せる。柔らかい体が押し付けられ、ムラムラとする。今日呼ぶ侍女は誰にしよう。それとも湯で使用人を抱くことにしようか。マリーに齎された劣情を他の女で解消する。最低だと思うがマリーが認め、望んでいることだ。許されているとも言える。


「ラント」

「マリー」


 マリーの瞳が潤んでいる。ラントは求められるままにマリーにキスを落とした。マリーは喜び、ラントのキスに応えた。舌使いがうまくなっている。調教の成果だ。

 しばらくキスとマリーの体を堪能し、自然と離れる。

 今日あったことを報告される。ランドバルト侯爵がラントに会いたいそうだ。まさか侯爵を呼びつける訳にも行かない。即座に行くので都合が良い日取りを書簡で聞いてくれとサバスに命じた。サバスは既に書簡を送っていたらしい。用意の良いことだ。


 湯で使用人を抱き、食事を堪能し、ベッドに寝転がる。コンコンコンとノックがされる。声を掛けると扉が開く。扇情的な格好をしたアドルフィーネ母娘たちが並んでいる。

 ラントは親子丼と姉妹丼を同時に楽しむことにしたのだ。彼女たちも呼ばれた時点ですでに火照っている。

 長い夜になりそうだとラントはニヤリと笑った。




 翌日、即会いたいと返事が来たらしく、ラントはランドバルト侯爵邸に向かっていた。ラントが訪ねると家令や使用人たちが一斉に礼をして迎えてくれる。

 なにせ主人を助け出した功労者だ。使用人たちの感謝の念は絶頂だろう。女の使用人たちからは秋波すら感じられた。良い女が揃っている。流石侯爵邸だ。マリーの実家の公爵邸も良いが、ほぼコンプリートしてしまった。たまには違う味も楽しみたい物だとラントはほくそ笑んだ。見ているだけで目の保養になる。


「こちらです。旦那様は元気になられましたが大事を取って私室でお会いするそうです」

「構わない。侯爵様がお元気になられたと聞いて嬉しい限りだ」

「これも全てクレットガウ子爵のおかげでございます。使用人一同感謝しています」


 初老の家令の案内により、ランドバルト侯爵の私室に案内される。そこにはベッドで寝るランドバルト侯爵。そして妻。美しい娘たちが揃っていた。当然侍女や騎士たちも控えている。息子たちは居ない。領地の管理に帰しているようだ。


「来てくれたようだな。クレットガウ子爵。こんな状態で失礼する。直接礼を言いたいと思っていてな。まさか毒を盛られているなどとは全く気付かなかった。恥ずかしくて顔から火が出そうだったよ。弟がそれほど野心に燃えているとも気付かなかった。身内だからつい甘く考えてしまったのだな。貴族の家督と言う重さを知らぬ愚かな弟は反乱などを起こしてクレットガウ子爵に処理されたと聞いている。本来は私がやらなくてはならないことだったがクレットガウ子爵の手を煩わせてしまったな。すまぬ。そしてランドバルト家を救ってくれた礼を言う。当然褒美もだす。望むだけ与えよう」


 ランドバルト侯爵の言葉は本気に思えた。爵位すら頂けそうだ。


「勿体ないお言葉、感謝します。お元気になられたようで大変嬉しいです。私など微力を王太子殿下にお貸ししたに過ぎません。侯爵閣下を救ったのは王太子殿下です。それをお忘れなきよう」

「謙遜は良い。子爵の働きは私も調べさせて知っている。王国貴族や騎士の誰にあんなことができようか。私も報告書を見て目を疑った。三度も読み直してしまったほどだ。だが事実だ。なにせ王太子殿下が目撃者なのだ。誰が疑えようか」


 ランドバルト侯爵はベッドの上で笑った。顔を見ると晴れ晴れしている。やつれていた肉が戻り、がっしりとした体つきだ。武の気配がし、魔力も研ぎ澄まされている。

 さすが南方を任せられた南方の雄、ランドバルト侯爵だ。並の貴族などとは威厳が違う。ベッドに寝ていると言うのに貫禄で一歩下がってしまいそうになった。

 コルネリウスなどはまだこの域に達していない。二十年近く侯爵位に君臨していた男だ。国王陛下と同年代だろうか。なかなかの男ぶりだ。もう歩けるようになったと言う。これならすぐさま回復するだろう。


