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課金チートのボッチ生活  作者: 美香
第四章
29/99

冒険ー素材採取ー

地味です。めっちゃ地味です。宣言しておきます……。

 いざ冒険。NPC相手へのコミュニケーション等、まともに取ろうとしていなかったアポロンは聞きたい事を聞くと、さっさと移動する。



 ダンジョンエリア・安全地帯「始まりの広場」より移動しました。此処からフィールド扱いになります。



 そんなアナウンスが入る。

(ん?)

 ピタリ、と足が止まる。

(「始まりの広場」?)

 聞き覚えがあったのだ。



 「始まりの広場」とは各エリア攻略の為に設けられる、一番最初の安全地帯となります。但し、一般プレイヤーのゲームチュートリアルの場、「始まりの広場」のみ、エリアとして独立しています。尚、一般プレイヤーとは今回、アバター作成時の種族選択に於いてヒューマンを選択したプレイヤーを指します。



 続く説明にアポロンは思い出す。尚、今更のツッコミかも知れないが、胸中を読まれているかの様なアナウンスに疑問を感じない。

(そう言えば、トランスのヤツが言ってたっけ。)


 ーーそれではゲームスタート地点、「始まりの広場」へと転送を行います。


 つまり、あの言葉に嘘も間違いは無かった訳だ。本来のチュートリアルでは大量のプレイヤーが期間は変われど利用する訳だから、エリアとして独立させており、それ以外ではエリアの一部としてある。その違いの説明が無かっただけで。アポロンと一般プレイヤーのチュートリアルの場が違うと言う説明が無かっただけで。

(……取り敢えず、アイツの空腹度を忘れない様に……、)

 常に視界の端に映る様にセッティングしておく。一々確かめる為にステータス画面を開くのは面倒だし、うっかりすると忘れそうだった。

(右より左が良いかな?)

 上下は何となく見難い気がしたので、初めから選択肢には入れていない。納得の行くセッティングが終えた処で、どう進むか考える。

(ダンジョンエリアだし……、やっぱダンジョンを探す事になるかな。……分かり難い処ばかりには無いよな?)

 態々エリアとして分けるのであれば、他エリアにダンジョンがあるとは余り思わない。このエリアにダンジョンが犇めき(??)あっているなら、ダンジョンそのものの難度も、何処にあるかも様々なパターンがあるのではと考えられる。隠しダンジョンと隠しルートみたいな正規がゴロゴロあるが、それ以外は無い、とも思わない。

(可能性が0では無いにしても、初めからそんなのを探す気で居なくても良いよな。)

 まずは分かり易そうな処から見付ける気持ちでいれば良いだろうと、アポロンは結論付けると、鬱蒼とした森の道筋を探そうと、視界の悪さをマシにするスキルを想像した。



 スキル「夢幻顕在」を使用しました。視力に暗視機能を齎しました。



 一気に視界がクリアになった。

「おおっ!」

 ちょっとした感動が湧き上がる。太陽処か月も星も見えない森(もしかした林かもしれないが、違い何ぞ分からん)は常に薄暗く、しかし全く見えない訳では無かったので、チュートリアルの逃亡時には必死過ぎて全く思い付きもしなかった。

 故にある種のモノ探しに当たるプレイをしようとした今に、視界の明るさを会得しようとした結果に、ラストがウザったかった気分の悪さ等、すっかりと忘れてしまう程で、気分は益々向上した。

「ん?」

 そうして明るい視界で辺りを見渡すと、様々な草木が生えていると分かった。

(もしかしてこう言うのが素材とかになるんじゃないか?)

 勿論、雑草もあるだろうが、そうでないモノも結構あるのではないか。そう考えたアポロンは、今、目の前に見えている草木を調べて見たいと思う。と、そこへ。



 スキル「夢幻顕在」を使用しました。視力に鑑定機能を齎しました。調べたいものを注視するか、「鑑定」と口に出しながら、或いは念じながら、調べたいものを見詰めて下さい。



 アポロンはそのアナウンスにつられるかの様に、目の前の赤い花に、その視線が向かって行く。

「鑑定。」



ヒナゲシ:S 

高濃度の魔素に晒されているひなげし。鑑賞用としても然る事ながら、花びらもどんなものを作成するに当たっても、素材として使う事が出来る。



 浮かび上がる説明を読んで首を傾げる。

(ヒナ()()……? これもしかして芥子の一種じゃあ……、ん? 鑑賞用??)

