エピローグ
…午前7時40分、金曜日。
ドタバタドタバタと階段を上がってくる音がする。
バタン!と大きな音をたて、ドアは開いた。
「こら、いつまで寝てんの!?今日は終業式、特に遅刻しちゃダメでしょ!」
布団を無理やりはがされ、俺の姿があらわとなった。
「はー…だるいな」
俺は重たい体をゆっくりと起こし、軽くのびをした。
「ちんたらしてないで、さっさとご飯食べて着替えて学校に行きなさい!」
さっきから怒鳴っているのは俺の母親。
俺は母親が苦手だった、なぜかって、それは毎日俺の事を怒るから。
「はいはい、わかったよ母さん」
「はいは一回!」
俺は高校1年生。
ぐーたらしてるように見られるけど、結構真面目だと自分では思っている。
ご飯を食べていると、TVでニュースが流れていた。
「深夜2時ごろ、○○アパートが何者かに放火された模様で――――」
俺はうっかり、口を動かさず見入っていた。
「この辺じゃないの!物騒ねぇ」
「放火にしては、随分と…なんていうか、炎が強かったみたいだね」
TV画面に映っていたのは、アパート一帯がほとんど焼け野原になっている全貌だった。
「――--って、もうすぐ8時よ!早く着替えて学校に行きなさい!」
「やっべ!行ってきます!」
学校に向かっている途中に、いきなり肩を叩かれた。
「いって、誰だこの…って、ユーヤ!」
藤原裕也…俺の学校一のやんちゃ野郎。
俺とは小学からの付き合いで、こいつはなんだかんだで根は良い奴だ。
「よっ、ソラ!いよいよ今日は終業式だな!へへ、1年過ぎるのってはえーな」
俺の名前は夢月 空…かなり変わった名前って言われる。
「せーせーするよ。やっと一休みできるって感じでさ」
「へへ、ソラらしいけどさ。いつも休みって感じしてんじゃん」
「失敬な!…って、そうだよな。平和でいいってことだよ」
さっきから思っていたが、どうにも警官が多くいた。
「何か事件でもあったか?このへん…」
「ソラ見てなかったのか?アパートが放火された事件、あれで警戒してんじゃね?」
「あー…それなら見たよ。凄く焼け野原だったな」
「ただの放火であそこまでいくんだな、すっげー怖い!」
ぐだぐだ話をしていると、すぐに学校についた。
「そだ、終業式終わったらゲーセン行かね?この前すっげー可愛い娘いてさ!」
「ははは、暇だしいいけどな」
――――終業式の途中の出来事だった。
校長先生が前で話している時、高く大きな爆発音が校舎全体に響いた。
「なんだ!?」
「やだ、爆発!?」
生徒が動揺しだし、一人の先生が様子を見に行った。
…今でも覚えている。
儚げに揺れる黄色の髪、切なさを物語るような黄色の瞳、天使のような白き衣。
終業式の日、それが俺と彼女の初めての出会いだった。