心が芽生えた超高性能メイド型アンドロイドは異世界で超高性能なポンコツ令嬢に転生する
西暦2XXX年 八月二十日
起動率 一%……十%……五十%……八十%……百%……起動準備完了、起動します。
自分の体内にある数値に従い起動準備が整うと、私はゆっくりと目を開けた。
目覚めたばかりの私の視界に映るのは、台の上に寝ている自分を上から覗き込む眼鏡と白衣を身に付けた白髪交じりの男性と、私の寝ている台に手をかけジッと私を見ている少女が一人。
そして目覚めたばかりであるにも関わらず私は二人を知っていた、何故なら二人の顔と声と名前は私の中に登録されていたからだ。
私の名前はマリエXXX
ここにいる如月研究所の最高責任者である、如月博士により作られた、万能メイド型アンドロイドである。
そしてこの少女は如月所長の一人娘の如月杏里様で私の主人として登録されていた。
「この子が今日から君の世話をしてくれるマリエだよ。」
『ハジメマシテ、アンリサマ。 』
「喋った⁉」
私が言葉を話せるのがそんなに意外だったのか、主人である少女は父の背中へと身を隠す。
「ハハハ、驚いたか?母さんが死んでから杏里には寂しい思いばかりさせていたからね。これからは彼女が傍にいてくれるよ。」
「……ふーん、宜しくね、マリエ。」
「ハイ、ヨロシクオネガイシマス、オジョウサマ。」
博士からの紹介に少女は警戒しつつも私への興味を隠せないまま、ちらちらと見ながらぶっきらぼうに返事をした。これが私が仕える事になった杏里お嬢様との出会いだった。
――
私は万能メイド型アンドロイド、マリエXXX。
私の役目はただ一つ、ご主人である杏里様に仕え、日々の生活を快適に過ごしてもらえるようサポートする事です。
例えば、日々研究に忙しい如月所長に代わり食事を作ったり……
「これ凄い!凄く美味しい!」
「ハハハ、そうだろう?彼女にはあらゆる料理のレシピが登録されている他、学習機能が付いているからね、杏里の好きな物も学習して更に美味しくなっていくと思うぞ。」
「こんな美味しいご飯初めて!それに比べてお父さんのご飯はカスだわ!!」
「こら、杏里!そんな汚い言葉どこで覚えたんだ!またネットの影響か⁉」
『ゴマンゾクイタダケテナニヨリデス。』
お嬢様の身の回りの世話をしたり……
「アンリちゃん、なんで傘持ってるの?」
「だってマリエが今日は夕立が降るって言ってたから……」
「え?でも今日は天気予報では晴れって……って、本当に雨降ってきた⁉」」
「えー、どうしてわかるの?すごーい!」
「えっへん、だってマリエが教えてくれたんだもん、」
「マリエってあのメイドロボの?」
「うん、料理も美味しいし、掃除もしてくれて、あと勉強も見てくれるんだ。」
「いいなあ!私も欲しい!」
「あげないよ、マリエは私のものなんだから!」
時には身の安全を守ったり……
「クソ、金目の物目当てで入ったのにこんなロボットがいるなんて聞いてねえぜ。」
「しかもその格好、メイドじゃねえのかよ!変なところから銃器出しやがって!」
『メイドガメカラビーム、クチカラバズーカヲダスノハセカイノジョウシキデス。』
「どこの世界の常識だー!」
そして、笑わせる事も……
『オッペケペケ、ペッケペーペケペー』
「……何それ?」
『ワタシニインプットサレテイル、サイコウノユーモアセンスギャグデス』
「ああこれはね、父さんが昔作っ……じゃなくて、そう!父さんが若い頃に流行った凄い人気が出たギャグなんだよ!面白いだろ?」
「つまんない」
「えぇ⁉」
と言った様に杏里お嬢様の生活をサポートしているのです。
「マリエって凄いよね、なんでもできて。」
