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課金チートのボッチ生活  作者: 美香
第三章
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VRMMOに登録しよう!

やりました!!

ちゃんと5月に飛べました!!

 豪華なおせちを買ったとしても、1人で食べる量ではない。それに正直な処、20才の若者の舌が求めるものでは無かったーー、かどうかは不明だが、少なくとも次郎の好みでは無かった。

 正月らしい正月に拘りを持たない事もあって、次郎は必然的に「おせちでなくとも良いや」思考となる。

 しかし、「ならば何時もの様に年中無休の24時間営業なジムに行き、そこで食事をし、お弁当も用意して貰ったか?」と問われればNOである。流石にそれは味気無い。故に3が日はジムをお休みすると早い段階から決めていた。勿論、ジムには連絡済である。

 彼は当たった宝くじを手に入れたが、別に信じていない神に祈りに行く予定はなく、況してや人混みを予想出来る場所に出掛けたいと思わない。「正月番組を見ながらダラダラと過ごす」と言う、自堕落な意味では味気なくない正月にするつもりだった。

 配達によって届けられたドミノ○ザやケンタッキ○フライドチキンと、この正月の為に買っていたコーラやアイスを食べて、炬燵で微睡みしつつ、テレビを見ていた。

『今年5月、ついに解禁!! ついに発売!! 世界初のVRゲーム!!!』

 CMに入った瞬間、そんな煽りが流れた。

(VRゲーム?)

 「ゲーム」と言う言葉に反応して、思わずCMを凝視する。CMが紹介するのは、電子空間に築かれた美しい世界に、意識を投影し、そこで実際に生きているかの様に冒険を楽しめる、と言うもの。区分としてはネトゲとなる様だ。

(ネトゲか……、あれってやっぱ人間関係のトラブルが起こるって聞くけど……。)

 只でさえ人付き合いが億劫な次郎は、ネトゲには手を出していない。だが「ゲームの世界に入り込む」、と言う前代未聞の紹介には興味が湧く。

 そんな次郎にとって、有り難かったのは、実は今、次郎が見ているこのCMの放映は今回が初回であり、かなりの人の意識を捉えようとしているのか、色々と詳しくゲーム紹介をしてくれていた事だった。

 電子空間では実際にどう見えるのかから始まり、ゲームの粗筋から、ゲームの売りであろう、「何が出来るか」、どんな機材が必要で、値段は幾らなのか……、と長編CMが流される。

(これ、相当に面白いんじゃね?)

 人付き合いと言うネックは気になるが、ゲーム自体はやってみたい。そんな思いが湧く。

(良っっし!! やって見よう!!!)

 もし期待外れだったり、やっぱり人付き合いがしんどいと思ったら、辞めてしまえば良いだけだ。最新型ゲームなだけあって、値段はかなり高いが、それを勿体無いと躊躇する貯金額ではない。そんな風に考えていた次郎の頭からは1人ディズニ○の件等、既に抜けていたーー……。



 そして5月。次郎の家にはシングルベッドくらいのカプセルが届いた。これがゲームの本体になる様だ。このカプセルの下の方に、ゲームディスクを入れ込める場所があり、そこに付随されているディスクを入れると、ネット内のサイトとゲーム本体が繋がる仕様になっているらしい。

 そしてディスクを入れた後に、カプセルの中に入り、寝転ぶと内側から閉める。この時、もしカプセルに異常があれば、閉める事が出来ない仕組みだ。カプセルの中、頭部側と足側双方には換気口があり、そこから空気の入れ替えが為されている。

 シングルベッド程の大きさがあるカプセルなので、小物を幾つか程度なら持ち込める。その小物は電子機器も含まれる。即ちスマホも持ち込めるのだ。

 この様に造られたのは、「ゲーム中に緊急事態が起こった時の仕様」、即ちゲーム中のリスク管理関連機能に関係している。このゲームの最大のメリットであるゲーム世界への没入感は、そのままデメリットへも直通する。そう……、ゲーム中は現実の情報がほぼ遮断されるのだ。


 例えば音。


 カプセルは別に防音機能が優れている訳ではないので、普通にカプセル外からカプセル内に音が届く。しかし、ゲーム中では如何に怒鳴られても気付けない。鼓膜が破れる程の音でも気付けないかどうかは不明だ。


 例えば振動。


 カプセル自身は振動を検知出来るし、ゲーム中でなければ、カプセル内に居る人間も振動に気付けるが、ゲーム中であれば気付かない。カプセルが壊れる程の振動を付与する衝撃でも気付けないかは不明だ。


