第3話 変態と魔法
「天崎さぁぁぁぁぁん!!!!!好きだあああぁぁぁぁぁ!!!!付き合ってくれぇぇぇぇ!!!!!」
暑苦しい声がそれをぶっ壊す。
その声に反応して足を止め、全員で振り向くと、こちらへ走っている男子生徒が。男子生徒は俺たちが止まってもその勢いを止めることなく天崎めがけて走ってきて、
「大好きだあああぁぁぁぁぁ!!!!!」
そう言って、天崎に抱きつき、その唇を、
「……何してやがる」
その唇が天崎に触れる前に男子生徒の顔を掴み、無理矢理後ろに押す。男子生徒はのけぞるような姿勢になって、
「な、何するんだ!俺の告白を邪魔するなよ!!」
文句を言ってきた。
が、それは一旦無視だ。俺に意識が向いてる間に天崎を掴んでいる腕を解放させ、天崎に逃げるように目で合図する。男子生徒もそれを追いかけよとするが、俺はその顔を掴んだまま行かせない。
「邪魔するに決まってるだろ。お前何をしようとしてるんだよ」
「はぁ?告白からの情熱的なキスで天崎さんの心をわしづかみにするんだよ!さっさと俺の手を離せ!!」
「…………」
天崎はある程度離れた場所でまだ俺たちを見守っている。流石に俺を置いて逃げる気にもなれなかったようだな。他の仲間達に囲まれて、慰められている。
「……なあ、天崎、こいつがお前のこと好きらしいぞ。返事してやれ」
俺は少し申し訳ないとは思いつつも、天崎に意見を求める。コレばかりは本人に言ってもらわないと男子も諦められないだろうからな。
天崎は少し怯えた表情を見せながらも、
「ご、ごめんねぇ。OKもしてないのにキスしようとしてくる人は気持ち悪くて無理~。……っていうか、ポワポワが乱れてて私苦手~」
はっきりと拒絶した。
「なっ!?う、嘘だろ!?俺思い切って告白したのに受け入れてくれないのかよ!」
男子生徒は騒ぐ。
……何だろうか。この頑張れば何でも上手くいくとでも言うような意見は。頑張ったって無理な者は無理だぞ。人間どれだけ鍛えていても死ぬときは死ぬしな。
「勇気を出してくれたのは嬉しいけど、過激すぎるのは嫌かなぁ~。出来ればもう顔を見せないでくれると嬉しいかも~」
「そ、そんな……い、いや。これはあれだよな!嫌よ嫌よも好きのうちって言うし!本当は俺にキスされたいんだろ?告白はOKなんだろ!?」
…………。
こいつ、なかなかポジティブだな。人生ここまで良い方向に捉えられるなら楽しそうだ。だが、お陰で逆に俺たちにとっては迷惑だが。
「天崎。こいつもう黙らせて良いか?」
俺は天崎にこいつを気絶させて良いか確認を取ることに。やろうと思えば一瞬でできるからな。
だが、
「ううん。今回は、私がやるね~。私の所為みたいな所もあるし、けじめは私がつけたい」
「そ、そうか」
こちらへ天崎は歩いてくる。その姿からは気迫を感じさせた。圧が凄い出てるぞ。三流の兵士と同じくらいの威圧感がある。
「お、おお。天崎さん。やっぱり俺の所に来てくれるんだね。……長谷川!早く俺を話してくれ!天崎さんとキスできないじゃないか!!」
そんな圧力があるはずなのに、こいつはまだまだポジティブだ。近づいてきている天崎が告白を受け入れてくれると思っているらしい。尊敬するぞ。そのある意味主人公みたいな鈍感力。
天崎は俺たちの前に来ると、その手を少し後ろへ引いて、
「さよなら~。セクハラ男君」
拳を突き出した。
「グフッ!?」
見事にその拳は男子生徒の腹部へ突き刺さり、男子生徒はうめき声を上げる。そして、力が抜けて重い物が俺の手噛んでいる手に感じられるように。
どうやら気絶したみたいだな。もう何発かやらないとダメかと思ったが。俺が教えた魔力による身体強化を上手く活用できるようになったらしい。
こっちは魔法と違って天崎1人でも使えるからな。練習したんだろう。
「成長したな」
「でしょ?早紀君に教えてもらってるからね。これくらいは出来るようになったよ!」
気絶した男子には見向きもせず、俺に笑顔を向ける天崎。少し怖いな。こいつは怒らせないように……いや、まあ俺ならこれくらい問題なく耐えられるとは思うがな。一応仲間出し怒らせないようには気をつけよう。ギスギスするのは嫌だし……うん。
「じゃあ、こいつは適当なところに送っとくな」
「うん。ありがとね。早紀君」
天崎のお礼の言葉を聞くと共に、俺の手から男子生徒の姿が消える。ちょっとした転移魔法を使ったのだ。今頃学校の屋上でぐったりとしているだろう。
「じゃあ、今度は気をつけて帰ることにするか」
「うん!」
俺たちはまた仲間達とともに歩き出す。似た様なことをされないように、それぞれが見えるものを使って辺りを警戒しているぞ。
少しヒヤッとした出来事はあったが、こうして俺たちの中学校生活は終わった。これからは高校だ。どんなことがあるか楽しみだな。今ももうワクワクしてるぞ。
なんて思っている俺は知らなかった。まさか高校で、俺の人生がまた大きく変わることになるなんて。
「あっ。どうせなら私たちで転移魔法の練習とかしても良かったかもね~。今のは丁度良い実験台だったと思うんだよね~」
「おい。幾らセクハラを受けたとは言え、人を実験台に使おうとするな。最悪の場合転移魔法は失敗すると命がなくなるんだからな?」
「分かってるよぉ~。冗談だってば~……半分はね」
「……もう半分は本気なのかよ。絶対にやめろよ」
「不思議ちゃんだと思ってた美幼女小学生達が本当に視えてた ~今でも異世界帰りの俺が凄いと騒いでいます~」《完》
この作品は一旦ここで終了です!
この作品の他にも同じような短さの作品を投稿しているので、作者のページから「長編化予備群」のシリーズを覗いて頂ければ!!
人気があった作品は長編化します。勿論この作品も……チラチラッ(ブックマークや☆をつけて頂ければ、続きが書かれるかも……