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課金チートのボッチ生活  作者: 美香
第二章
7/103

宝くじが当たったので、高級ホテルに泊まろう!

何時、本編に!?

ごめんなさい(_ _;)

 そして到着したホテル。


 フロントへ真っ直ぐ向かい、「よりセキュリティがしっかりした部屋に泊まりたい」と願うと、直ぐに案内された。

 チェックインして、万一盗まれても平気なものだけを置いて、直ぐに外出した。食事は戻ってからルームサービスで取ろうと決めている彼が向かったのは、タクシーに乗っている間にホテル近くにあると気付いた銀行だ。

 その銀行の名前は聞いた事はあるのだが、実際に行くのはこれが初めてだ。何せ住んでいた場所にはこの銀行の支社が無かったのだ。

 銀行と言うのは結構、地域性がある。否、地域差がある、が正しいだろうか。どちらが相応しい言葉かはともかく、引っ越しをすると場所によっては、今まで使っていた銀行が見当たらない、と言った事は有り得る話だ。

 通常、窓口取引はもうやっていない時間帯だったが、そこを敢えて向かったのは銀行に隣接された、銀行専用(はっきり看板に書かれていた)の駐車場が原因だ。その駐車場に備えられている電子光の「満」の文字。ーー即ち満車、だ。


 何故に。


 まさかATMへの客だけで満車になるとも思えない。調べようと思ったが、その直後にホテルに到着したのだ。ならば近い位置に銀行があるのだからと、「直接行って見てみよう」と思ったのだ。もし何らかの理由でまだ窓口が開いているのならばやはりラッキーである。


 そうして中に入って見れば。


 普通に窓口が開いていた。次郎の預かり知らぬ話だったが、実は去年の年末辺りから突如として、こうなっていたらしい。とある裏金が関与している……かどうかは不明である。何にせよ、次郎には有り難い話である。そんな訳でそのまま新規契約の為の手続きと、前の通帳より、今の財産からして見れば、ほぼ全額を新たな通帳へ移した。


 尚、手続きの際、別室へと態々案内され、支店長に目通りしたーーかどうかは定かではない。


 用事を終え、再びホテルへ。時間帯でもあるのか、偶々なのかは不明だが、チェックインした時より、外出した時よりも客が増えている。

 次郎自身は目立つタイプではないが、この場では目立つのだろう、彼に気付いた人間から視線を寄越される。訝しげなーー、はっきり言って不躾な視線だ。

(ああ、そうか。)

 その視線を受けて、気付く。格好だ。ここは高級ホテルだ。利用客はそれなりの立場を持っている者も多い。ザッと見回すと単なる旅行客だけで無い事も分かる。見るからに良さげなスーツを来た男性客が部屋のキーを受け取っている。これから会合にでも向かうのだろうか。

 また併設されている夜景が美しい(らしい)レストランでも使うのか、パーティーに参加する様な格好をした婦人とその夫と思われる、これまた高級そうなスーツを着ている男性がゾロゾロと現れ出している。

 別にドレスコードがある訳でも無いし、門前払いも食らわなかったし、何より接客のプロたるホテルマンからは一切そう言った視線を向けられなかったので今まで気が付かなかったが、彼は浮いていた。


 端的に言って、貧乏臭い。


 ジロジロと見られる中、フロントに行き、戻って来た事を伝える。理解はしたが、服装までは気を使えなかったので、今はどうしようもない。気を使うにしても、住まいも決まっていない現段階で荷物になるものを買いに走る気も無い。

 別に目立ちたい訳でも無いし、悪目立ちでトラブルを起こしたくない為、住居が決まって、必要な家具も揃えて……、実際に住み始めれば必要なものとして、ファッション関連も揃えていきたいが、現段階ではそれをする気も無かった。


 だが。


 何人かの客(恐らく家族)とその案内人とエレベーターが一緒になる。

「お若いですね。」

 突如、話し掛けられた。

「ええ、まあ。」

「若い頃は感性が豊かです。辛い事も苦しい事も私達の年代よりも大きく感じますが、その分、希望も喜びも大きい。人生は正にこれからですぞ。」

 一家の大黒柱と思しきその男性は40代くらいだろうか、矢鱈と気合いが入っている。

(これはもしかして。)

「貴方もそう思うでしょう。」

 ある可能性に気付いた次郎を尻目に、男性は案内人にも話し掛ける。

「そうですね。昔見たCMで『幸せは未来で待っている』と言ったキャッチフレーズがありましたが、概ね賛成です。」

「…………。」

 答えるホテルの案内人。その会話に何も口を挟まない婦人は此方を心配そうに見ている。子供達は訳も分からない顔をしているが、何処か不穏な空気を感じ取っているのか、黙ったままだ。

「別に自殺なんか考えてませんよ。」

 人生の終わりに最高の贅沢をして、ホテルで自殺。そんな事を考える人間も居るらしい、と言う事は知っている。明らかに高級ホテルを利用する外見を持たない次郎に妙な疑いを抱いた様だ。

 因みに次郎は「今の自分は死に体だ」とブラック企業で働いていた時期に何度も感じた事はあるが、未だ嘗て「死にたい」等と思った事は無い。絶望とは無縁な精神の持ち主だ。但し光り輝く希望とも無縁だが。

 とにかくも只でさえ干渉される事は好まないのに、質の悪い誤解は止めて欲しい。悪気は無いのは分かるし、何なら確かに高級ホテルに似つかわしくない格好で利用している自分に非があるのは認めるが。

「そんな事より今、引っ越し先を探してるんですよ。この辺りで不動産会社って言うと何処が良いか教えて頂けません? 特にセキュリティについてしっかり相談に乗ってくれそうな処が良いんですけど。」

 言外に「住まいが見付かるまでの客だ」、と匂わせる。とんだ見当違いな心配を寄越してくる鬱陶しい人間を単なる否定で納得させる事に労力を使うより、予定を話して情報提供を求めた方が良いと判断したのだ。

 ホテルの業務内サービスに入るかと問われれば首を傾げるが、この流れでは断り難いだろう。序に言えばこの、裕福そうな客側からも多少は引き出せるかもしれない。

「家を探しているのかい? だったら幾つか私の所有している家を紹介しようか? 私達が住んでいる近くにもこじんまりとした家があるし、防犯に関しても専門の会社を幾つか知ってるし、何より私の家が近いしね。」

「いっそ、家の離れならより安全じゃないかしら。」

(な、馴れ馴れし過ぎる!)

