第2話 仲間と大声
「早紀君!見てぇ~。受かってるよぉ~」
「おう。おめでとう。勿論俺も受かってるぞ」
同じ高校を進むことになった。天使はそのまま良いところは残し、成長させて年を重ねた。魔力のことも俺が教えてかなり知識を増やしており,今では簡単な魔法を使えるようになっている。
が、残念ながらそれは1人の力ではない。
俺たちには、
「あっ。あ~しも受かってるんだけど?」
「私も……」
「私も受かってるわ」
数人の仲間ができた。友人と言うこともできるが、それぞれ仲間という方がしっくりきているらしい。普通は見えることの無い物が見えるものたち同士であるのだから。
天使は魔力が見える。だが、その魔力を魔法に変換させたり体に取り入れたりすることは1人だと難しかった。そこで協力して魔法を使うときに、仲間達は大きく活躍してくれた。それぞれ見えるものが違い。それぞれの見えるものを教え合うことで魔法を作り出せる。1人では出来ないが、仲間がいるときには全員で協力することで魔法が使える。
ただ、勿論全員がいれば最初から魔法が使えたという話では無い。これは俺の、
「それじゃあ今日も。魔法の練習やってくぞ」
「「「「はぁ~い」」」」
大きな努力の成果でもある。彼女達に魔力の操り方や変換のさせ方を教え、魔法を使えるように育てた。何度も根気よく教えてやっと成功したのである。
昔は初級の魔法を使うのに数時間かけていたが、今となっては、
「右肩に」
「左肩へ移動ね」
「お腹辺りだよ」
「右足」
魔力が移動され、それぞれ必要な場所へいく。そして、
「「「「『水よ守れ』」」」」
数秒後、彼女たちの周りに水の膜のようなものが。魔法が成功した証である。
俺は満足して頷き、
「良い出来だな。そろそろ次のステップに移っても良さそうだな」
「「「「いぇ~い!」」」」
俺の告げた言葉に少女達は喜ぶ。その日は高校の合格の達成感など忘れ、新たな魔法の習得に励むのだった。
……まあ、学生の本分は学ぶことだ。悪いことではないだろう。
それから数日後。
「好きです!俺と付き合って下さい!」
「いや!俺と!」
「亜弥さん!」
「天崎さん!」
中学校の卒業式。最後の機会だと言うことで天使と称される天崎に告白をする者が多数。勿論天崎以外の仲間にも男子が集まって告白しているな。美少女はこういう所が大変だ。
「ごめんぇ~。付き合うのは無理かなぁ~。でも、嬉しいから皆友達でいよぉねぇ~」
「「「「は、はい!!」」」」
その他大勢の男子達にとっては友達になれただけでも僥倖。天崎と連絡先を交換して嬉しそうにしていた。天崎は優しい断り方をしているが、
「付き合って下さい」
「やだ」
「連絡先でも!」
「むり」
「お友達に!」
「いや」
人の心がないのかと思うような断り方をしてるやつもいる。告白した男子達は泣きそうになってるぞ。可哀想に。
そんな風に告白の嵐も過ぎ去っていって、
「早紀!帰ろぉ!」
「ああ。構わないぞ」
「あっ。あ~しも一緒に帰る」
「私も……」
俺たちは並んで帰る。告白していた男子から俺は凄い形相で睨まれているが、もう慣れているから怖くもないな。異世界で勇者やっていたときの敵の視線の方が怖かった。とくに最後の方はハーレムパーティーみたいになってたからな……。うん。俺はあんなパーティーにするつもりじゃなかったんだが。なぜあんなことになったのやら。
「早紀君?どうかしたの~?」
俺がそんなことを考えていると、天崎から心配そうな声をかけられた。物思いにふけっていたから心配させてしまったな。
俺は首を振って、
「いや、何でも無い。ちょっと昔のことを思い出してただけだ」
と言っておく。
すると目を輝かせて、
「え?何~?もしかして私たちと初めて会ったときのこと思い出しちゃった~?」
「……始めて会った時って、クラス同じだったから衝撃的な出会いでもなかっただろ」
天崎との出会いはクラスが同じになったとき。クラスメイトだから普通に話したこともあった。衝撃的な出会いでもなかったため、正直に言ってしまうと最初にどんな話をしたかとか覚えていない。
「そうだけどさぁ~。もうっちょっと反応してくれてもよな~い?」
天崎は少し不満そうに言う。
「反応?どんな?」
「例えば「いや、そそそ、そんなことねぇし!」みたいなやつとか~」
「初心すぎないか?」
俺にそんな初心な反応を求められても困る。異世界では恋愛だってしてきたんだ。ある程度の耐性はあるぞ。
「つまんないのぉ~」
本当につまらなさそうに言う天崎。そうして不満そうにしている彼女。
ただ、俺たちの周りはのほほんとした平和な雰囲気が漂っていた。
が、
「天崎さぁぁぁぁぁん!!!!!好きだあああぁぁぁぁぁ!!!!付き合ってくれぇぇぇぇ!!!!!」