VRMMOに出会う前
本日は休みだった事もあって、きりの良い処まで進めました。漸く……、本編に入れまする!!
……きっと。
総合店のある階には、病院や接骨院、ジム等が展開されている。次郎がそこにあるジムに通うと決めた理由は健康の為、運動不足解消目的であった。
年中無休で24時間営業のそのジムには、様々な器具や設備が整えられており、揃えられているコーチも結構な数が居る。しかし、そんなジムのプログラムは大別して、コーチが付くタイプと付かないタイプがあり、後者ならば自身で自由にどの器具を、どの設備を使用するかは勿論、時間も好きに決められるが、当然、どんな目的であろうと、前者の方が後者よりも効率も効果も高い。故に前者の料金は、後者よりも高く設定されている。
このジムは入会金と月会費だけならば自動的に後者となり、前者はそこにコーチ料やプラン料を含ませる必要がある。また月会費は月に何時間以上利用するかで変わる。極端な例えだが、月に30分利用する客と月に100時間近く利用する客と基本料金が同額になる訳が無いと言う事だ。
そして次郎はそんなジムのプールトレーニングのみを使用している。無論、効果を考えてコーチを付けている。何故、プールトレーニングのみかと言えば、基本的にプール以外の運動が好きでは無いからだ。
「続かなくては意味が無い」と考えていた次郎はプールトレーニングのみを希望し、コーチにそれ用にプランを組んで貰い、指導して貰っている。更にコーチは専任を選べると言う話だったが(コーチ料金に更に1万プラス程度必要)、次郎はそれを選択しなかった。専任を選んだ場合、信頼関係を築く等の目的で心理的距離を近付けようとされる可能性が有り、それを厭ったからだ。
次郎はコーチを専任にしない代わりに毎日朝10時〜11時の決まった時間帯でのコーチを願った。これもまたジム通いを続ける為で、完全ルーチンに組み入れようと言う訳だ。
次郎のこの希望は月20万(例によって、多目換算)の支払いで叶えられる事になっている。年間にすると凡そ250万(例によって、多目換算)程度だ(尚、水着等は借りれる設定)。大元の年間出費予定と合わせると1250万になる。
約40年、この生活を続けるとして、出費は5億。現在の残額予定約2兆9995億からこの5億をマイナスして約2兆9990億。彼の生涯計画を考えると、まだまだ使い切るには心配すら杞憂を通り越す程度には遠い。
なので昼食は外食で賄う事にした。丁度、ジム内にある食堂を利用する事にしたのだ。希望すれば栄養士による、栄養管理を考えた、栄養指導も行って貰えるので、それも利用する事にした。平たく言えば、栄養士のオススメメニューを作って貰い、それを昼食に頂くのだ。此方も月会費にプラスする事で、毎回の利用が可能になった。
しかし、だ。そうなると元々必要だから行っていたに過ぎない料理が面倒になった。自然と朝食と夕食もジムを利用する事を考える様になる。勿論、一日ジムに居る訳でも居たい訳でも無いので、残り2食はお弁当を作って貰う形となり(朝食はプールトレーニングを考慮して、量を少なめに調整された)、それもプランに追加可能だった為、依頼する事になった。
結果、月会費は更に、多目に見てだが50万増加した。
単にメニュー指導だけでなく、調理や食材もジム任せになる、それも3食共となれば当然だろう。単なる食堂としてなら、500円程度のメニューもあるので、毎日毎食だったとしても1月5万程度、プランに組み込むなら、もっと更に安い値を会費にプラスするだけで利用出来るし、指導のみならば、毎日毎食であっても会費にプラスされるのは3万程度だったのだが。
最早、プールトレーニングよりメインになっている。しかし本人は気にしていない。コーチや栄養士はどうか知らないが、店側なので悪くは思っていないだろう。
