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長男教のお家

何となくストーリーはありますが、予定がどうなるかは不明です。


☆2022/11/7、編集しました。章タイトルを付けたり、題名を付けたり。序章部分が長いかなと思いましたので、、、

で、それに合わせてごにゃごにゃしました。もしかすればややこしいかもしれません。すみません。

定期的に編集していく予定です。

 音無家は夫婦と一卵性の双子の4人家族だ。双子の兄たる長男は「太陽神」と書いて「アポロン」と読ませる。名付け時に大分フィーバーした事が伺える。


 では双子の弟たる次男は?


 さぞかしそちらも……、と言う予想を裏切って、こちらは令和の時代に生まれたに関わらず、「次郎」であった。……一体どちらが客観的に見てマシな名付けだろうか。


 それはともかく。


 この名付けから窺えるかもしれないが、音無家は長男教である。双子の兄を「跡取りの長男」と優遇した。外から見て、虐待と分かりやすく判断される様な育児はして来なかったが、近所は名付けから察する事は出来たろう。しかし暴力の跡もなく、異様に痩せ細ったり、見るからに不潔と言う訳でもなく、証拠と呼べるものは何1つ無い。

 事実、次郎はネグレクトを受けた事もなければ、機嫌の良し悪しで殴られた事も無い。病気になっても無視されたり、「金を使わせるな」と怒られる事も無かった。

 叱られる経験はあったが、十分に躾の範囲内で治まっている。また序に言えばアポロンの方も「悪い事をしたのに叱られない」と言った、甘やかしー優しい虐待ーからは無縁であった。一貫した長男教家庭、とでも言うべきか。双子の養育は「とにかく長男優先」を正しく教育するものであった。


 例えば食事。


 平日の朝食や幼稚園や学校での昼食は別だが、両親と共に食事を取るのはアポロンのみ。次郎は両親とアポロンの食事後に漸く席に座る。好物の用意もデザート・菓子類を与えられるのもアポロンのみ。


 例えば外出。


 次郎に関する用事があるならば連れて行かれるが、遊び関連を目的とした外出では常に留守番。就学前ならば祖父母と共に、就学してからならば一人で(つまり祖父母も長男教であった)。つまり外食、外出、旅行(日帰りであろうとなかろうと)、常に連れて行って貰えるのはアポロンのみである。


 例えば玩具。


新しく買い与えられるのはアポロンのみ。次郎はアポロンに「貸して貰う」形か、アポロンが飽きたものをお下がりで与えられる。


 例えば衣類。


 普段着は揃って用意されるが、入園・入学式用等の「特別時に着用するもの」は必ずアポロンが1ランク上のものが与えられる。


 例えば習い事。


 塾も含めて習い事はアポロンのみ。その希望が必ず叶えられる訳ではなかっただろうが、次郎は希望を聞かれもしない。


 例えばイベント。


 七五三や誕生日、それからハロウィン、クリスマスと言ったイベントを網羅するのはアポロンのみ。プレゼントを与えられるのもアポロンのみ。次郎は町内会のイベントで参加を促された時のみ、許された。


 例えば教育。


 アポロンは幼稚園から大学までエスカレーター式の私立、次郎は普通の公立、私立は受験さえしていない。当然、学校行事はアポロンが優先。次郎は運動会処か、アポロンと被らない卒業式すら両親に関心を持たれなかった。


 この様な環境にあったアポロンと次郎の兄弟仲は特に悪くもなく、けれど良くもなかった。2人は互いの環境を「そう言う家庭だ」と受け入れ、同時にその環境を生み出した両親・序に祖父母に対しては特に何も思う事は無かった。無関心、だと言えよう。

 両親に対して希望も絶望も好意も嫌悪も無い双子は、互いに関しても同様だった。羨む事も蔑む事も嘆く事もマウントを取る事もしない。強いて言うならば、互いに「名前も含めて、あんなに干渉されるのは大変そうだ」、「今の生活環境の差が、将来の生活環境にも響きそうだけど、大丈夫かな」と他人事の様に思う時があるくらいだ(子供かな?)。つまり育つ環境の差に左右されない程、2人の気質は良く似ていたのだ。その事を何となくは感じ取っていた2人だったが、それもまた2人にはどうでも良い事であった。


 さて。そんな2人が中学3年になった頃。


 両親は次郎に言った。

「義務教育は今年度で終わりね、卒業したら自立しなさい。就職は親の最後の務めで世話してあげるから、その先は自分で何とかしなさい。」

「ウチは部屋住みは認めんからな。」

 部屋住みとはかなり古い言葉だ。江戸時代、武家の次男以下は新たに家を起こすか、婿入りでしか結婚出来ず、そして結婚出来なければ出家以外で家を出る事は叶わない。そうした者は肩身狭く、家の一室を借りて生活するしかなかった。その状態を部屋住みと呼んだらしい。現代に於いても似た状態の者が居たとしても、それは今年度15才を迎える、普通に学校に通う子供は含まれないだろうと思うが、両親の考えは違ったらしい。

「分かった。」

 そんな両親に対して、あっさりと頷いた次郎は「別に高校に行きたい訳ではないけど、中卒はちょっと……」と言う不満はあれど、「行きたければ金を貯めて、自分で行けばいいや」で片付けた。「他人に関心は無いが、それを表面に出せば、要らない苦労をする」と友人付き合いは問題無く(次郎視点)行う程度は出来ても、やはりまだ根本的な処では世間知らずで苦労知らずな子供であった事を、彼自身が知覚するのはブラック企業に揉まれてからであった……。

気が向いたら続きを書きます。

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