デミゴッドのみのステータス概要②
……言い訳をさせて下さい。
一応、先を考えての説明なんです。色々と伏線を…………。はい、言い訳です。そこまで書き切れるのか自信ありませんし。忘れそうですし。
ごめんなさい。
未来に於いても「ようこそ、我等の地球へ」はゲームの王の様に君臨する。
その様な自信を感じさせる細やかな説明はしかし、物理攻撃力の説明と物理防御力の説明を使い回した。それは随分と粗雑な気もするが、実際、物理攻撃力と物理防御力が対となるならば、その説明形式は良く似たものになるのも理解出来る。寧ろその時ならば気付かず流してしまうのではなかろうか。
プレイしながら、実況していくYou○uberならば、ある種、思考の回転訓練が為されていると思われるので即座に突っ込むかもしれないが。
それはさておき、次郎もまたその事には気付かず、納得しながら聞いていた。
『物理攻撃力・物理防御力はどちらも装備品で数値を上げる事が可能です。この場合、装備品を外すまでは上がった数値は維持されます。戦闘や特定のイベント、クエスト攻略に「上手く噛み合えば」攻略に役立てる事が出来るでしょう。』
色々と含んだ説明である。装備品で物理攻撃力や物理防御力を上げると言うのはRPGの基本だろう。「装備品を一切付けずにプレイする」様な縛りプレイでもしない限りは、ゲーム攻略に必須である。特に「伝説のナンタラ」とかの装備シリーズは、勇者の証だとかでソレを装備して、魔王に挑むのは最早定番と言える(尤もこの「ようこそ、我等の地球へ」に勇者も魔王も伝説の装備品も登場するかは不明ではあるが)。
しかしこの説明は「ストーリー進捗に従い、装備品を更新していく通常のRPGとは違い、只、物理攻撃力を上げただけ、物理防御力を上げただけでは攻略出来ないパターンもそれなりにあるぞ」と言っている様に聞こえる。更に。
『また、アイテムや魔法スキルの補助によって、一時的に数値を上げる事も可能です。この場合、効果が切れるまでは上がった数値により、戦闘に「変化」を齎す事が可能になりますし、それにより、イベントやクエストのスムーズな攻略にも「繋がり得る」でしょう。しかし一時的な数値では攻略に適さないものも有りますから、十分にお気を付け下さい。』
……やはり色々と含んだ説明である。これは恐らく「素の数値」が肝要になる場面が有る事を示しているのだ。装備品で底上げした数値は無意識に基準値扱いしているし、実際、大抵のゲーム内では装備品の底上げを常の数値として扱われている。だが一時的な上げ底はそうではない。「ようこそ、我等の地球へ」もその例に漏れないのであろう。しかし、その上でブーストでは無意味なシナリオも存在している。それを匂わせる説明だ。
只、こちらも「使い回し説明」程ではないが、聞いているだけならば流してしまう場合も多いだろう。少なくとも次郎は此処もスルーしてしまっていた。
次郎が気が付き易いのは、比較的にネトゲでもない、1人プレイのRPGに関係したり、何となく社会的なエトセトラを感じさせる時である。尤もそれだって絶対では無いのだが。
「んー、まあ、その辺りは経験したら分かるかな、了解したよ。」
とは言え何となく次郎が今までに(この数ヶ月)プレイしたRPGとは違う何かが有りそうだとは気が付いたらしい。曖昧な了承の返事はそこから来ていた。
『はい。それでは魔法攻撃力及び魔法防御力の説明に移りたいと思います。』
「魔法」と言う言葉は先程から出ている。それは物理攻撃力及び物理防御力の説明を簡易化させる働きを持っていた。それを考えれば、魔法についての説明が有ってこそ、前述の説明が出来たと言えるのだろう。ーーとか何とか具体的に思考する間も無く、トランス5万1270号の「魔法が関与するステータスーー魔法攻撃力・魔法防御力ーー」に対する説明が始まる。
『魔法攻撃力は魔法を使用した「直接」攻撃の能力を示した数値、そして魔法防御力は真逆に魔法を使用した「直接」攻撃を防御する能力を示した数値となります。そして物理攻撃力及び物理防御力同様に、数値が大きければ大きい程、能力も高くなります。』