 例えば痛覚。


 洗濯バサミで皮膚の一部を挟むと、軽い痛みを感じる。しかしゲーム中であれば、その痛みが消える。分からなくなる。気付けなくなる。尚、何処までの痛みが遮断されるのかは不明だ。


 例えば嗅覚。


 如何なる悪臭塗れた状態であっても、ゲーム中では気付かない。もしゲーム中にガス漏れや火事が起こっても、その臭いを嗅ぎ取れない。

 

 上記ーー外部からの刺激に対する感知反応ーーだけではない。事は内部、即ち体内からの信号感知にも及ぶ。


 例えば空腹。或いは食欲。 


 ゲーム中は一切の空腹を感じない。ゲームを始める前に空腹を覚えていたとしても、ゲーム内では一切、分からなくなる。極端な飢餓状態でどうなるかは不明だ。


 例えば喉の渇き。


 ゲーム中は一切の渇きを覚えない。ゲームを始める前に渇きを覚えていたとしても、ゲーム内では一切、分からなくなる。極端な脱水状態でどうなるかは立証されていないが、普通に危険な状態になるだろうと予測出来る。


 例えば排泄。


 ゲーム中は排尿や排便に対する生理的欲求を覚えない。決壊寸前処か、決壊しても気付けない。


 これらは時にオムツを装備して、テストプレイを行った職員達の実験にて判別した事である。

 ここから起こり得る可能性があると推測出来る最悪の事態は、急病等で危機的状況に陥った時に、ゲーム中の本人が全く気付けないでいる事だ。

 一瞬で意識喪失に至る様なものならば、ゲーム中であろうと無かろうと対した差は無いが、そうでないなら気付く事で出来る対処を全く取れなくなると言う事だ。故に対策が講じられた。

 まずプレイする前にカプセル内にて1時間程過ごし、脳波を含む、生体情報を搭載されているAIに覚えさせなければならない(言い換えれば1時間過ごすだけで、それ以外、何もしなくても覚えさせる事が出来る)。そうでなければゲームをスタート出来ない様にされている。尚、一般的なシングルベッドの広さがあるので、寝返りも可能だ(可能でなければ、ゲーム中に同じ姿勢で居る事になるので、人によっては褥瘡も有り得る)。

 AIが最初に記録した生体情報から一定以上乖離した情報を検知すると、ゲーム前ならば警告を発し(音声、ランプ、振動の3種から選択可)、場合によってはゲーム参加を不可とする。ゲーム中ならば、ゲーム内AIに通達され、そこからシステムにより警告、若しくは強制ログアウト措置が取られる。

 具体的には情報の乖離度合いを測る基準幅には上限と下限が設けられており、下限より低ければ問題無し、上限より高ければゲーム禁止、或いは強制ログアウト、下限と上限の間ならば警告である。尚、警告はログアウトを促すもので、それを10分以上無視していると強制ログアウトとなる。

 そしてログアウト後も、或いはゲーム禁止状態でカプセル内に居るのは意識喪失or朦朧状態か若しくは動けない異常状態と判断され、速やかに119番に通報されるのだ。

 この時、スマホがあれば遠隔操作され、スマホを通じての通報となり、位置情報の提供により、速やかな搬送が可能となる。

 しかしそうでない場合は、サイトのログイン情報から位置を割り出すのだが、個人情報保護の為、普段はそれが不可能にはされている。ゲーム関連AIとは完全に別で管理されているのだ。その為、どうしたってスマホに比べて、住居照会に時間が掛かってしまう。

 よっていざと言う時の為にはスマホをカプセル内に入れて置いた方が良い訳だ。但しその機能に頼りたいならば、位置情報含めたスマホ情報(携帯番号や良く使うメルアド)を事前に登録して置かなければならない。登録自体はカプセル内にスマホと一緒に居れば何時でもーーゲーム中でなければ、だがーー出来る。なので登録するならば、ゲーム前の生体情報記録時間に行うべきだろう。実際、会社はそれを奨励している。

 ……この様な理由により、スマホをカプセル内にて使用出来る状態にしているのだが、それが結果的に「電子機器を含む小物」を持ち込める状態にしているのだ。

 これらの説明をセッティングされたカプセル内で寝転びながら、次郎は確認する。シングルベッド程の大きさなので、仰向けも横向けも俯せも自由に選択出来ている。ゲーム中の身体状況は睡眠状態に近い為、寝返りを打てる様にしているのだ。長時間同じ姿勢で眠っていれば、褥瘡のリスクが有るからである(余談だが、高齢者に褥瘡が見付かったりするのは、寝返りを打つ筋力が無く、同じ姿勢で寝ている状態になるからである)。

お読み頂き、ありがとうございます。大感謝です。

評価、ブグマ、イイネ、嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。

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