第20話 廃村から村へ
「これで話は以上だ」
ガトー達と話し合いが終わった後、全員が広場に出た。
エリスとシルフィは残った家屋の修繕を始め、ルナリスとレーナは森へ狩りに出かけて行った。
レーナは半ば強制みたいだったが。
ガトーも一緒に行くと言ったが、長旅でとてもいけるような状態ではなく、皆に引き止められていた。
何でもガトーは、ヴァイスクローゼ王国出身で王国騎士隊隊長らしい。
魔物とは幾度も戦い、戦闘には自信があるようだ。
そして俺はというと、拠点レベルが3になったことで、ついに可能となったあることを始める。
拠点:始まりの村
LV:3
住民:10
開拓:<召喚><?><?>
任務:72
スキル:<念話共有><配置変更><?>
領域:半径500m、北5km、帰らずの森半径2km
KP:1,150(一日経過 +110KP)
スキル、<配置変更>。
施設の配置変更ができるようになった。
それもすでに拠点にあった家屋でも動かせるみたいだ。
始めに着手すべきは広場のとんでもレイアウト。
風呂や便所、不規則に並んだ廃屋。
拠点の整地をしたいがために配置変えをする。
「おぉ……こんなに簡単に動かせるんだな」
《マスター、住民が建物の中にいる場合は操作できません》
確かにこの速度で建物を動かせば、中にいるやつは間違いなくミンチになるだろう。
始めに広場の中央に井戸を移動させる。
洋式便所を端に追いやり、五右衛門風呂に被せていた小屋を被せる。
即席の公衆便所だが、今はそれでいい。
「わたしのダンジョンと似た仕様で動かせるのですね。やはり私とダイチ様は似たもの同士ということ♡」
「お兄ちゃんすごいー」
「すごーい、すごーい」
スフィアは瞳を輝やかせ、ナッツとバニラは大はしゃぎして見ている。
「ね、ねえ、シルフィリア。あなたの風魔法であんな風に動かせる……?」
「ん。シルフィでも無理。ダイチは規格外」
「そ、そうよね……」
遠くからエリスとシルフィリアが見ていた。
「父上、あの人は何をしているのですか……?」
「な、なあ、ショコラ。オレの頬を引っ張ったいてくれないか……?」
「あなた、やはりこのお方は……」
ガトーたちも驚愕している。
次に自宅の庭にある露天風呂の隣に〈五右衛門風呂〉を配置した。
ついでに不規則に並んだ家屋を整地して道幅を広げる。
「北側はこれでいいか」
残るは南側だが、教会以外にこれといった建物はなく、ただの空き地となっているため、今は放置。
拠点を整地したことで無駄がなくなり、より広く感じる。
「これで本格的に開拓を進めれるな」
「さすがはダイチ様! とても綺麗になりましたね! 私も負けじとダンジョンを強化していかないと」
あ、ダンジョンか。
そういや完全に聞くの忘れてたけど、これが終わってからにしよ。
「ガトーはどの辺りに家を建ててほしい?」
「可能であれば領主様の近くがいいかと。いつ何時、魔物が襲って来るやもしれません。近くにいる方がお護りしやすいですからな」
ここに魔物が来るかもしれないか。
さすがにここまでは来ないだろうと思っていたが、スフィアもダンジョンに来ると言ってたしな。
「ダイチ様、せっかくですから、皆さん隣同士に家を並べるのはいかがでしょうか?」
スフィアの言う通りか。
それじゃ、俺の隣に建てるとするか。
家屋(大):重厚な木造2階建ての5LDK。露天風呂、大理石便所のセパレート。エアコン、システムキッチン、家具備品完備、庭付。
効果:不壊・防音耐性・環境耐性
必要KP:400
「ドーンッ」と爆音がすると、自宅と同じ屋敷が現れた。
エリスが修繕した家屋の中は狭いし、今はただの小屋。それならと、ガトー家五人でも十分すぎる広さがある、俺と同じ家屋(大)を建ててあげた。
「今日からガトー達が住む家はここだ。後は自由にやってくれ」
「お兄ちゃんとおんなじだー」
「おんなじお家ー」
「母上、これはどうなっているのですか……?」
「やはり夢でも見ているのか……?」
「ああ……神よ……」
ガトー達が不思議に思いながらも屋敷へ入っていく。
次に魔物対策として村の周囲を〈堀〉と〈柵〉で囲いたいところだ。
<マスターの必須品>
堀 150(※セール中)
木柵 250(※セール中)
石壁 700
<残750KP>
ーーーーーーーー
え、セール?
そんなのあるの?
それでもポイント高くない?
