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課金チートのボッチ生活  作者: 美香
第一章
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宝くじの当たる前②

もう少し前置きが続きます。すみません。

作中に出てくる失踪者ですが、近隣トラブルではなく、勤め先でのトラブルが原因です。次郎がヤクザなご近所さんと揉める予定はありません。



 ネットカフェは24時間毎に代金徴収があるので、基本的には最長は24時間である。そして次郎は24時間を選択しているので、途中の出入りに問題はない。因みに個室は大抵事前予約が必要になるが(WEB予約、電話予約、来訪予約でどれくらい前までに予約しなければならないかが変わったりする事がある様です)、空いていると融通を利かしてくれる店もある。次郎は来訪予約だった為、キャリアの長い親切な店員が「今は客が少ないから特別に」と言って、融通を利かせて空いている部屋を即使わせてくれたのだ。

 とまあ、それなりに次郎が、「運が向いてきた」と感じた事を肯定するかの様に割とスムーズに進み、それは不動産に行ってからも続いていた。

 即内見が始まり、「え、マジでこんな破格な条件なの?」と思う様な説明を聞かされる。どうも話を聞くと何か副業でかなり儲けている大家のサービス精神で運営されているとかで、保証人も保証金も敷金・礼金も要らず、家賃も安い。しかも家具付きだ。

(掃除はされてないし、だからか無人の部屋なのに生活臭があるのは気に掛かるけど、滅茶苦茶良い条件じゃん……。) 

 そう思った処で一室のドアが開き、どう見てもヤクザなお人が出てくる。思わず視線を一度向けてしまうが、向こうはこちらを見もしない。直ぐに視線は反らしておく。

「行き場が難しい色々な人が住んでますよ。保証人の用意が難しい施設出の人とか……。」

 ニコニコしながら話す不動産案内人。恐らくこの裏通りと言える場所は余り治安が良くないのだろう。

「ここって元々が家具付きで貸してるアパ、いえ、マンションなんですか?」

 治安が怪しい処でレオパレスと言うのもしっくり来ず、首を傾げる。

「いいえ。何でも前の住人が失踪したそうです。あ、さっき言った施設出の人ですね。」

「………………。」

 つまり退去後の始末を何もしていないらしい。流石に不安ではあるが。

(まあ……、でも何かは問題あるよなぁ……。)

 目下、彼の問題を考えるとやはり1番のネックは金銭だ。

(周りの部屋とはドアノブが違ってた…。鍵を持ったままの失踪だったから、鍵を変えたのか。多分、防犯的には良さげだし……。)

 近所の治安にはこの際、目を瞑っても良いだろう。幸い、彼は男だし、特別見目も良いと言う訳ではない。変質者に狙われる心配は無いだろう。実際、そんな経験も無い。

「此処にします。」

 こうして彼は住所を手にした。


 少ない荷物を前住人が使っていたタンス等に仕舞う。その後、台所の最低限しかない食器類を見て、多分、まともな料理等していないだろうと予測を付ける。次郎もまた、そうなるだろうと思いながら。

(調理実習は嫌いじゃなかったが……。)

 だが毎日、料理をするには金も時間も掛かる。ブラック企業での5年間では、ソレらを捻出する気力が湧く訳もなく、そもそも整備もされていない。次郎の中で料理の習慣なぞ無かったのだ。

 何にせよ、前の住人はもう居ない。一体、幾つで何年此処で住んでいたかも知らないが、そんな事はどうでも良い。性別も確認しなかったが、別に興味も無い。只、失踪したぐらいだ、何らかのトラブルがあっただろう事は予測出来る。そのトラブルが近隣トラブルなのか、別のトラブルなのかが気に掛かる。

(施設出ねぇ……、失踪しても探す家族が居ないって事だよな。)

 施設出ではない次郎だが、家族が当てにならないのは被る。

(近隣とトラブルを起こさない様にしないとな……。)

 流石に何も問題も無いのに事件は起こらないだろう。と言うよりそんな事が起こるならば、此処に越して来た人間を計画的に嵌める必要がある訳で、無闇矢鱈に警戒させる真似をするとは思えない。

(角部屋で一階なのは迷惑掛ける率が低くなるし。)

 次郎はそう考えながら、部屋を出て、鍵を閉める。外はまだ明るいがその内に暗くなる。ガスや水道、電気は明日だ。それまではまたネットカフェの世話になる。

(……あんまり怪しいなら、いっそ予備の着替えだけ置いて、普段はネットカフェで生活するか?)