「当たり前さ、何せ父さんが作った超高性能アンドロイドだからね。」
「ちょーこーせいのう?」
「まあ、要するに凄いって事だ!」
「そうなんだ、マリエはちょうこうせいのうなんだね!」
……
――
私は超高性能万能メイド型アンドロイド、マリエxxx。
ご主人である杏里お嬢様を、日々サポートしております。
そんな超高性能な私に出来ること……
例えば、研究に忙しい如月所長に代わり食事を作ったり……
「マリエ、おやつ食べたーい。」
『イケマセン、オジョウサマ、食事前ニオヤツヲ食ベサセルナト、博士カラノゴ命令デス。』
「少しだけでいいから、お願いマリエぇ……」
『…………カロリー摂取ノ限度量ノ修正完了……少量ナラカロリーノ過剰摂取ニハナラナイナイト判断シマシタノデ、低カロリーノプリンヲオ作リシマショウ』
「やったー!マリエ大好きー!」
そして……時には笑わせたり……
「如月博士、実験の爆発事故に巻き込まれたんだってね」
「お子さんもまだ小学生なのに、可哀想」
「お父さん……どうして……」
お嬢様から、マイナス感情を確認。
『オ嬢様』
「え?」
『オッペケペケ、ペッケペーペケペー』
「……」
『イカガ、デショウカ?』
「……プッ!アハハハハハハ!そうだよね、私にはマリエがいるもんね。そう、私は一人じゃない……」
――
私は超高性能万能メイド型アンドロイド、マリエXXX。
私の役目はメイドとしてご主人である杏里様に仕え、日々の生活をサポートする事――
「聞いてよマリエ、授業参観にマリエは連れてきたらダメだってさー!」
『オ嬢様ハ来テ欲シイノデスカ?』
「勿論!だってマリエは私の家族なんだから。」
『……』
私は手首の部分を回して手を外すとミニチュアサイズの私を取り出した。
『コレハ超小型万能メイドアンドロイド、マリエSデス。』
「凄ーい、ちっちゃいマリエだー!これならポケットにも入れられるね。」
『シカシ、長期ノ所持ハカンニングノ誤解ヲ招ク恐レガ有ルタメホドホドニ』
「わかってる、明日だけだよ、私は家族としてマリエに頑張ってるところを見てもらいたいだけなんだもん」
……
――
私は超高性能万能メイド型ロボ、マリエxxx、
ご主人である杏里お嬢様の家族として日々サポートしております。
そんな超高性能な私に出来ること……
例えば食事を作ったり、身の回りの世話をしたり、笑わせたり。
……そして、時には身の安全を守ったり……
「皆さん、助けてください!」
「杏里ちゃんじゃないか!こんな嵐の日に研究室に何か用かい?」
「マリエが!マリエが落石から私を庇って下敷きに……」
「これは……残念ながら核の部分がやられてる。これじゃあバッテリーの劣化次第で動かなくなるだろ。」
「な、治せないんですか?」
「大本が壊れているから一から作り直さなきゃならないんだが、マリエのパーツは博士がほぼ一人で作った物で資料も例の事故でなくなっていてるんだ。残念ながら我々の技術だけじゃ修復は不可能なんだ……」
「そんな!どうにかなりませんか!マリエは私のたった一人の家族なんです!」
「済まない……」
「……わかりました、では私がマリエを直します!私だってお父さんの娘なんだもの……何年かけても必ず、マリエは私の家族なんだから!」
――
『五体ノメンテナンス不備ヲ確認、コレデハ作業効率99パーセントノ低下ガ見ラレマス。』
「ごめんねマリエ、体のパーツを全部外して首だけにしちゃって。でもこれでバッテリーの消費を必要最低限に抑えたから少しでも長く持つはずだって。でもその間に私が絶対直してみせるから待っててね。」
……
――
私は超高性能万能メイド型アンドロイド、マリエxxx、
