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3.マルティーナの閃き


森の一番大きな木の根本に、妖精界への入り口がある。

私がそれを見つけたのはまだ幼く、兄達と野山を散策していた頃の話。


木の根本に光る穴を見つけ、躊躇いもせず飛び込んでいったのが始まり。

見た事もない木々や草花が生い茂り、小さな人形の様な妖精が飛び交う世界が其処に広がっていた。


妖精達の話によると、昔は誰でも妖精界に来ていたらしい。

今では妖精を心から信じ、妖精を見ることが出来る者だけに限られるらしい。

妖精を信じる人は随分と減ったらしく、久々の来訪者に妖精達は目を輝かせ、私を随分ともてなしてくれた。


妖精界から戻った幼き日の私は、兄達を連れてまた妖精界に行ったのを思い出す。

一番上と二番目の兄は妖精を信じてない様子だったが、三番目と四番目の兄と私で激しく妖精はいるのだと説得したらあっさりと信じてくれた。

両親も同じだ。


結果、今ではワールヴォル家総出で妖精達と交流している。


と、前置きが長くなってしまった。

私の悪い癖だ。話を戻そう。


学園内に妖精を信じる者はいないみたいで苦労する事もなく妖精界を訪れた私は、のびのびと身体を伸ばす。


最近は何をしようとしても何処からか人が現れ、難癖をつけてくる。

剣の稽古をしようものならエリザベスを自らの手で殺めようとしている、なんて言われるのではないか。


「あらぁ、ティナ。今日は不機嫌ねぇ」

「リアか。聞いて。私ってば婚約者に相手にされないから嫉妬に狂ってるらしいわ」

「なぁにそれ」


リアは鈴が転がるような笑い声を上げる。有り得ない話を聞いたと腹を抱えている。

リアはとても可愛らしい妖精だ。薄紅色のふわふわした髪と丸い緑の瞳。


ちなみにティナは私、マルティーナの愛称である。


リアが笑い転げていると他の妖精達がなんだなんだとわらわら集まってきた。

私が同じ話を繰り返すと、リアと同じくとても可憐な声で笑い転げる。


「笑い事じゃないわ、本当。はらわたが煮えくり返りそう」


大袈裟に身振り手振りを加え、舌を出すと更に妖精達のツボに入ったらしく笑いの大合唱は止まらない。


「それでね、皆に力を借りたいの」


ぴたりと不自然なほど急に笑いが止まる。

妖精達は、人と共に生きるのが好きだ。

頼られる事は、殊更。


「なになに!?なぁんでも手伝うわ。なんてったってティナの頼みだもの」

「ありがとう。記憶の瞳の仕組みが知りたいの」


リアは目を輝かせ、飛び掛からんばかりに顔を寄せて来た。

他の妖精達も目を爛々と光らせ、私を見つめる。


記憶の瞳は、妖精達の持つ不思議な道具だ。

場面を映像として残し、誰でもその映像を見る事が出来る。記憶を映像として共有できる優れものだ。


私はそれを使い、エリザベスの嘘八百を暴きたいのだ。

事実無根の噂を流し、ジェイコブを手中にする為に手段を厭わない女に負けない為に。


他の妖精達がいつの間にか記憶の瞳を運んできてくれた。

掌に記憶の瞳を載せられ、ニコニコと私を見つめる。


「ありがとう、助かるわ。今度手作りのお菓子持ってくるわ」

「マフィンがいいわぁ」

「クッキー!」

「スコーンも!」


ここぞとばかりに妖精達は各々食べたいお菓子を強請る。

記憶の瞳を詳しく見せてもらうお礼なので安いものだ。


流石に持って帰る訳にはいかないので魔力を流してみたり、発動させてみたりして思う存分唸る。

此処には妖精しか居ないし、私の奇行には慣れている。


何となく理解した様な気持ちになれたので、また本を読みあさり、素材を集め、実験を繰り返すことにしよう。

記憶の瞳を妖精達に返し、帰路に着く。


森から屋敷まで少し離れているので魔法を使う。瞬間移動は少しコツがいるが、妖精が力を貸してくれ、失敗した事はない。


本来なら、ブロード家が馬車を出してくれる予定だったが、ジェイコブの愛しのエリザベスが私の代わりに乗っている。

何でも、エリザベスは私が階段から突き落として捻挫してしまったらしい。


勿論、身に覚えのない事だ。


知りません、勝手に転けたのでは?と言い切ったらジェイコブには鞄を投げつけられた。


お前以外にエリザベスに手を出す者がいるのか、と。

付き合いは長い筈なのにジェイコブは全く私の事を理解していない。


そんなみみっちい事をするよりも正面から糾弾する方が楽に決まっているだろう。


何にせよ、エリザベスは私のせいで怪我をしたので馬車に乗せる異論は無いだろうと凄い剣幕で捲し立てられたので、面倒に思った私は了承した。

なんて心が広い女なの、私って。


普通、嫌がらせして怪我をさせたら何がなんでも馬車になど乗せずに歩いて帰らせるだろう。


早く記憶の瞳を作らなければ。

エリザベスは日を重ねるごとに私への憎悪を募らせている。

四六時中、私を見張る生徒がいるのがその証拠だろう。嘘を吹き込み、嫌悪を募らせ差し向けたのだ。

生徒たちはエリザベスの為に、正義の為にと思い込んでいるに違いない。


ろくに顔を合わせた事もないエリザベスだが、そろそろ動き出す頃ではないだろうか。

しつこく茶会の誘いが届いている。


男爵家の令嬢が伯爵家の令嬢を誘うなど傲慢にも程がある。

だが、無視し続けている現状、私の評判はどんどん落ち続けている。


ただ非礼を詫びたいだけだろうに、マルティーナは冷酷にエリザベスを無視している、と。


お前ら、同じ事されて同じ対応しないと言えるの?

呆れてしまいそう。結局他人事なのだ。


私が婚約者を奪われ、屈辱を味わう事になるなんて。

しょうもない戯曲を鑑賞し、終いには演者として参加したがる令息、令嬢など。


明日も早めに更新できると思います。時間がある時に書き溜めれたらいいんですけど…。

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