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第16話 エルフ四姉妹

「そういうわけか」


 皆でご飯を食べた後、ルナリスに事情を聞いた。

 なんでも南のクワトロ大森林には、四つの種族が縄張り争いをしているという。


 東にリザードマン、西のオーク、そして南に人狼族が棲みつき、北にエルフの村がある。


 これら四つの種族は四つ巴にあり、数百年間も拮抗していた。ここ最近は争いもなく比較的平和が続いていたが、突然三つの種族が結束し、夜襲を仕掛けてきたそうだ。


 エルフ達の必死の抵抗も虚しく、圧倒的な数の暴力の前に成す術もなく村が焼き払われ、仲間は散り散りになってしまったという。

 

「それで運良く逃げ延びて、たまたま俺の拠点を見つけてやって来たというわけか」

「ああ、その通りだ。逃げ道が北側しか空いてなかったのでな。まさか禁断の地を渡り歩くことになるとは思わなかったが、奇跡的にもダイチ殿に出会えてよかった。もちろんスフィア殿もな」

「で? お前達はこれからどうするつもりだ? 村はもう焼かれてなくなったんだよな?」


 俺が正直に言ったことで四人はうつむいてしまった。


「……その通りだ。他にもあたし達のように逃げ出した者もいるはずだが、助けに行きたくとも今のあたし達では無力。行く宛てもなくてな……」

「それでしたらダイチ様、ここにひとまず住んでもらう、というのはいかがでしょうか?」


 またもスフィアがキラキラとした瞳を送ってくる。

 確かに拠点のためにも、ここで住んでもらうのは悪くない。


「そうだな……」


 俺が提案をしようとしたところで、四人の中でしっかり者の印象があるエリスが話を始める。


「領主様、一つ気になることがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「ん? エリスだったか。何だ気になることって?」

「はい。大変失礼ながら申し上げますと……その、スフィアさんは、ま、魔族なのではと」

「は、はい。私は魔族です。エルフの方達からすれば、なぜ人族と一緒にいるのかと不思議に思ってしまうのも当然ですよね」


 人族と魔族が一緒にいるというのは、そこまでおかしなことなのか? 

 確かに漫画やラノベも、大抵は敵として書かれてはいるが。


《マスター、魔族は人族だけに限らず、どの種族においても遥か昔から敵対関係にあり、スフィア様のような穏健派は世界でも極少数です》


 ということは魔族の強行派が普通ってことか。


「ん。シルフィも不思議に思う」

「大方、御領主様が手懐けているのではないかしら? 御領主様ほどのいい男でしたら、例え魔族であっても簡単に…」「おい、レーナだったな。人聞き…」「そうなんです! 私はダイチ様の配下。いえ、奴隷であり、所有物なんです♡」


 どえええええぇッ!?

 何てこと言いやがるんだよ、コイツは!

 それにいつからそうなったんだよ!


「や、やはりそうであったか。それなら人族と魔族が共にいても不思議ではないな。まだ若いというのに、やはりここで生き抜いているだけあって、ダイチ殿は相当なやり手だな」

「あら、まあ! そういうことでしたら納得ですね。スフィア様、大変失礼なことを言ってしまい、申し訳ありませんでした」


 いや納得するんかーい!

 「ゴホンッ」と咳払いをして、俺は四人に提案する。


「そんなことよりもだ。お前達さえよければここで住まないか? まあ野宿するよりはいいと思うぞ」

「い、いいのか!? 本当にここに住んでいいのか?」

「もちろんだ。ただし条件が一つある」

「条件とは何だ? 体ならあたしよりもエリスやレーナの方がいいと思うが……シルフィはまだ早いぞ?」

「ダイチ様、私だってこの方達に負けない自信があります!」

「あら? スフィアさんと言いましたわね。わたくしに勝てるとでも?」


 レーナは自信満々に胸を張ると、スフィアは自分の胸を見て悔しがっていた。


「うッ……」


 スフィアもスタイルはいいが、今回は相手が悪い。何せ、レーナは爆にゅ…いや、どうでもいい。


「ちょっ、ちょっと! ルナ姉もレーナまで何を言っているのですか! スフィア様、大変ご無礼な真似をお許しください。ですが領主様、その、わたしでもよろしければ……」

「ん。シルフィも頑張る」


 こいつら揃いもそろって何でそっちの方へ話がいくんだよ。この世界の女ってのは、みんなこうなのか?

