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1,000文字シリーズ

君を閉じ込めたい

作者: おかやす
掲載日:2023/05/27

 カシャリ、とシャッターの音が響いた。

 君はため息をつきながら、咎めるようなまなざしを僕に向ける。


「また勝手に撮って。無断撮影禁止でしょ」

「だって、きれいなんだもん」


 もう、と口をとがらせて、君は浴衣を拾い、素肌を隠した。


「きれいと言えば許されると思ってるの?」


 僕は思わず微笑んだ。君が目を細めて詰め寄ってくる。


「怒ってるんですけど?」

「ごめん。あの時と同じ言葉だな、と思って」


 それは、僕と君がまだ高校生で、ただのクラスメイトでしかなかった時。

 教室の窓辺に立っていた君が、眼鏡を外した。風に乱された髪を押さえ、外を見てかすかにほほ笑んだ。

 その時、雲の隙間から光が差し込んできて――君をふわりと包み込んだ。


 きれいだ。


 偶然その光景を見た僕は、気がつけばスマホで君の姿を撮っていた。ほとんど無意識だった。

 カシャリ、とシャッター音が響き、教室にいたみんなが僕を見た。


「お前、何撮ってるの?」

「え、あれ……俺」


 しまった、と思ったが後の祭り。

 正義感あふれるクラスメイト達に引っ立てられ、僕は君の前に立たされた。


「その、すごく、きれいだったから」


 なぜ撮ったのか、と静かに問う君に、僕は正直に答えた。


「あ、マジできれい」

「ほんとだー。めっちゃいい写真」

「さすが写真部」


 僕が撮った写真を見て、クラスメイト達も感心した。会心の一枚だったのは間違いない。

 なんとなく、「これは仕方ない」という雰囲気が漂ったけれど。


「きれいと言えば許されると思ってるの?」


 君は冷たく言い放ち、その場で写真を消させられた。

 無断撮影だ、仕方ない、とは思う。

 だけど、本当に惜しかった。惜しくて惜しくて、どうしようもなくて――僕は正式に、君にモデルを依頼した。


 あの時に垣間見た君の美しさを、もう一度僕の写真に閉じ込めたくて。


 始めは嫌がった君だけど、何度も頼む僕に根負けしてモデルになってくれた。

 僕は何枚も――いや、何百枚も、何千枚も君の写真を撮った。

 だけど、あの写真を超える写真は、八年経った今も撮れていない。


「思い出補正が入ってるんじゃない?」

「いやいや」


 僕はカメラを置き、もたれかかってきた君を抱き締める。


「どんどんきれいになっていくから、僕の腕が追い付かないんだよ」

「もう。見え透いたお世辞ね」

「本当だって。でも、必ず撮ってみせる」


 きれいな君を、閉じ込めたい。

 写真の中に、腕の中に、そして僕の人生の中に。


 だから僕は――君を一生離さないからね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あまぁぁぁぁぁぁあい!!!!!!!!
[良い点] カメラ片手に何処までもついていきそう。 もはや専属カメラマン。 カメラ通して『きれい』って言われたら、そりゃたまりませんね。 いつまでもキレイでいられそう(*´ω`*)
[良い点] うんうん、幸せなヤンデレくんと彼女さんですね♪
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