第54話 ダンジョン防衛戦終結
「ぷにぷに〜♪」
愛らしい声を響かせながら、ぷにまるさんが飛び跳ねながらコアルームを出て行きました。
私はコアルームから、ぷにまるさんの勇姿をダンジョンウインドウで見守ります。
ぷにまるさんの出撃によって、ダンジョンの空気が凍りついたように一変しました。
ダンジョン全体を包み込む重圧。
それは威圧という次元を超えた、格という存在を敵に知らしめることになります。
たった三十cmの愛らしい姿からでは到底考えられない威圧感を、敵は一瞬で感じ取ったのでしょう。
「「「グ、グルルルルルルルルルルルルルッ……!」」」
一国を滅ぼす力を持つS級モンスターたちでさえ、ぷにまるさんの威圧感を受けて、一斉に後ずさっていきます。
しかし、それでもモンスターたちは生み出された本能からか、己を奮い立たせるように腐敗した巨体を動かそうと抵抗しています。
「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォンンンッッッ!!!」」」
ダンジョン全体が揺れるほどの咆哮と共に、大群のモンスターが小さなぷにまるさん、ただ一体を狙って一斉に襲いかかりました。
腐敗した肉体に宿る不浄な牙。
鋼鉄をも紙のように切り裂く鋭い爪。
すべてを腐敗させる猛毒のブレス。
大地を砕き割る最上位の雷魔法。
咆哮と黒煙と閃光が入り混じる戦場で、その小さなスライムが残像を幾重にも残しながら疾駆し、迫り来る敵をいとも簡単にねじ伏せていきます。
その姿は英雄のようであり、恐怖すら感じました。
「ドガァァァァァァァンッッッ!!!」
ぷにまるさんが触れただけで、五mもあるアビスハウンドの巨体が軽く宙に吹き飛ばされ、牙を砕き、爪を折り、血煙を散らしながら光の粒子となって消えていく。
究極体当たり――SSクラスのぷにまるさんのスキルですが、その光景を見るだけで味方ながら恐怖で震えが止まりません。
「ぷにっ」
その瞬間、ぷにまるさんの姿が消えました。
透明化ですね。次の瞬間には敵の懐に潜り込んでいたかと思うと、胴体を突き破って巨大な風穴を空けます。
S級の巨獣をたった一撃で討伐するなど、まるで夢を見ているようです。
――ですが、これはただの序章にすぎませんでした。
その後は、もはやスライムではなく、別の生命体に思えてきました。何十、何百、何千と、瞬く間に瞬殺していくぷにまるさんは、ただ一筋の光となって戦場を駆け抜けます。
「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォンンンッッッ!!!」」」
「……ぷに」
敵の攻撃すべてを無効化するぷにまるさんにとって、腐敗のブレスも、最上位の雷魔法も、鋭い斬撃も、痛くも痒くもないようです。
「ぷ〜に〜っ!」
再び大きく跳ね上がりました。
次は自身を一体から二体へ、二体から四体へと分裂させていくスキルを使ったようです。
本来なら、分裂した個体は力が分散されると聞いたことがありましたが、どれもが信じられないほどの速さで、次々と敵を消滅させています。
――ということは、力の分散なく分裂できるぷにまるさんは、ダイチ様には劣りますが、ちーとというものではないでしょうか。
「ドガァァァンッ!!」――砲撃のような轟音と共に、敵は悲鳴を上げる間もなく次々と消え去っていく。
それは虐殺でも、殲滅でも、蹂躙でもありません。
ただ絶対的な序列を刻むための行為に過ぎないのでしょう。
「ぷにぷに〜♪」
小さな声がダンジョンに響きます。
そして、すべてのモンスターが光の粒子となった後に残ったのは、ぷにぷにと小さく跳ねる、愛らしいスライムでした。
こうして私の命とダンジョンを揺るがした戦いは、最弱種であった最強の英雄によって、終わりを告げることになりました。
『にんむかんりょうぷに♪』