 書類上必要になる面だけ……、っと言うのもありだろう。とは言え、余計な出費になる事は変わりなく、なるべくは取りたくない手段ではあった。


 ネットカフェに戻った次郎が不安を感じながらも、次なる行動に出る。次は携帯だ。以前にも記したが会社からの支給品しか所持していなかった為、警察に押収されたソレは遂に戻って来る事が無くなった以上、彼は携帯を所持していない。今の世の中、それは不便過ぎる。これから面接を申し込む会社からの連絡も簡単には取れなくなってしまう。生活保護を受けて、仕事をしないで良いならば、不便くらい我慢するが、今の段階はそこにない。

 不動産よりも携帯会社は遅くまで開いている様だ。今からでも十分に間に合う場所に格安の携帯会社があった。近くに大型店舗(イオン・モー○的な)があったが、どうやらその中にある様だ。彼は早速、また外へ出た。


 スマホを手に入れた。と、なると次はいよいよ就職口探しだろう。帰りに履歴書も買って来たし、証明写真も撮ってきた。だが。

(その前にシャワー浴びてサッパリしよう。後、何か食べよう。)

 夕方以降とは言え、日が落ちていない暑い最中に外へ出たりしていたので、汗も掻いてるし、空腹でもある。先に一休憩入れる事にする。そしてシャワーを借りていると、ふと思い出す。

(そういや、宝くじの発表って何時だっけ?)

 調べようと思っていたが忘れていた。履歴書の前に先にそちらの日付けを確認しても良いだろうか。シャワーを浴び終わり、大き目のカップ麺にお湯を入れると、折角ネットカフェに居るのだし、と待ち時間の合間にマウスをカチカチと動かし、キーボードを叩いた。


 宝くじ。


 それは警察が会社を物理的に囲む直前に上司より命じられて買ったもの。帰社当時は警官に驚いて、宝くじの件は頭から抜けていたものの、別に押収もされなかったソレは常に手元にあった。

 彼がソレの存在を思い出した時は、事情聴取も終え、出ていく準備(と言っても大して特筆する事は無いが)をしていた時だ。「宝くじ用」と書かれた封筒を見付け、「あ、そう言えば」となった。

(どうしよう。)

 と少しは思ったものの、態々連絡を取れるかも怪しい(別に試してない)相手に渡す為に、最悪警官に頼るとか面倒と感じる。

(なら捨てるか?)

 とも思ったが、もし万一でも当たりが混ざっていたら勿体無い。

(ま、元々大した荷物じゃないし、コレも大した荷物にもならんし良いや。)

 と言う訳で彼は上司の金で買って来た、本来、上司に渡す筈の宝くじをネコババした。近い内に当選日を確認しようと考えながら。

 ……勿論、当たっていれば、その金もネコババする気満々である。と言うかそれが大前提にある。素でその思考に至り、罪悪感の欠片も無い。その程度には彼は性格が悪かった。


 ズルズル……。ズルズルズル……。静かに(?)カップ麺を啜る音が響く。宝くじ当選日は把握した。またその日を迎えれば、確認する。それだけを決めて、彼は第三者的に侘しい食事をする。当人的には特に何も思ってなかったりするが。


 ……食事が終われば、次はいよいよ求人募集探しだ。


 尚、彼の中にはハローワークに頼る選択は無い。何故か。まず第一に失業保険なぞ期待出来ないからだ。あの企業は役職者以外の保険関連がかなりアレだった。第二にハローワークを通した応募は前職の件が早々に知られてしまう可能性が高い事だ。

 人柄だけを見て、それ以外、前職に関しては特に気にしない……、何て都合の良い事が起こる筈がない。情報だけ見て、その後は自分で……、と言うならばネットのハローワーク情報で事足りる。それにネットの中の求人関連はハローワーク以外にも、それこそ色々あるのだ。


 結論、行くだけ時間の無駄。

 

 だから彼はネット環境をかなり重要視している。そんな彼の検索は正社員ではなく、バイトやパート。何故か。正社員だと前職の事が引っ掛かる上に、保証人が居ない状態だとまず間違い無く撥ねられるからだ。正社員登用制度がしっかりしている処も同様だろう。

 よって今暫くはバイト掛け持ちでのフリーター生活だと決めている。そこで信用を勝ち得て、頼れる人材(上司)を捕まえる。赤の他人の為に保証人となってくれて、赤の他人の保証人でも関係無いくらいに認められている人に何が何でも辿り着かねば本当に生き辛い。勿論、そこまでもその後も簡単には行かないだろうが。

お読み頂きありがとうございます。



保証金や保証人が要らないマンション等に何らかの問題があるか無いかは知りません。ネットで探せば幾らでも情報は探せますが、実際に不動産に行って紹介された事等ありませんから、実態は不明です。只の妄想です。只、真っ先に紹介された事はありません。



約20年程前、施設で育つ児童の作文集の書物を読んだ事があります。数年に渡り、集めた作文を書籍にしたもので、作成時と出版時に数年のズレがある場合もあった為か、出版時に作成した子供達の現在が簡単に書かれてましたが……。出版時、既に施設を出ている子供達も少なくなく、その殆どが行方知れずとなっていました。施設を出て1年くらいならば連絡を取れている様でしたが、それ以上となると難しい様で、何があったのかとゾッとしました。

只、その書物の題名も出版社も出版年度も覚えていません。ですから今はそんな事はないと信じたいです。

ですが、今より数年前、とある大手企業の子会社で面接を受けた事があります。そこで偶々施設出を名乗る人と一緒に説明を受けたのですが……。会社の人は「施設出なので、保証人が施設の人になります」と言ったその人に「でしたらウチでは雇えません」と言っていて、ギョッとした事を覚えていますね……。彼女は今、どうしている事やら……。

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