《拠点を囲むために必要な開拓ポイントを表示しています。只今絶賛〈堀&木柵〉キャンペーン実施中です。本来は〈堀〉と〈木柵〉一つにつき、5KPです。まとめ買いがお得です》
「まとめ買い……」
《超お得です》
(お、おう……)
堀:奥行き3m、深さ3mの堀。
効果:不壊・清潔・移動速度減少
必要KP:150 (※セール中)
木柵:高さ3mの木柵。
効果:不壊
必要KP:250 (※セール中)
石壁:高さ10mの石壁
効果:不壊
必要KP:700
試しに石壁を見てみたが、高さ10mは魅力でしかなかった。
ただ今は木柵で十分だし、セール対象外だし、KPないし。
「ズドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!」
〈堀〉と〈木柵〉を設置すると、拠点全体に地響きが起きた。
「じ、地震か!? お、お前たち早く食卓の下に入りなさい!」
「ぐらぐら揺れてるー」
「ゆーらゆらだねー」
「ああ、ティシリス神様。どうか我々をお助けください……」
「いいえ違うわよ、ココア。これはティシリス神様からの神託よ。領主様を拝みなさいと」
「「ああ、領主様。どうか我々をお助けください……」」
ガトー家は何やら勘違いを始めた。
「ね、ねぇ、シルフィリア。領主様って本当に人族なのかしら?」
「ん。シルフィもそう思う。ダイチは世界でも他に類を見ない実力者。大賢者ハーネでもここまでできなかった可能性大。本当にすごい」
「シルフィリアがそこまで話すということは本当に驚いている証拠ね。領主様のためにもわたしたちも頑張らないとね」
「ん。シルフィ超頑張る」
エリスとシルフィリアも、何やらおかしな方向へ進み始めた。
地響きが止むと同時に、堀と木柵が拠点を囲んだ。
ただし村の入口も囲われてしまったので、木柵を移動させ、再び入口を作り、渡り橋を置くことにした。
<マスターの必須品>
石橋 20
吊り橋 35
可動橋 50
<残350KP>
ーーーーーーーー
ここはシンプルに〈石橋〉にして、北と南の二ヶ所に設置する。
石橋:石材で作られた橋。
効果:不壊
必要KP:20
後は常に薄暗いため、灯りが欲しいところ。
「そうだな。松明とか良さげだな」
<マスターの必須品>
松明台 5
<残310KP>
ーーーーーーーー
松明台:消えることのない松明を木で固定した台。
効果:不壊・不滅
必要KP:5
これも北と南の入口の端に二箇所設置。
拠点全体が明るくなるようにと、家屋の前にも設置していく。
北から南まで歩きながら東西に合計36本設置したことで、かなり明るく感じる。
これで少しは村らしくなったと思う。
「はぁ…はぁ……あの領主様、わたしから一つお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「エリスか。そんなに慌ててどうしたんだ?」
「実は料理の種類を増やしたいのです。そのためにお野菜を使いたいのですが、畑を作っていただくことはできますか?」
最初は作る必要はないと思っていた、〈畑〉。
何せシキさんの料理が衝撃を受けるほど美味いからな。といってもエリスの料理も美味かったし、住民も増えた。
ルナリスとレーナが魔物を狩って来ることを考えると、やはり野菜は必要か。
<マスターの必須品>
畑 10
すごい畑 50
果実の木 10
すごい果実の木 50
<残110KP>
ーーーーーーーー
〈すごい畑〉に、〈すごい果実の木〉だと……?
何、そのすごそうな畑と果樹。
すごい畑:種、水、光、栄養、全て不要のすごい畑。
効果:不壊・不種・不水・不光・不養・不腐・巨大化・ランダム・成長力(大UP)
必要KP:50
すごい果実の木:種、水、光、栄養、全て不要のすごい果実の木。
効果:不壊・不種・不水・不光・不養・不腐・巨大化・ランダム・成長力(大UP)
必要KP:50
すごいどころか、すごすぎた。
ランダムは何が採れるか分からないことだと思うが、放っておけば勝手に育つのだから、この上ないほど助かる。
残り10ポイントにはなるが、気に入った物は仕方ないので〈すごい畑〉と〈すごい果実の木〉を召喚。
「すごッ……!」
俺の目の前に出現した縦横百mの〈すごい畑〉。
たった50KPで、ここまで広い畑ならコスパ抜群だ。さらに〈すごい果実の木〉も負けてない。
太い幹に実ったリンゴやオレンジ、梨、ぶどう、バナナなど、多種多様で季節もバラバラの果物が、すでに実っている。
「領主様! とても大きな芋や人参、他にも見たことがないお野菜が沢山育っています! これだけあれば食べ物に困ることはございません!」
この日、エリスは村の料理当番となった。
◇
現在の開拓ポイント:残10KP。
初20話まできました。
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