1 犬猿の幼馴染の婚約発表①
はじめまして&お久しぶりです。
瑞貴です。
本作はすでに「小説家になろう」様のサイトへ投稿している同タイトル作品の【中編版】となります。
こちらは長編版とやや設定が異なるため、6万5千文字で完結の作品となります。
すでに長編版をお読みいただいている読者様にとっては、新作ではなく、大変申し訳ないのですが、瑞貴の作品をこのサイトに集約するために投稿させていただくので、ご理解・ご容赦ください。
そのため、全話さくさくと投稿していきます。
時は、ヴァロン王国歴の四月一日。
国中の令嬢を泣かせる大きなニュースが飛び込み、貴族新聞を手にする者たちに激震が走った──。
「おい、この新聞の記事を見てみろ!」
トルイユ子爵家の狭いリビングの扉が大きく開くと同時に、ダニエルの興奮した声が響く。
ちなみにダニエルとは、六つ歳の離れた兄の名前だ。
兄は陽気な性格だけど、婚約者も恋人もいない。いわゆる、絶賛パートナーを募集中の、ぼっち男である。残念ながら私も……。
先見の明もないくせに、ギャンブル気質のダニエルが、全く価値のない山を、大きな借金を作ってまで無理に購入した我が家は、頭に花の咲いた一家と社交界で笑われ、白い目で見られ続けている。
その原因を作った当の兄は、「温泉王になる」と世迷いごとを、自信げに言い続けているため、社交界で変人扱いをされているのだが……。
「ほら、読め読めっ!」
そんな兄から渡された貴族新聞──。視線を向けずにボケッとしていると、兄が続けた。
「ほら、新聞のここだ。早く読めよ!」
「何か面白い話でも載っているのかしら?」
「ビッグニュースだ。ラングラン公爵家のレオナール様の婚約発表が書かれてあるぞ」
「ふ~ん」と間延びする音を出す私は、その話題に大して興味はない。会えば喧嘩の幼馴染のことだし、どうでもいい。
まあ一応、レオナールは幼馴染ではあるし、これくらい知っておいても損はないだろうと目を通す。
なになに――。
「はっ……?」
「なぁ、驚いただろう」
絶句する私の反応を見て、茶色の瞳を大きく見開く兄が得意げに言った。
貴族新聞へ目をやると、大きな文字の見出しで、突拍子もない書き方をされている。
【緊急発表!】
『数多の令嬢たちが、妻の座を狙っていたレオナール・ラングラン(二十歳)が、婚約を発表!』
ちなみに勘違いはよくないから言っておくけど、私は数多の令嬢の一人には入っていない。
レオナールなんかを狙っていないし、狙うわけもない。
彼は、私を「枯れ木」やら「お前」と言い、名前すら呼んでくれないのだ。
ちなみに、どうして枯れ木かというと、緩いウエーブの茶色の髪が、枯れ葉のようで、くりっとした茶色の瞳はどんぐり。そのうえ細長い手足が枯れ枝に見えるらしい。
はぁ⁉ どうやっても見えないだろう!
彼はいつも私をケラケラと笑っているけど、むしろ私が枯れ木に見えるのなら、彼の目は、相当悪いのかしらと心配になるレベルだ。
それはさておき、その続きを読もうと再び文字を追う。
レオナールについて、随分と誇張した貴族新聞によると──。
【紫の瞳と輝く金髪の見目麗しい貴公子が、このたび自身の婚約を公表した。
だが、現時点でラングラン公爵家は、そのお相手の言及を避け、婚約者は未だ謎のままである。
ここ数年、年若いご令嬢が彼の妻の座を狙い、熾烈な婚約者戦いを繰り広げていたが、一体誰がラングラン公爵家のご令息の心を捉えたのか⁉
婚約者については、公爵家主催のパーティーで公表するとのこと】
──以上が、新聞記事の内容だ。
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