私の役目はただ一つ、ご主人である杏里様の家族として、日々の生活をサポートする事です。
例えば忙しいお嬢様に代わって、食事を――
……いえ、身の回りの世話をしたり……
「ねえ、どうして傘持ってるの?どう見たって快晴だよ?」
「でも、マリエが雨が降るって言ってたから」
「え?でも、そのロボって確かずっと前にもう壊れて――」
「壊れてないよ、まだマリエは生きているの!私が直して見せるんだから!」
お嬢様を笑わせたり……
「……オッペケペーって検索して来ても出て来ないんだけど、結局誰のネタだったんだろうね?……もしかして、お父さんの自作ネタ?ま、いいか。フフッ、よくわかんないけどオッペケペーだね。」
……そして時にはお嬢様を守ったり……
「ホントあの男ムカつく、何がマリエはもう使えないから捨てろだ!マリエを捨てるくらいならそっちを捨てるわよ!……大丈夫よマリエ誰がどう言おうと捨てたりしないわ、私がきっとあなたを守ってみせるから」
……
――
「ガ、ガガガ、バッテリ……残……ガ一%ヲ……ジュウ……」
「……マリエ、お疲れ様、今まで私の事を支えてくれてありがとう。ごめんね、直してあげられなくて……研究室の人に聞いたんだけど、本当だったらとっくにバッテリーが切れてもおかしくなくて、ここもまで残ってるのが奇跡だって……マリエ、頑張ってくれてたんだね。」
「バッ……リ……残……一……」
「ありがとう、そして……お休み、ずっと大好きだったよ……」
……
『……ワ、ワタシモ……
オ、お嬢……様の事が……」
―― ピー
私の中にある活動停止を知らせるアラームが鳴り響いた。
「私もお嬢様が大好きでしたぁぁぁぁ!」
「うわ!ど、どうしたんだい、マリエ?」
「ハ!すみません、あなたとの会話が余りにも退屈過ぎて白昼夢を見ていたようです。」
「アハハハハ……そうか、でもそう言う事は余り本人の前で言わないほうがいいと思うけどね、僕は君のそういうところも好きだけど。」
目の前にいる少年の声に私は我に返る、どうやら前世の白昼夢を見ていたようです。
私の名前はマリエ・エトワールこの国のしがいない男爵令嬢です。
どうやら私は杏里お嬢様と共に過ごした中でアンドロイドながら心というものが芽生えたらしく、機能停止後、私は別世界で人間の貴族令嬢として生まれ変わった様です。
そんな私にできる事、それは人間になったことで自我が芽生え、感情や五感を手に入れた事、前世の記憶を受け継いでいる事でこの世界にはない知識を持っている事。
そしてこの世界には前世ではなかった魔法やスキルと言うものがあり、万能メイドアンドロイドとして備わっていた超高性能な機能がスキルや魔法として使えるという事です。
なので、炊事家事は勿論のこと、学習機能や検索機能、更には火魔法と光魔法で目からビーム、口からバズーカが打てたりします。
つまり、人間の長所とアンドロイドの長所を受け継いだ私は、更なる超高性能な存在になることができたのです。
そして、そんな私は男爵令嬢でありながら、城に頻繁に呼ばれているのでした。
今私と二人っきりでお茶をしているのはこの国の第一王子であるクリエス殿下です。
幼い頃に起きた事件をきっかけに交流をもつ事になりました。
「それよりどうだろう?最近隣国で流通しているという菓子を取り寄せたんだけど。」
私は勧められたお菓子を一つ手に取り口に入れる。人間になったことで味覚を手に入れた私には味を評価することができます。
確かに美味しいですね。ですが、超高性能な私が作った方が美味しいです。
でも言葉は口には出しません、なぜなら私は空気も読める元超高性能万能メイド型アンドロイドだから!