「さて、卿への褒美なのだがな、色々考えたのだが私の娘を娶らんか。末の娘だが美しく育っている。まだ貴族院にも通っていないが少しすれば美しさが華開くだろう。どうだ、卿にとっても悪い話ではなかろう」

「それは……」

「ヒルデガルデ・ドゥ・ランドバルトと申します。子爵様のおかげで当家は助けられました。感謝の念に堪えません。子爵様の側室でしたら喜んでなりますわ」


 ラントは視線の集まった美しい少女に目を向ける。まだ若いが確かに美しい。さらりとした金髪に美しい赤の瞳。紛れもない貴種の娘だ。立ち姿だけで美しい。教育もしっかりされているのだろう。挨拶も鈴が転がるような美しい声だった。まだ年は十四だと言う。まだ若い蕾だ。だがしっかりとした体つきをしている。この美しい娘が自分の物になるのか。

 ラントは心の中で歓喜した。そして劣情を必死に抑えた。まさか侯爵の前でだらしない表情をする訳にはいかない。がっつくのも良くない。ぐっと我慢する。


「良いのですか。侯爵家の至宝と言われてもおかしくない美しさですが」

「構わぬ。卿はマルグリット様を正室に迎えるのだろう。側室で良い。当家の誠意だと思って受け取ってくれ。貴族院には通わせるが通っている間に孕ませてしまっても良いぞ。稀にあるのだ。そう珍しい事ではない。子爵の種であれば素晴らしい子が産まれるだろう。それとうちの侍女たちや使用人たちは好きに食べて良い。卿の子種が欲しいのだ。子爵の種なら次代の侯爵家は安泰になるだろう。いつでも屋敷を訪ねてくれ。侍女や使用人たちにも既に了承は取っている。クレットガウ子爵ならばと我先に手を上げる者も居たくらいだぞ。失礼ながら子爵の経歴を調べさせて貰った。まさか我が領にこれほどの逸材が居たとは驚きだ」

「有難き幸せ。マルグリット様と相談してからになりますが、きっと彼女を側室に迎え入れることでしょう」

「うむ、本来は私の養子にしようと思ったのだ。我がランドバルト侯爵家の子であればマルグリット様を妻に娶っても全くおかしくないだろう。どうだ?」


 ラントはその提案にぐらりと心が揺れた。功を上げなくともマリーを娶れる。その餌が目の前に放り出されているのだ。だがラントはぐっと肚に力を入れて我慢した。


「騎士爵の頃であれば有り難く頂いたでしょう。ですが既に陛下から子爵の位を頂いております。我が忠誠は陛下にあり、王太子殿下にあります。有り難い申し出ではありますが、お断りさせて頂きます」

「ふふふっ、さすがの男振りよの。だがそれでこそ天下に名を轟かしたクレットガウ子爵よ。卿は自力でマルグリット様を得るというのだな。その意気や良し。俺が女ならば惚れ込み、即座に足を開いただろう。ハハハッ、今日は泊まって行ってくれ。公爵邸には先触れを出す。マルグリット様にも許可を取る。当家のシェフも公爵家のシェフに負けるものではないぞ。存分に食事を食べてくれ」

「はい、ありがたく頂きます」


 ラントは侯爵家のシェフの豪勢な食事を頂いた。侯爵も参加していた。もう食事もできるらしい。まだ少食だがしっかりと肉を食っていた。あと数ヶ月もしないうちに往年の体を取り戻すだろう。


「客室も素晴らしいな。公爵家とは違う赴きがある」


 与えられた客室にラントは一人ソファに座って煙管キセルを吹かしていた。手にはグラスが有り、侯爵家秘蔵のワインが入っている。南方はワインの有名な産地だ。さらに侯爵家秘蔵のワインだ。これほどのワインがあるのかと驚くほど美味かった。


 コンコンコンとノックがされる。声を掛ける。どうしたことだろう。もう夜半だ。ラントもそろそろ寝ようとしていた所だ。

 ドアを開けると侯爵夫人と幾人かの侍女がいた。確か側室の一人だった筈だ。皆美しく、扇情的な格好をしている。


「どうしました、夫人。そろそろ寝る時間だと思いますが。それにその格好は如何いたしました」

「わたくしは今日受胎日なのです。それに後ろの侍女たちも同じです。クレットガウ子爵の種を頂きたいと思ったのです。夫も了承しています。見事、クレットガウ子爵の種で一発で孕ませてくださいませ」


