第8話 教会と謎の声
《一日経過しました。10KP獲得しました》
《任務:〈No9〉を達成しました》
任務:〈No9〉初めてのお泊まりをしよう。
達成条件:拠点で二日目を迎える。
達成報酬:10開拓ポイント。
「はあぁ……朝風呂ってやっぱいいよな……」
今までのルーティンが身体に染み付いているせいか、朝6時に起きて朝風呂に浸かっている。
「今日は村の探索でもしてみるか」
風呂に浸かりながら予定を立てる。まずは拠点の探索だ。ここが自分の拠点になったのだから把握しておかなければいけない。
昨日は探索する余裕もなく、入口すぐの広場にいただけで周辺は見ていない。見に行く気も起きないほど疲れてたし。
《マスター、入浴中申し訳ありません。緊急任務が発生しました》
「緊急任務……?」
◇
「お、これも使えそうだな」
着替えを済ませた後、拠点の物色を始めた。廃屋で使えそうな物を拾っては井戸に立てかける。
これまで見つかった物は、鎌やクワ、剣、槍、陶器の食器類に謎の装飾品や工芸品、釣り竿なんてものもあった。どれも錆びていたり役立ちそうにない物ばかり集めているが、拠点を探索しなければならないのだ。
緊急任務:〈No1〉拠点の探索をしよう。
達成条件:本日中にすべての領域を確認する。
達成報酬:500開拓ポイント。尚、未達成の場合は、−100開拓ポイントのペナルティを受ける。
早急な対応を迫られる緊急任務があるようだ。
ペナルティもあるので絶対に達成したい任務である。
ひとまず昼まで探索して分かったことが三つある。
1. 家屋は全部で24軒。半壊状態の廃屋が8軒と残りは全壊した廃材の山。プランに聞いたところ、この村に100人ほど暮らしていたみたいだ。
2. 新しい森を発見をした。俺が最初に来た入口から向かって反対側、つまり南へ行くと森があるということが分かった。とはいえ、なんとなく地平線に森かな? そう思う程遠いので今は行く気はない。
3. 村の南側で教会を見つけた。半分以上は瓦礫と化しているため、俺が来た方角からでは見えなかったわけだ。ついでにこの場所で森も発見した。
一通り村の周囲と廃屋の中を見回ったが、緊急任務が達成できていないことを考えると残すはこの教会だけとなる。
早速、足を踏み入れることにした。
◇
「思った以上に広いな」
小さな村に見合わず教会はかなり大きい。
大聖堂とまではいかないだろうが、立派な教会だ。割れたステンドグラスが床に散らばり、天井が崩れ落ちたためか瓦礫で足場も悪い。そんな中でも傷一つない女神像が祭壇の奥に立っている。
「お、扉発見」
祭壇の左側に扉を見つけた。部屋の中は木のテーブルと椅子、本棚ぐらい。床に散らばっていた本を拾って読んでみる。
『遥か昔この地で二人の英雄が相対した。
一人はこの地を我が物とする黒の英雄。
一人はこの地を平等にと願う白の英雄。
幾度となくぶつかり合い、両者共に一歩も引くことはなかった。やがて戦果を広げ、この地を二分する戦いとなった。壮絶な戦が繰り広げた先に残ったのは紅い海と灰の大地だけだった。
後にこの両者の戦いは英雄戦争と呼ばれ、不毛の大地となったこの地を〈死の荒野〉と呼ぶ。
〜 創世記 〜 ハーネの黙示録 2章6節より』
「そんなところで俺は生活するのか……」
まぁ気にすることはないか。
『祭壇…を…け…て……』
「ん? プラン何か言ったか?」
《いえ、わたしは何も言っていません》
気のせいかと再び足を進めようとする。
『わ…助……て!』
言っている意味は分からなかったが、確かに女の子の声が聞こえた。
「おいプランからかってるのか?」
《さて何のことでしょうか?》
「とぼけても無駄だ。何を言ってるんだよ」
《マスター、たった今微弱な魔力反応を見つけました》
「魔力反応? どこからだ?」
《祭壇です》
プランに言われて祭壇を見に行く。
「……別に何もないぞ?」
《この下に魔力反応があります》
下? あ、祭壇を動かすのか、ってめっちゃ重い。
重厚かつ豪華な装飾が施された祭壇の重さったらハンパない。
目一杯の力でギシギシ押していく。
「こんなところに隠し階段かよ」
《地上には誰もいなかったのですが地下に何者かの反応があることが分かりました》
なるほど。プランは地下までは探知していなかったということか。ということは、さっきの謎の女の子はこの下にいるのか。
「プランこの下は危険か?」
《不明です。微弱な魔力反応はありますが、念のため一度武器を取りに戻られた方がいいでしょう》
今の俺に行かないという選択肢はない。なぜなら500ポイントも手に入るんだ。
−100ポイントなんてもっての外だし、何より謎の声に興味がある。行くしかないが、そのためにもまずは武器が必要だよな。
◇
現在の開拓ポイント:残265KP。
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次回は、21時に投稿します。
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