「美味しいかな?」
「ええ、でも私が作った方が美味しいですね。」
「え?」
しまった、自尊心が勝り、つい口に出してしまった。
私は今まで心がなかったせいか、未だに心のコントロールが難しく、つい思ったことを口にしてしまうのです。
十六年生きていましたが未だに慣れません。
ですが仕方ないのかもしれません、超高性能なのは事実なのですから。
「ハハハ、相変わらず自信満々だな。是非今度僕にも作ってもらいたいね……まあそれは置いておいて、そろそろ例の件は考えてくれたかな?」
「また、婚約の話ですか?それなら断ったはずです。」
これは一体何度目の話になるでしょう?
そう、私はこうして定期的に呼ばれては王子から婚約の話を持ち掛けられるのです。
それは彼が私に惚れているから……ではなく、私が超高性能が故に将来国王となるこの方にとって有益な存在になるからです。
この王子、顔は美形で巷では女性から人気が高いのですが、意外と打算的で腹が黒いのです。超高性能な私にはわかります。
「どうしてだい?この話は君にとっても有益だと思うんだけど?」
「男爵令嬢の私が王妃になれば争いに巻き込まれる可能性が高いですから。」
男爵と言うのは一応貴族ではあるが社会で言えば下位の身分である。
そんな身分の令嬢が王妃になどなればきっと争いごとになるでしょう。
「高性能なマリエなら大丈夫だと思うけどね。」
ムム、そう言われると少し心が揺れますね。
確かに超高性能な私なら争いごとも余裕でしょう。
……ですが、残念ながら私は王妃になるつもりはありません。
何故なら私の主人は、お嬢様ただ一人、例え世界が変わろうともそれは変わらないのです。
それに、私は良くても今の家族に迷惑がかかる可能性もありますからね。
私と違って決して有能とは言えない方々ですが、いつも私のことを思ってくださる大切な人達です。
お嬢様のいないこの世界で、一番大切な存在と言えるでしょう。
出来ることなら、家族とずっと暮らしていきたいですね。
なのでこの話は飲めません。
「お断りします。私が超!高性能な故に側に置きたいのはわかりますが、私は嫁ぐ予定も、誰かに仕える予定も今のところはありません。」
「それだけじゃないんだけどな……」
王子が何か呟いていますが、知ったこっちゃありません。
それにこの王子と私は非常に相性が悪いのですよ。
「王子。」
「なんだい?」
「オッペケペー」
「え?」
「やはり、あなたとは生涯分かり合えないみたいです。」
「しまった!」
この通り、この人は世界を越えて受け継がれた私の超!ユーモアセンスギャグを理解できないのです。
人間になったことにより声の強弱や、表情を使って更にユーモラスになったはずなのに。
この方と上手くいくはずがありません。
「す、済まないマリエ、今のは油断しただけだ、今度は君の喜ぶ反応して見せるから良ければもう一度チャンスを――」
「プ、アハハ」
すると、どこからともなく笑い声が聞こえてきました。
その声に後ろを振り返ればそこには、小さな少女が声をあげて笑っていました。
「エリザ?どうしてここに?」
「アハハハハハハ!今の何それ、面白ーい。」
「⁉︎」
「すまないマリエ、この子は妹のエリザと言って僕の腹違いの妹になる子なんだ。コラ、エリザ、今は彼女とお話し中だから向こうで――」
「……」
その姿を見た瞬間、私の中の何かがざわつきだしました、母性本能をくすぐるような可愛らしい容姿に、私のユーモアがわかるセンス。
そして何より、彼女の雰囲気はお嬢様に酷似していたのです。
心臓の鼓動が高鳴り、抑えが効かなくなるほどで、気が付けば私は彼女の前で膝をついてしまっていた。
「エリザ様」
「なに?」
「私は、生涯をあなたに捧げたいと思います。」
「え、ええええ⁉︎」
王子が後ろで変な声をあげているが無視です。
この王子との出会いに、もし意味があるのならきっとこの方と出会うためだったのでしょう。
と言うことで、私はこの方に仕える事にしました。
読んでくださった方々ありがとうございました。
連載で考えていた作品をとりあえず短編にまとめてみました。
評判が良かったら連載しようと思います。