 まさか侯爵夫人がそんなことを言い出すとは思わなかった。だが閉ざす扉はない。侯爵閣下も了承していると聞く。


「わたくしは侯爵家の出で、魔力も高いです。わたくしと子爵様の子ならば素晴らしい子が生まれますわ。ランドバルト家に子爵様の血が欲しいのです。もう年増で申し訳有りませんがまだ女は終わっておりません。どうかしら」

「いえ、美しいですよ、マダム。どうぞこちらへ」


 熟れた熟女と、若く美しい侍女たち。その数は五人に上った。しかも受胎日だと言う。要は孕みやすい日の事だ。前世では危険日などと言われたが子を産む事が奨励されるアーガス王国などでは神の祝福が得られやすい日として認知されている。


(この女たち全員を孕ませて良いのか)


 ラントはゴクリと唾を飲み込んだ。酔いなど吹き飛んでいた。体が自然と滾る。火照っている。目の前の女たちもラントの獰猛な男の視線を感じたのか火照っている。

 その日ラントは五人の女を一晩中鳴かせた。朝にはまた訪ってくださいと縋られた。

 朝食を頂き、朝風呂を浴び、そこでも使用人たちに縋られた。全員受胎日だと言う。ランドバルト侯爵の本気を感じた。これも褒美の一部なのだ。ラントは求められるまま全て平らげた。



 ◇ ◇



「まさかランドバルト家もラントを狙っていたなんて」

「仕方有りませんよ、マルグリットお嬢様。ラント様の魅力は高く、独り占めできるものではありません。なにせベアトリクス王妃殿下までラントに目をつけているのです。あの方なら王妃の地位になければ必ず自分で足を開いたでしょう。むしろ悔しがっていると思いますよ。程よい年頃の王女が居たら必ずラントに宛てがい、王家に取り込んだことでしょう」


 マリーの言葉にエリーが笑う。あの叔母ならありそうなことだとマリーも笑った。

 実際近衛騎士や侍女を送り込んできているのだ。ラントは喜んで彼女たちを貪っている。ラントはどんな女を抱いた後でもマリーに優しくしてくれる。マリーが一番だと囁いてくれている。マリーを娶る為に、目立つことを望まないラントが功を上げて表舞台に立ってくれている。

 それだけで満足するべきなのだ。ラントはマリーだけで独占できるものではない。何せテールの麒麟児なのだ。放浪の大賢者の唯一の弟子であり、エーファ王国やアーガス王国、更に北の帝国にまで名を轟かせた俊才である。

 それがマリーの惚れたラントと言う男である。彼の子たちが次代の王国を影で支えるだろう。何せ公爵家と侯爵家、そして王家がこぞってラントの種を欲しがっているのだ。子が生まれればしっかりと教育も行われるに違いない。


 マリーは王国の至宝の再来と言われている。だが男に限ればラントは王国の救世主と既に名高い。歴史書には必ずラントの名が載ることだろう。

 すでにテールの麒麟児の話は歴史書に刻まれている。それほどの男なのだ。多少の浮気くらいは寛容に見なくてはならない。マリーだって公爵家の為に侍女や使用人をあてがっている。やっていることは同じなのだ。

 ランドバルト侯爵はラントが侯爵邸に泊まる連絡と同時に、娘を側室にラントに与えたいと書簡を送ってきた。


 流石のマリーも断ることなどできない。仕方あるまい。聞いてみた所ランドバルト侯爵の愛娘で、とても器量の良い美人だと言う。共にラントを支える大事な娘だ。今度茶会に呼び、仲良くなって置くべきだ。マリーはそう思い、茶会に誘う為、手紙をさらさらと書き出した。

 側室になる娘だけではなくランドバルト侯爵の娘たちや妻たちも呼ぶべきだろう。ランドバルト家と仲良くなっていて損はない。何せ彼らはラントに救われたのだ。マリーからの誘いに乗らない訳がない。そう確信していた。


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