何にせよ1月に約50万の上乗せされた為、年間で考えると約600万の出費増、と言う事になる。600万に40を掛けると2億4000万となる。つまり約40年後の残額は、凡そ2兆9987億6000万。少なく見積もって2兆9987億だ。
否。
実際には計算しないが、ジムで食事をほぼ全て賄うとなれば、買い物や調理に付随する出費が無くなる為、その意味でも残高は予想より多くなるだろう。
(やっぱ本格的に趣味を探さないとなぁ……。)
億ション暮らしに慣れたかはともかく、ジム通いには慣れた頃の11時過ぎ、次郎はジムからお弁当2つ貰った状態で出てきた。
この時期、流石に夏日とは随分離れた気候になっていて、総合店では暖房が効いていた。ジムのプールは温水で年中使用可能なので、トレーニングに影響は出ないが、活動そのものからは遠ざかる傾向にある季節だ。朝、起きるのがどんどん億劫になったり、水場掃除処(大体、週1で行っており、その日は何時もより早起きして出掛ける前に終わらせている)か、トレーニングに行く前にルンバを起動させる為に、床のものを片付ける程度で妙に怠く感じたり……、それだけでなく、次郎は単に「外に出たくない」とも感じていた。
今までは気付かなかったが、次郎は出不精気質、つまりインドア派だったのだ。必要と認識するから外に出るし、外に出て来ただけで、必要無いなら引き篭もりたいタイプだったのだ。
(けど家の中でお金使う趣味って言うと……。有料チャンネルを見る、有料アプリで遊ぶ、読書【書籍を購入すればお金を使う】、ゲーム、良さげなお菓子やお茶【要は食べ物関係】……、他に何かあったっけ??)
元々、実家に居た頃はネットカフェで漫画を読んだりした事も有ったし、今はもう会ってない処か顔も名前も記憶の彼方な当時の友人達との会話でゲームの話題も有ったので、この辺りには早々に思い付いて手を出していた。
菓子類や茶も元来の食費関連予定が浮いた時点で、代わりの出費として頭にあった。只、バカ高い菓子を買いに高級エリアまで足を運ぶのが面倒で、一般エリアでちょっと良さげなものを買うくらいだったのだ(当然、浮いた食費の代わりには成り切れていない)。
要はどちらも残額を大きく減らすには頼りない行動である。少しドカンと使いたいのだが、思い付くのは旅行だろうか。しかし中々当人が「よし、行こう!!」となる性格ではないのである。この手の性格は行かない理由を探してしまうのだ。例えば旅行から帰宅した後の始末とか………。
(いやいや、これはイカン。気分的に乗らない中で、長期の旅行計画を無理矢理立てる必要は無いだろうけど、せめてディズニ○とかくらいには遊びに行かないと勿体無さ過ぎるだろ。)
そう考えた彼は「ケーキでも買って、家帰って、風呂入って……、買ったケーキ食べながらデ○ズニー旅行の計画を立てるぞ」と自分に言い聞かす。また、「どうせケーキを買うなら、店もまた探し直して……、」と総合店内であるのは変わりないが、広すぎてまだ全部回っていない(面倒で回ろうとさえしていない)ので、動く気になっている内に新規開拓を少し頑張る事にした。
尚、「旅行中のジムは?」なんて問いは勿論、
が、「食事もジム仕様なのにお菓子?」とか、「1人ディズ○ー?」とか、そんな問いも必要無い(まあ、ツッコミ入れる周囲等皆無なのだが)。
結果、「来年の5月、人の多そうなGWが終わった後の平日にディ○ニーに行こう!」と決め、また「旅行前に総合店を全部回ろう!」と目標も掲げた。
しかし来年の5月、彼はそんな旅行計画をブッチして、あるゲームに飛び付く。
『VRMMO』、と呼ばれるゲームに。
お読み頂き、ありがとうございます。大感謝です!
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次は来年5月まで時間が飛びますね。そういや、次郎の誕生日は何時にしましょうかね……。来年の5月……、21才にはまだなってないかなぁ、とは思いますが。