 確かにヒナゲシはケシ科ではあるが、2つはそれでも別物だ。ケシからは麻薬成分が取れる為、危険だし、取り扱いも禁止されているが、ヒナゲシはそうではない。ケシ科と言っても様々で、ヒナゲシ以外でも安全で園芸に向くものはある。

 しかしアポロンは特にそう言った知識に詳しい訳では無いので、「ケシ」と言えば麻薬成分を持つものくらいしかイメージに無い。故にヒナ()()の単語に反応したのだ。

(んー、何か引っ掛けるけど……、ま、いっか。ゲームだし。初採集品にしよう。)

 そしてそのイメージに少し迷いはあれど、直ぐに割り切って、採集に臨む事にする。

(んー、でも具体的な採集方法までは知らないし……、採集、採集、採集……、)

 今まで植物採集なんてした事は無く、知識も無い。尤も素材目当てなら花びらを千切ってしまえば良い気もするので、リアルの知識が何処まで必要になるかは不明である。



 スキル「夢幻顕在」を使用しました。ヒナゲシを採集します。素材として花びらのみを採集しますか? 鑑賞用として全て採集しますか?



 聞こえたアナウンスにアポロンは、折角だからと後者を選択すると告げる。

 尚、本来の……、ヒューマンを選択したチュートリアルでは冒険に必要な道具を与えられる。これが初期装備だ。それからドラク○で言うなら「やくそう」に当たるアイテムも貰える。そしてそれを仕舞う鞄も渡される。

 とは言え、一々鞄を開け閉めするのは面倒な為、実際には自動で仕舞ったり、鞄から出したりする事が可能だ。要は持っているだけ、なのである。尚、鞄はリュックタイプである。

 ともすれば持つのを忘れてしまいそうだが、鞄を忘れると手で持つ以外無くなる為に実際に忘れると問題が生じるのは考える間でもない。

 ところでドラク○と言えば、持ち切れないアイテム類を無限(??)に仕舞えるふくろがあり、それを始めから所持していたと思うが、残念ながら当ゲームではそうは行かない。

 確かに多少は実際より多目に入る様だが、それでも限界は結構近い。それは装備枠だけでなく、鞄も更新出来る為だった。

 そして違いはそれだけではない。装備品や一部のアイテムには消耗度と呼ばれるものがあった。使っていくと摩耗し、やがては使えなくなっていく。つまり壊れて使えなくなるのだ(消耗度は%で示される。100%になると壊れる)。例外はあれど、初期装備や初期道具(消耗度がある)には残念ながらその例外は0だ。代わりにこれら、初期装備品等は組織より支給される設定な為、無料で何度も手に入れられるが。

 何にせよ、設定上はアポロンが初期装備品等を手にする事は出来ないが、そこは河村の機転のお陰でラストから受け取ってはいる。いるが流石に何度もは手に入れられない。


 それに無意味である。


 アイテムの使い方や装備の仕方等を学ぶ事は出来るが(初回ログイン時に、ラストを確認した中で行った)、それ以外では使えない。このダンジョンエリアでは直ぐに消耗度が限界を迎えてしまう。なので持っていても意味が無い。まあ装備品については素のステータスが強いので気にしないで構わないだろうが(良い装備品が必要になって来る頃には、ダンジョンで何か手に入れてるだろう)、鞄は別だ。

 ……武器や防具は只、装備しているだけでは別に消耗したりはしない。それを消耗させるのはやはりバトルだ。しかし鞄の場合、現実的に考えるとバトルしなくとも使う度に摩耗する。そしてバトルが重なれば、より消耗が早まるのである。

 ……だが流石にゲームでそう言った面を取り入れると面倒になるので(プレイヤー的にも運営的にも)、鞄もまたバトルで消耗する設定になっている。要は乱暴に取り扱うと摩耗する設定なのだろう。

 そして残念ながら、その詳細は如何なるバトルであったかが大きく消耗度に関与すると言うもので。……即ち敵のステータスが消耗度に大きく影響を及ぼす仕組みになっているのだ。端的に言えば、初期物で対応するには、ここダンジョンエリアの敵レベルが高過ぎるのだ。

 その為、貰ったものの、アポロンはテント内にそれらを置きっぱなしにしている。つまり鞄を持っていない。序に装備枠も裸状態だが、流石にそれでマッパになるのは色々と問題なので、マッパ状態の服装はシャツとズボンに統一されている。

 アバターの格好は装備品に影響されるので、装備をしない限りは今の格好のままである。尚、装備も含めてアイテムは課金で購入出来るのだが、まだ高品質の商品は実装されていなかった。