「だろうね。」
十分に予測範囲内である。ーーここまでは。
『ご理解ありがとうございます。では此方をご覧下さい。』
現れたのは「魔法属性」の文字である。そしてそこから更に4つの分岐が現れた。先に現れたのは「火」・「水」・「風」・「土」の文字。RPGお馴染みの4属性である、と言っても良いだろう。
『此方が魔法の基本属性となります。魔法の詳細は実際のプレイで知って頂きたい為、此方では伏せますが、4属性はそれぞれ初期魔法が2つずつあります。』
トランス5万1270号の言葉の直後、4属性が次郎から向かって左に移動し、新たな言葉ーー魔法名と思しきーーが8つ現れた。
・ファイアカッター
・ファイアバレット
・ウォータカッター
・ウォータバレット
・ウインドカッター
・ウインドバレット
・アースカッター
・アースバレット
それは誰が最初に考えたのか、最早分からない程に馴染んでいるものだった。ゲームに於いても、ラノベに於いても良く使われている印象が強いものだった。
属性を示す頭文字(で良いのか?)と「切る」事をイメージさせる「カッター」と「弾」をイメージさせる「バレット」。基本属性の初期魔法らしい8つの中には回復魔法や補助魔法は無い。
「回復や補助は基本属性に入っている?」
「基本」と言うくらいだ、恐らく今挙げられた4属性以外も存在するだろう。ならば回復魔法や補助魔法(妨害含む)の属性はどうなっているのだろう。各基本属性魔法の中に有って、鍛えれば覚えるものなのだろうか? それとも回復魔法や様々な補助魔法ーー妨害系含むーーにはそれぞれ別の基本属性魔法に当たるのか? 或いはそれらは基本属性ではない、別属性になるのか?
「もし入ってないなら、回復と補助の光属性とか、妨害と毒と即死の闇属性とかも有る? 」
口に吐く疑問に対するトランス5万1270号の答えは一種類しかない。
『申し訳有りませんがーー、』
「答えられない、か。そうだよね。」
魔法の詳細はプレイで知る。あくまでも此処で教えて貰えるのは基礎だけだ。ステータス説明に関与する部分だけだろう。
『ご理解、ありがとうございます。』
何度目かの礼が響く。律儀なプログラムである。
『では続けさせて頂きます。カッター系とバレット系は同じ初期魔法であり、攻撃魔法になりますが、効能が少し違います。此方は実際のプレイでご使用になって学んで下さい。』
「うん、分かった。処で属性で効能に差が有るかどうかもプレイして、って感じかな。」
『仰る通りです。』
次郎の気付きにトランス5万1270号は肯定する。
『同レベルで、違う属性の基本魔法の効能差に関する事はプレイして、ご検証願います。』
その言い方が次郎に2つの事を気付かせる。
「ああ、効能差が有るのか……、いや、そんな事より属性レベルが有るって事が重要か。」
属性に依る効能差。それが無いなら「プレイして検証しろ」とは言わないだろう。此処まで言って、「無いですよ〜」は「そりゃねーぜ!」となる。だが、そんな事よりも「同レベル」の方が重要だ。この言葉は「属性魔法そのものにレベルが有る」と言っている様なものだからだ。
『再度、此方をご覧下さい。』
此処で新たな言葉が現れる度にメインーー次郎の視界の中心ーーから外れて行った、「魔法攻撃力」と「魔法防御力」の文字がシフトし、またもや次郎の真正面に戻って来た。
「属性……、」
しかしシフトして来た「魔法攻撃力」と「魔法防御力」には、それぞれ4つの分岐筋が増えていた。先にはやはり、「火」・「水」、「風」、「土」の4 属性がある。
『魔法攻撃力及び魔法防御力は単一ではありません。各属性に別れております。つまり「火」属性魔法攻撃力と「火」属性魔法防御力、「水」属性魔法攻撃力と「水」属性魔法防御力、「風」属性魔法攻撃力と「風」属性魔法防御力、「土」属性魔法攻撃力と「土」属性魔法防御力、と言う様に。』
ここでピンと来る。