 

「俺が出す条件は住民になってもらうことだ」

「「「「……住民?」」」」


「ああ、そうだ。ここの住民になれば、後はお前たちの好きにすればいい。俺から言うことは特にない。ただし犯罪だけは御法度だがな」

「我々はそんな非道なことは誓ってしない。ここに住めるのであれば、あたし達は住民になる。なあ、みんな」


 エルフ達は全員うんうんとうなずいている。


《ルナリス、エリス、レーナ、シルフィリアが住民になりました》


《任務:〈No12〉を達成しました》

 任務:〈No12〉エルフを住民にしよう。

 達成条件:エルフ族を住民にする。

 達成報酬:10開拓ポイント。



「なら決まりだな。よろしく頼む」

「私も同じ住民として、みなさんよろしくお願いしますね」

「ダイチ殿、スフィア殿もよろしく頼む」

「領主様、本当にありがとうございます。スフィア様もよろしくお願いしますね」

「御領主様、わたくしと今夜にでも♡ 何ならスフィアさんとご一緒でも構いませんことよ」

「ん。ダイチ、スフィア、よろしく」


 ◇


「ダイチ様、ルナリス様たちの居住地はどうされますか?」

「ちょうど考えていたところだ。この辺りでいいか」


 ルナリスたちと話し合いを終えた後、彼女達は井戸で洗濯をしたり、五右衛門風呂に入っている。

 普通のバスタオルを4枚(20KP)手渡してから長屋を建てる。


 長屋(中):重厚な木造建ての各部屋1LDKの連棟住宅。風呂、洋式便所のセパレート。エアコン、ダイニングキッチン、家具付。

 効果:不壊・防音耐性・環境耐性

 必要KP:250


 

「ダイチ殿、今の大きな音は何だ!? ま、まさか奴らが攻めて来たのか!?」

「いや、ちょうどお前らの家を建てたところだ、って服を着ろよッ!?」

「え……? キャーッ! す、すすすすまない。つ、つつつい慌ててしまい……」


 ルナリスが今頃気付いたのか、胸を隠してしゃがみ込んだ。


「ルナ姉様! 湯浴びの途中で走り出さないでください! 風魔法で乾かしたので、こちらの服をどうぞ」


 その後、ルナリスは恥ずかしかったのか、しばらく目を合わせてくれず、話しかけても黙りこんだままだった。


「領主様、わたしたちが来た時にはこのような建物はありませんでしたが、一体どのようにされたのですか?」

「ん? まあ俺の秘密の力ってことで。それより四人ならちょうどいい大きさなんじゃないか?」

「ダイチ様、私たちも入ってみませんか?」

「それもそうだな。俺も内覧しとくか」

 

 ◇


「ダイチ殿、本当にこのような所を我々が住んでいいのか?」

「ああ、今日から自分達の家なんだから好きにすればいい。ただし土足は厳禁だぞ」

「「「「以後気を付けます……」」」」


 この世界では土足の習慣があるようだ。


「んじゃ、俺達は帰るとするか」

「ダイチ様、私はコアルームに用事がありまして、明日こちらに帰らせていただいてもよろしいですか?」

「ああ構わないが、魔力欠乏症は大丈夫なのか?」

「この通り大丈夫ですよ。今やダンジョンはダイチ様と繋がっていますから、拠点()の中であれば平気です。私がここでダンジョンウインドウを操作できるのも、そのお陰ですし」


 ダンジョンウインドウ? 

 あっ、ディスプレイのことか。


「それでは行って参ります」


 この後、四人は長屋に住むことになり、俺は自宅に戻り、スフィアはダンジョンへ帰って行った。


 ◇


「おい、ガルガ! シルバーウルフ共を率いて逃げたエルフ共を探し出せ。見つけ次第、オレ様の元へ連れて来い」

「お任せくだせえ。このガルガ、必ずやひっ捕らえてみせやす。おいシルバーウルフたちよ。行くぞッ!」

「「「ワオーンッ」」」

「待テ。オ前ら人狼如きで大丈夫ナノカ?」

「ガルッガルッガルッ。笑わせるなリザードマン風情が。誰に向かって吠えている。今はこのオレ、鮮血のクロウ様が御方様から陣頭指揮を任せられている。そこのオークのようにキサマも黙って川辺で大人しくしているがいい」

「クッ……!」


 ◇


 現在の開拓ポイント:残550KP。

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