 流石にコレは可笑しいだろうと思う。絶対に生活に入り込んで来そうな言い分にゾッとする。もし流されれば、3兆円を嗅ぎ付けられる結果を呼び込みそうな気がする。果てしなくする。


 と、エレベーターが止まった。


 新たに乗り込もうとする人が居る。何故途中からエレベーターで上がろうしたのかは不明だが、チャンスとばかりに入れ違いになる様に降りてしまう。もう相手にしたくなかった。会話をしたくなかった。彼処まで行くと人が良いのではなく、只管気持ち悪い。

 追わなかったのか、追えなかったのかは知らないが、自分の後に続いて降りて来なかった彼等にホッとする。

(フロントに戻ろう。)

 流石に苦情を入れても良いだろう。その場から離れ、別のエレベーターから降りるか、階段を使うかは先に見付けた方を使うと言う形で決めた。


 恐らく上司の立場に当たるのだろう男にエレベーター内での事を話した。

「大変、申し訳ありませんでした。」

 次郎に頭を下げた男は50代程に見えた。動作に品があって美しい。問題を起こしたのは客だが、ホテル側の人間がそれを後押ししてしまった面も否めない。次郎はそう思ったし、向こうもそう認識しただろう。その謝罪は美しいだけでなく、丁寧なものだった。

 更に謝罪の印に不動産会社を探しておくとも言って貰えた。まともな家に辿り着きそうだと、ホッとする。


 尚、彼は知らない。


 戻って来た案内人が「最後の良い思い出を望む人こそ、身なりをキチンと整える」的な事を、「そうなのか?」と疑問が始まる事を説明され、キツく説教されたと言う事を。


 嫌な気分を引き摺る様な性格ではない。只、部屋に戻ると広さと豪華さに驚愕する事も含めて(最初に荷物を置いた時は、急いでいた事もあり、部屋内を良く見ていなかった)、やはり疲労を感じたので、ルームサービスでステーキを時間指定で依頼し、先に入浴を済ませてしまう事にした。

(やっぱり肉だよな。)

 若い体は端的にエネルギーを欲していた。じっくりメニューを確かめるのではなく、写真を見た瞬間に即決だった。

(広い………。) 

 そんな事を考えながら、入浴をする為、初めて浴室を確認するとまた驚く。

(暑いしシャワーだけの予定だったけど……。)

 立派な浴槽に浸かってみたい、と言う気持ちも湧いて来る。

(……いや、ルームサービスの時間もあるし、浸かるのは止めよう……。)

 先にルームサービスの時間帯をシャワー後と計算して決めている。態々予約し直すのも面倒だ。今は諦める事にする。

(食事後にまた入るか。)

 そう決めて、今はさっさとシャワーで汗と汚れを落とす。そうしてスッキリした後に食事が届けられた。

 その頃にはエレベーターの事等、時空の彼方だったが、届けに来たのはあの謝罪してくれたホテルマンで、食事と同時に「不動産会社に連絡しておきました、『何時でもお出で来て下さい』との事です」と伝言とメッセージカードを渡された。メッセージカードには不動産会社の名前と住所、それから連絡先、更に開店時間と閉店時間が書かれている。その完璧な根回しに嫌な気分も残っていなかったからか、ラッキーだと感じた。


 次郎はこの5年間ですっかり貧乏舌となっている。故にステーキに関する想いは「上手い!」しか無い。食レポだとしたら酷すぎるデキである。とは言え、そんな事を嘆く暇は無い。そんな時間があれば、只管ステーキを味わうと言うものだ。

 ガッツリ、腹八分目を余裕で超え、いっぱいいっぱいである。しかし「動きたくない」と横になる気は無い。予定通り、再びの入浴時間だ。折角なので、備え付けの入浴剤を入れて見る。

「おお……!」

 途端に香る甘い匂い。何の匂いかは知らないが、恐らく万人受けするものだろう。次郎も良い匂いだと感じる。また、どう言う仕組みなのかは知らないが、バラを思わせる花弁が浮かび上がって来る。

(バラなのかな?)

 もしかすれば匂いもバラなのかもしれない。残念ながら、花の匂い等サッパリ分からないので、「良い匂い」としか判断出来ないのだった。

 クーラーが効いているのもあって、そこそこの時間じっくり浸かっていたが、疲れが眠気を呼び込んだので、上がる事にする。体を拭き取った後、備え付けのバスローブを使わせて貰うが、慣れない為か動きにくい。やはり1度目の入浴時には使わなくて正解だったと思いながら、歯を磨き、スマホの充電の為、コンセントを借りると、ベッドへ潜り込んだ。

(おお……、)

 その未だ嘗て感じた事のない心地好さに、次郎は直ぐに熟睡態勢に入った。

お読み頂きありがとうございます。


平行世界の歴史は、私達の住む地球の歴史と殆どは同じです。が、2000年代には色々とズレが生じています。なので色々と同じ事がありますが、偶に違う事があります。

はい、ご都合主義の為です。

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