「成程、魔法攻撃力と魔法防御力を鍛えるには各属性魔法を鍛えなきゃ行けないって事か。……ある程度は装備品出賄えるだろうとは思うけど。」
一応、プレイした事は無いとは言え、ネトゲならプレイヤーの職業選択は、ネトゲではないRPGに比べて大分自由度が高いのは何となく知っている。そしてRPGの戦闘職ならば、かなり大雑把かも知れないが、物理得意な戦士系と魔法得意な魔法使い系の2つに分けられるだろう。
……となると、「ようこそ、我等の地球へ」の場合、魔法使いだと必然的に魔法攻撃力に比例して、魔法防御力も高くなる。しかし魔法攻撃力が高くなるのは当然なのでともかく、魔法防御力まで魔法攻撃力に匹敵する程に高くなるのは……、何となく引っ掛かりが有る。それは「今までの、『物理防御力よりはマシだけど、それでも魔法防御力含めて全般的に紙装甲な』魔法使いのイメージとズレる」感覚だけではない(否定はしないが)。寧ろそこは大きな事では無い。
「でないとタンクがタンクらしく無くなる……、よな……。」
問題は「タンクはどうなるか」、である。ネトゲではない、1人プレイのRPGの場合、タンクに余り意識を割かない。「不便なキャラ」としてならともかく、戦力としては余り役立たず、目立たないからだ。
タンクは謂わば盾職になるが、ステータスとしてはHPと防御力の高さ、速度系の低さ、物理攻撃関連の中途半端さ、防御以外の魔法関連レベルの低さ……、が基本だろう。アクション系にしろ、ターン制にしろ、1人用RPGでは勇者の主人公や防御力の低い仲間を庇い立てながら、戦う有用性がそこまででは無い。
そりゃあ、ほぼチートクラスな凄まじい魔法や攻撃を放つまでにタメが必須だが、攻撃を受ければタメをキャンセルされる等の理由が有ればまた変わるだろうが、それだって要となる攻撃を行うキャラが有るから成立する戦略なのである。尚、そんな戦略を使わずに戦うならば、益々盾職の必要性が迷子になるのである。
だが、これがネトゲパーティーとなると話は変わる。敵性存在のヘイトを買い、攻撃を引き付け、受ける(或いは躱す)。盾を上手く扱うには、プレイヤースキルも重要だろうが、そもそもタンクならば紙装甲な防御では難しい。そう言う特殊タンクが居ないとまでは言わないが、決して多くは無いだろう。VRMMOである「ようこそ、我等の地球へ」でのタンク職でもそれは同様だと予測出来る。従って「『魔法防御力が役立たずなタンク』と『魔法使いによる魔法タンク』が、『ようこそ、我等の地球へ』では常設タンク」であるとは思い難い。
何せ、ゲーム「ようこそ、我等の地球へ」は、「未来にも大きな影響力を持ったままである」と自信満々な運営だ、「初めてプレイするRPGに選ばれるから」と細かなRPG初心者向けの説明プログラムをAIに組んだ程の運営だ、常識的なタンクを不成立にするとは考え難い。寧ろ、魔法攻撃力はまだしも、魔法防御力まで全く期待出来ないタンクの方が、特殊な育成をしない限りは成立しない筈である。故に装備品である程度は補えると考えるのだ。
『全てにはお答え出来ませんが、魔法攻撃力及び魔法防御力は属性魔法の鍛え方が関わっている事は肯定します。従って、例えば火属性魔法を鍛えており、水属性魔法を全く鍛えていないプレイヤーは、火属性魔法攻撃力も火属性魔法防御力も火属性魔法レベルに比例して高くなりますが、反対に全く鍛えていない水属性魔法を放っても大した効果は有りませんし、水属性魔法攻撃を受けると、火属性魔法攻撃を受けた時よりもダメージが大きくなります。ーー勿論、攻撃魔法を使ったり、使われたりするのは敵性存在が有るからであり、相対する敵性存在のステータスも大きく影響します。ご理解頂けましたでしょうか?』
勿論、次郎は全問全答をトランス5万1270号に望んでいる訳では無いので頷く。それにより、魔法攻撃力・魔法防御力の説明は終了したのである。
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