その念話を聞いた瞬間、私は胸の奥から熱いものが込み上げてきました。何度もあきらめかけて、一度は殺されるのではないかという思いから、涙が溢れて止まりません。
そして、ぷにまるさんにお伝えしなければならない言葉を送ります。
「ありがとうございます! ぷにまるさんは私の命の恩人であり、新たな相棒です!」
『よろぷに♪』
◇
《特別任務:〈No1〉 を達成しました》
特別任務:〈No1〉 スフィアがモンスターを撃退する。
達成報酬:100,000開拓ポイント。
「――すげえええッ!!」
レベル50になった俺でも、全く見えないあの速さに加えて、スライム十八番のジャンピングアタックも半端なくかっこよかった。
途中で透明になった時には、あの踏みつけて倒したイン何ちゃらスライムに似てるなと思ったが、同じレベルの個体を分裂させながら物理も魔法も無効化するスライムなんて、完全に無敵で頼もしい限りじゃないか。
他にも色々と言いたいことはあるが、一つだけ気になったのは名付けだ。
スフィアがあのスライムにオメデタイムという名前ではなく、ぷにまるという可愛げのない名付けをしたのかがよく分からない。
俺と違って、スフィアにはネーミングセンスがないということか。
《マスター、わたしも同意見と断定します》
「やっぱそうだよな、プラン」
まあ何事もなく、無事に終わってホッとした。
――何にせよ、ダンジョン防衛戦だったか。
ダンジョンマスターの生みの親かどうかは知らないが、一筋縄ではいかないやつがいることが分かった。
あのお知らせの内容から、次に始まるのは時間の問題だろうから、油断して安心している暇はなさそうだ。さらにダンジョンを強固に作り替える必要もあるし、今回のような事態に備えて、スフィア自身も身を守る力を持ってもらうことも大切だ。
それにしても、あれほどのスライムが存在するとは思いもしなかった。それも進化の手順を間違えて生まれた産物とは、ある意味ではスフィアも恐るべしと言ったところだ。
「ん――ってことは、あの方法なら大量生産も可能なのか……?」
試してみる価値はありそうだな。と、その前にスフィアがダンジョンから帰ってきた。
「ダイチざまぁ……わ、わだじほんどに死ぬがど思いまじだがらぁ……!」
スフィアが涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら飛びついてきた。
そのまま一時間ほど俺の胸元にしがみつきながら、言葉にならない嗚咽を繰り返しては泣きじゃくっている。
ルナリスたちはというと、半ば呆れつつも安心したように見守っていたが、しばらくして皆それぞれ帰って行った。
気付けば俺のスーツはびしょびしょに濡れて、見るも無様な有様に。
スフィアが落ち着きを取り戻した後、俺は村人装備に着替える。
たまの村人Aというのは、いいものだ。
そして間髪入れずに取りかかる。
「さてと、早速始めるか」
特別任務でがっぽりとDPももらえたことだし、早速ダンジョンの強化をする。と思ったけど、やっぱり疲れたから家で寝よ。
◇
「へえ〜。今回もなかなか面白いマスターがいるね。――12番の子か。確か三百年ぐらい前の魔族の王女だった子だね……しかし裏で操っている、あの黒髪の男の子は何者なのかな〜? もしかして転生者とか? あはははっ! そうだったら楽しくなりそうだな〜。相変わらず1番と3番も面白いけど。久しぶりのDBTなんだし、楽しいおもちゃは沢山ある方がいいからね。久しぶりにワクワクしてきたよ。あ〜勝ち進んでほしいな〜。そしたらボクと戦おうよ」
お読みいただきありがとうございます!
任務達成を一部簡略化させていただきました。
そして更新する度に過去一のPVをいただき、嬉しく思います。是非ともブックマークと↓【★★★★★】で応援お願いします!