 これは何れ出現するだろう、生産職のプレイヤーが後にオリジナルを作れる様になる事を見越しての事で、生産職のプレイヤーが見向きもされなくなる様な事態を呼び込まない為だと思われる。

 故に今のアポロンは本当に何も無いのだ。何も持っていない状態なのだ。つまり折角、採集しても仕舞う為の鞄が無いのだ。しかし彼は慌てない。

「よしっ!」

 気合を入れて、彼がイメージしたのは冒頭に記したド○クエのふくろ。正確にはその機能そのもの。

「夢幻顕在!」



 スキル「夢幻顕在」を使用しました。亜空間を作成します。………亜空間を作成しました。亜空間には「時間停止」・「時間遅滞」・「時間飛躍」の役割を与える事が出来ます。どうしますか?



 やはりこうした無限収納は目的が無ければ「時間停止」が自然だろうと、何となくな理由で「時間停止」を選ぶ。



 亜空間に「時間停止」の役割が与えられました。収納した物質の時間が止まります。



 所謂アイテムボックスである。しかしまだ完成ではない。何故なら生成した亜空間は、その維持にMPを使って居るからだ。ステータスを確認すると、かなりのものである事が分かる。これは頂けない。ド○クエのふくろは幾ら使用しようとMPは減らない。と言うかアイテムボックスの使用でMPが減る作品(ゲームだけでなく漫画、ラノベも含む)等、少なくともアポロンは知らない。

「アイテムボックスはMP要らない、MP要らない……。」 

 言葉に出して念じる。



 亜空間からパッシブスキル「アイテムボックス」が生成されました。以降、MPは消費されません。



 望み通りのスキルが出来、アポロンは即座に採集したヒナゲシを収納すると、ガッツポーズを取る。そしてMPの残量を確認した。尚、「先に作って置くべきでは?」と指摘する者は居ないし、NPCのラストには期待も出来ないのである。



・MP残量:S−E−F=1億119万8988



 言う間でもなく余裕ではある。確かに今までにない減少だが安全地帯に戻る必要は無い(デスペナ中で無い限り、安全地帯で休んだりログアウトすれば全回復する。尚、仮安全地帯なら作成する事が出来、休んだりログアウトすれば全回復可能。但し仮安全地帯は敵性存在に見付かり、襲撃される恐れもあり、その場合はデスる事になる。仮ではない普通の安全地帯は襲撃されない。因みにアポロンの安全地帯「始まりの広場・ダンジョンver」はラストの状態次第で仮安全地帯に変わる。設定的にはチュートリアルをクリアした事で安全地帯作成が完了した事になる)。

「でも念の為、MPとHPの自動回復みたいなスキル作っとこうかな」

 スキルの独立作成も可能だと地味だが大発見したので、それを早速活かすアポロンだった……。



 スキル「夢幻顕在」を使用しました。パッシブスキル「リジュネ」と「MP回復」が生成されました。「リジュネ」と「MP回復」が統合されます。スキル「W(ダブル)リジュネ」が生成されました。


・MP残量:S−E−F−3万=1億119万8988−3万

=1億116万8988


※ここから毎秒MP(HPも)が1万ずつ回復します。Wリジュネのレベルが上がると回復量はもっと増えて行きます。しかしデミゴッドにレベル概念が無い為、代わりに使い慣れランクが適用されます。尚、使い慣れランクはステータスでは見れません。なので気付いたら毎秒の回復力が10万、100万、1000万……、と増えてる可能性があります。



 やるべき事をやって、アポロンはまた足を進める。明るくなった視界には微かに道らしきものが見える。そして両サイドには先程採集したヒナゲシやそれ以外の花が咲いていた。

(もしかして樹皮とかも採集出来たりするのか? 木の実とかも探せばある……?)

 ふと気付き、そう言った考えで近くに立つ木を見詰める。



ハリエンジュ:S

高濃度の魔素に晒されているハリエンジュ。高さは約50m程度。鑑賞用としても然る事ながら、木材としても様々な使い道がある。また樹皮、花びら、実、種の全てがどんなものを作成するに当たっても、素材として使う事が出来る。



 説明を読んで気付く。

(もしかして現時点で実も種も出来てるのか?)

