第22話 ドラスポ
「次にルナリスたちのレベル上げだが、まずレベルと職業を教えてほしい」
「あたしはレベル52の戦士だ」
「わたしは48の支援魔法士です。戦闘は補助になりますので、戦うことはできませんが」
「わたくしは51の聖女ですわ」
「おい、レーナ。嘘はよくないぞ。お前は筋肉僧侶だろ」
「ち、違いますわ! れっきとした聖女ですわよ!」
「ん。シルフィのレベルは55。魔法使い」
「わ、私のレベルは40、騎士です」
そういえば、この世界の平均レベルって、どのぐらいなんだろ。
《種族により平均レベルは変わりますが、レベル40以上であれば強者といえます。世界最強と呼ばれている竜人族の平均レベルは50と推定します》
こいつらレベル高え……。
「お、お前たちは強い。だが、どのような敵が来るか分からない以上、強くなることに越したことはない。スフィア、頼む」
「はい!」
皆、何が始まるんだと、後ろから見守る。
「ガトーはまだ体が回復してないだろ?」
「いえ、私だけ見ているだけなどできません。どうか、参加の許可をいただきたく」
「まあ、お前が言うなら構わないが、武器は剣でもいいか?」
「は、はい。本来は槍使いですが、剣でも結構です」
槍か。自宅に何本かあったな。普段から慣れた武器の方がいいと思うが、今は試してもらうだけだから聖剣を使ってもらうか。
「槍は後で渡すから、ひとまずこの剣を使ってくれ」
「こ、この剣は……何と神々しい……で、ではお借りします」
「それじゃ。今から試しに戦ってもらうが、これは、あくまでも自分達のレベルアップのためだ。時間効率を考えて戦闘に取り組んでくれ。制限時間は五分だ。それでは始め!」
「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォッッッ!!」
スフィアが召喚したのは、ドラゴンスポットだ。
ひとまず、ドラスポと呼ぶことにする。
「こ、こいつはレッドドラゴンかッ!? た、確かにこいつを倒せばレベルが上がるかも、なッ!」
「嘘ッ!? ウインドクイック!」
「わたくしドラゴンなんて戦ったことないですわ! 聖拳突き!」
「ん。シルフィは何度かある。ウインドカッター」
「女子が戦っているんだぞ。オ、オレも王国騎士隊長。例えA級のレッドドラゴンであっても……うおおおおぉッ!!」
さすがは屈強な戦士達。
俺も後ろで見ているが、出現してから、すぐに戦闘に入った。
「――何かおかしいな?」
「変ですね?」
「なぜかしら?」
「ん。シルフィもそう思う」
「止まっているのか?」
皆、それぞれ違和感を覚え始めた。
「おーい! これはあくまでもレベルアップと討伐報酬が目的だ! そいつは攻撃してこないから安心して戦えー!」
「こ、攻撃してこないのか? そうと分かれば、みんな!」
「「「はい!」」」「おう!」
◇
「こ、これは! ドラゴンの鱗じゃないか!」
「こんな貴重な品が手に入るなんて……」
「みなさんレベルも上がって、ドラゴンの素材まで手に入るなんて考えられませんわね」
「オレもドラゴンの素材を目にするのは何年振りだろうか」
ドラゴンの素材って、やっぱ貴重なんだな。
《マスター、ドラゴンの鱗は、鎧や盾などに使用される、とても高価な素材です》
まあ素材があったところで何もできないから、今は保留だな。
「これほど簡単なドラゴン討伐はかつてないぞ……」
「本来は二十名以上の合同パーティで討伐するドラゴンですからね」
「一分ほどで倒せてしまいましたわ」
「ん。圧倒的新記録」
「レッドドラゴンのあの硬い鱗を切り裂くこの剣は、一体……」
見て思ったが、レベルは上がるが、戦闘訓練にはならないな。ま、ずっと棒立ちの敵だから仕方ないが。
要改善ではあるが、身体能力を上げておくのは、いざという時に役立つからな。
「皆、お疲れ。今日はここまでにして、明日から毎日、最低一体を日課として取り組んでくれ」
