始まりの話
実質一話
俺は中学生3年生のどこにでもいるような男だ。得意なことはせいぜいラノベの速読程度だろうか私立の高校の内定もとれすっかり安心していた春の通学路でそれは起きた。
穴だ、黒い穴、俺の語彙で説明するならブラックホールとかが近いんだろうかそれが突如俺の目の前に現れたんだ。
もちろん俺は抵抗した電柱に捕まったのだしかし抵抗虚しく俺は黒い穴に吸い込まれてしまった。
良かった点と言えば周りに偶然人がいなかったことだろうかまあ誰も分からず行方不明なってしまうわけだが。
父さん、母さんいままで育ててくれてありがとうそう思いながら俺の意識は暗転した。
◇◇◇◇◇
「はっ生きてる?!」
ガバっと顔をあげる、辺りを見回してみると薄暗いじめじめとした洞窟のような場所のようだ。
「ここは?どこだ…」
発言に答える声がひとつあった。ボロキレのローブのようなものを着ている小さな影だ。
「ここはキミにとっての異世界さ。」
少し困惑しつつも手をとってくれるので握り返す必要以上に白く小さくて柔らかい手だ。
しかし不自然な状況だ。
まだ拉致、監禁などといった方が信じられるからだ。
「異世界だなんて信じられない」
「そう言うと思ってキミの世界には無いものを持ってきたよ。」
少女は懐からクリスタルのようなものを取り出すなにか呪文のような物を呟くとクリスタルが輝き始め水が湧き出てくる。
その量がおかしいのだ、明らかに5立方センチメートルほどの立方体から湧き出てくる水が多いのだ。蛇口をひねるようにでてくる。
少年はおどろくがまだ知らない技術なのかもしれないと半信半疑だ。
「確かに信じざるを得ないがそれだけだと確証にかけるような…」
「んーじゃあこれは?」
他にもいろいろ空飛ぶネズミとか可燃物が無いのに燃えている炎とかを体感30分くらいはみせてもらっただろうか、ここまでされると流石に信じざるをえないだろう。
「まだ異世界かはわからないけど日本ではないのはたしかだね。」
「んーまあ信じてもらえないか、まあ最初はそれでいいよ、私はシロ、錬金術師をやってるよついでに不老不死だよ。」
「俺は直だ。ところでなんで言葉通じてるんだ?」
「それは私が偉大な錬金術師だからさ翻訳なんてちょちょいのちょいさ。」
目の前のドヤ顔のロリっ子を見ても全然信じられないがまあ言葉通じないと不便だからな通じるならいいや。
「まあ…いいやシロってばなんか目的あって俺を呼び出したんだよな。魔王倒してーとか世界征服したいーとかか?」
「それはズバリ助手さ、暇を持て余した私は人恋しくなってね。町から人を攫ったら捕まるし、孤児は成長を待たなくてはならない、なにより刺激が…情報と言う刺激が足りないからだ。というわけでキミを異世界から呼び出したわけだ。」
「はぁ…」
あまりにも身勝手な理由に呆れを通り越して乾いた笑いがでてしまう。問題は戻れるかどうかだ。
「元の世界には戻れるん?」
「死ねば元の世界には戻れる用にしておいた、もちろん生きてる状態でここでの記憶はなくなる、時間とかもたっていないから安心してこの世界を楽しんでくれ。」
それならありか…?
元よりやりたいことなど無い身だし異世界ならば定番の魔法とか冒険者とかもあるのだろう。
「ちなみにキミはごく平凡だ。特に素晴らしい才能とかも無く仮に冒険者になっても一生二流だろう。へたしたら死ぬ。」
「がっくし」
出鼻を挫かれた。冒険者はあるみたいだけど。
「だか普通の凡才だからこそできることもあると私は考えている。そこでぜひ私の助手になってくれなんなら私を好きにしてくれても構わない。」
身長140センチほどのロリに言われると犯罪臭しかしないが残念なことに俺はロリコンだった。受けないという選択肢は経済的にも無いだろう。
「とりあえずシロ、俺のヒモになってくれ。助手でもなんでもやるから。」
「ありがとうこれで研究が進むよ。よろしくな助手。いやナオくん。」
これがこの世界で見た彼女の満面の笑みであった。
彼女に頼らざるを得ないが俺は異世界での第一歩を踏み出したのであった。