 植物には然程詳しくないが、流石に花と実と種が同時に付いているのは可笑しいだろうと分かる。無論、ファンタジーなので、そう言った謎生体もあっても、可笑しくないのだろうが。

(それにさっき採集したヒナゲシにしろ、このハリエンジュにしろ、現実にもあるとは限らないものな。)

 ……ハリエンジュもヒナゲシも普通にリアルにある植物である。但し、設定としてはあくまでも地球に生殖する植物と似ているので、仮称としてそう呼ばれているだけに過ぎない。現地人の言葉もプレイヤーに分かり易く翻訳されているので、実際には何と呼ばれているかは不明である。故にアポロンの予想は間違っているとも言い難いが……、否、やはり間違っているだろう、しかし相変わらずツッコミは居ないのである。

(取り敢えずもうちょっと上を見てみるか。)

 ……処でリアルのハリエンジュは凡そ15m程らしい。しかしこのゲーム内では魔力の影響なのか、50mある。流石に先は良く見えない。故に注視する。



 スキル「夢幻顕在」を使用しました。遠視します。……鑑定機能が働いています。


ハリエンジュの花:S

高濃度の魔素に晒されているハリエンジュの花。鑑賞用としても然る事ながら、その花びらはどんなものを作成するに当たっても、素材として使う事が出来る。


ハリエンジュの実:S

高濃度の魔素に晒されているハリエンジュの実。どんなものを作成するに当たっても、素材として使う事が出来る。


ハリエンジュの種:S

高濃度の魔素に晒されているハリエンジュの種。どんなものを作成するに当たっても、素材として使う事が出来る。



 全てが生えていた。そして種や実に鑑賞価値は無いらしい。種は勿論、確かに実も豆みたいなので(ハリエンジュはマメ科)、鑑賞は普通しないだろう。まあ、世の中色んな人間が居るので、鑑賞する人間が0とは言わないが。

 ともあれ、このエリアだけか、或いはこの電脳空間全てかは分からないが、少なくともアポロンが居るこの場は、季節感0で当てにならないのが判明した。

(まあ、確かに暑いとも寒いとも、丁度良いとも感じないのは確かだが……。)

 アバターでそこまでリアルに感じるのもどうかと言う面はある。ゲーム世界にも砂漠や海、雪原が存在するのは然程珍しくもない。暑さ寒さまでも一々感じているのはプレイし辛いだろう。

(状態異常とかは起こり得るかもしれないけど。)

 とにかくもアバター的にも植生的にも季節設定が謎である事が判明した。アポロンは知る由も無いが、ヒナゲシもハリエンジュも凡そ5月が花の時期だ。だがそれは「この場は日本の5月の気候に近い」とも断じる材料にならない。

(何にしても、この木、採集出来ないかな?)

 木材として使うならば伐採、素材としてなら各部位を採集する事になるのだろうが、まだ何を作る知識も無い。ラストに聞けば何か分かるかもしれないが、まだ「始まりの広場」に帰る気は無い。空腹度メーターは殆ど動いて無いのだ。

 なので「木そのものを採集したい」、否、それを通り越してと言うか、「ここら一帯を最早全採集して、後でじっくり見たい」とまで思う。

(出来るか?)

 と考えるも一瞬。

(…まあ、やるだけやって見るか。) 

「夢幻顕在、採集!」 

 「ここら一帯」と言うが、範囲は曖昧。それでもスキルはちゃんと効果を発揮した。対応するスキルがあったと言う事だろう。



 スキル「夢幻顕在」を使用しました。使用者を中心に半径5mの素材を()()します。……収集完了しました。アイテムボックスに収納します。収納完了しました。



 アナウンスと同時に足元に妙な違和感が発した。

「ん? うわ……、」

 一瞬、意識が向いたが、それよりも目の前の視界が凄い。何も無いのだ。否、それだけではない。何も無い処に早速、草が生えていく。花が咲いていく。木が生えていく。木が育っていく、育っていく、育っていく……。更に遠視の先でハリエンジュの花が咲き、実が茂り、種が生える(?)。それ等の様はかなりの倍速で早送りした映像の様だ。

「おー……、」

 あっと言う間に元へ戻る。その途中でまたもや足元に違和感が生まれたが、目の前の状況に掻き消されていた。

「………………………良し、行こう。」

 暫く呆けていたが、八ッとする。ここはフィールドだ。然程、時間も掛けずに(テレポートを使わずとも)安全地帯に戻れる位置だから、ついのんびりしてしまっていたが、フィールドである以上、何時モンスターが襲って来るかも分からないのだ。

 気を引き締める為に敢えて声に出すと、道らしき筋に沿って移動を始めた。

お読み頂き、ありがとうございます。大感謝です!

評価、ブグマ、イイネ、嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。

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