「「「「「はい!」」」」」
◇
軽い討伐を終えた俺たちは、新居のガトー家に招待してもらった。
今日はエリスとショコラがご飯を作ってくれている。その間、ガトーに槍を選んでもらっている。
「領主様、この槍だけは、一見して他のものと違う気がします。ルナリス殿の持つ弓や、先ほどの領主様の剣と似たものを感じます」
俺にはまったく違いが分からないが、ガトーが言うならと、研魔剤で磨かせた。
「りょ、領主様……!? この槍はとてつもない業物に違いないですぞ!」
「お、また蒼く光ってるな」
《マスター、この槍は、【聖槍スタッド】と呼ばれる伝説の武器です。聖剣や聖弓と同じく、莫大な魔力量を誇る武器の一つで、とても貴重なものだと断定します》
また伝説の武器か。グングニルみたいな感じかもな。とりあえず、これで三つ目だな。
「ガトー、喜べ。その槍は、聖槍スタッドと呼ばれる伝説の武器だ。そいつで魔物狩りもレベル上げも捗りそうだな」
「聖槍スタッドですか。聞いたことがありませんな。ですが、このタワシで磨いただけで、ボロボロの槍がここまでのものになるとは……」
他にも伝説シリーズがあるかもと思い、一応全部磨いてみたが、どれも普通の武器だった。期待しただけに残念だが、そう簡単に見つからないからこそ、伝説だからな。
そろそろ飯ができる頃だろうから、戻るとするか。
◇
「お待たせしました。こちらグランドボアと畑野菜のポトフです」
「こちらは畑と木で採れた大根と、トマトのサラダです」
これは美味そうだ。猪と畑のドデカい野菜と果実の木から採れたトマト。
それでは早速……。
「「「おッ、おおおおおおおお美味しいいいいいいいいいぃッッ!!」」」
「「「うッ、うううううううううめえええええええええええぇッッ!!」」
ガトー家に絶叫が響き渡った。
熊肉も美味かったが、この猪の濃厚な旨味と噛めば噛むほど出てくるジューシーな肉汁。採れたての野菜も、ドデカい見た目で大味かと思われたが、まったくそんなことはない。
シャキシャキの食感とフルーツトマトより甘いトマト。ホクホクに煮込まれた野菜と、旨味が含んだ透明なスープ。
どれもたまらなく美味かった。
《任務:〈No26〉を達成しました》
任務:〈No26〉畑の野菜を食べよう。
達成条件:畑の野菜を食べる。
達成報酬:10開拓ポイント。
「まさか、このようなところで、これほどの美味いものを食えるとは……」
「お肉おいしかったー」
「お腹いっぱいー」
「お風呂もご飯も最高だった。ありがと、領主様」
「あら? ようやくココアも打ち解けたのかしら。偉いわ」
そういえば、ココアは目を見て話してくれるようになったな。仲良くなるには、やはり美味い飯が付きものだな。
「「みんな、最後に果物の盛り合わせ食べてね」」
エリスとショコラが、大量のフルーツをデザートに出してくれた。リンゴやオレンジ、梨、ぶどう、バナナにパイナップルにイチゴまである。
それもすべて巨大サイズだ。
「「「おッ、おおおおおおおお美味しーいいいいいいいいいぃッッ!!」」」
「「「うッ、うううううううううめええええええええええええぇッッ!!」」
再び、ガトー家に絶叫が響き渡ることになった。
任務:〈No28〉を達成しました》
任務:〈No28〉果実の木の果物を食べよう。
達成条件:果実の木の果物を食べる。
達成報酬:10開拓ポイント。
◇
「「「ワオーンッ!」」」
「ようやく見つけたぞ。エルフ共があの村にいるのは違えねえ。シルバーウルフたちよ。夜襲をかけて生け捕りにするぞ」
「ガルッガルッ」
「腹が減って喰いてえだと? んなことしてみろ、クロウの兄貴に殺されるぞ。だが、まあ一匹や二匹、バレやしねえだろうがな。ゲヒヒヒッ!」
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