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第58話

「あれは?」

「いや、違うな」


燐音と俺は焦っていた。

放課後になり燐音と小鳥先輩から話を聞いたのだが、その時に見せられた一枚の写真が衝撃的だった。


横たわる東堂姉妹の死体。


それはおびただしい数を誇っており、写真の枚数を数える気にもならなかった。


――――――東堂(とうどう)シスターズ計画(プロジェクト)


小鳥先輩と燐音が調べた結果次のことがわかったらしい。


東堂姉妹と鬼の親和性が高いこと。

それを利用して鬼の力を宿した東堂姉妹クローンの作成計画。

鬼の力を宿したクローンたちは戦うことでその力を増幅していくこと。

戦う相手は燐音クローンと可憐クローンという組み合わせが絶対であること。


そして、隣街近くの地下にこの計画を行っている研究所があること。


それを知った俺は早速動き出した。

まず鬼平にこれに関する情報を聞いたが我王グループは認識していないということだ。

そこは少し安心した。未だ我王羅異堕の膿が出し切れていなかったらと思ったが、そうではないようだ。


ならば早急な解決……非人道的な殺し合いを止めなければならない。

鬼平には我王グループで全面バックアップ体制を敷くようにお願いしたが、なんせ急な話のため数時間ほしいと言われた。


なので、今俺たちができることは小鳥先輩たちが集めた情報をもとに捜査することだ。

さしあたっての目標は、本日行われるであろうシスターズの殺し合いを止めることだ。

この殺し合いは、小鳥先輩たちが情報を集め始めた頃に比べると数が多くなっており、各地で同時多発的におきるようになっているそうだ。


研究所の場所が分かっているので本命を断ったほうが早いだろうという話ではあるのだが、そこは燐音の気持ちを優先した。

クローンとはいえ自分の妹が殺されるのは我慢ならないのだ。


だからこそ俺に協力を要請すると決めた夜。身体の関係を迫ったそうだ。

これは小鳥先輩の入れ知恵があったようだが、男女の関係になり、感情的に繋がってしまえば俺が燐音のクローンが殺されるのを嫌ってくれるだろうという魂胆だったようだ。


そんなことしなくても、東堂姉妹にはお世話になっているから絶対止めるといったら燐音は涙を流していた。

小鳥先輩もこの現状が許せなかったのだろう。一緒に泣きながら慰めていた。


そして、俺の一番の仕事はというと。


「あれだ! どうだ? 抜けそうか?」

「どうだろうな。流石に触れてみないと覇鬼を抜けるかわからないな」


東堂クローンから鬼の力を抜くことと、元凶となっている鬼の討伐。

この二点だ。


ちょうど見つけた東堂シスターズからは覇鬼と呼ばれるものが流れ出ていた。


覇鬼とは。


まあ端的にいうと体内を流れている鬼の力が漏れ出ているものをいうそうだ。

鬼の力を使うやつは必ずといっていいほど覇鬼が出ており、俺の覇鬼は他のに比べて濃厚でハッキリとしているらしい。


「無力化はできるか?」

「一時的には。だが、覇鬼のない私にはあの二人を止める方法は殺す以外にない」


どうも覇鬼を纏ったクローンの動きを封じることは難しく。拘束具などは全て無効化されてしまうようだ。

なので継続的に動きを止めることは難しく、実力行使で一時的に止めることしか出来ないのだ。


「わかった。それで十分だから俺が処置を施すまで頑張ってくれ」


燐音が頷く。

それを合図に東堂シスターズへ俺たちは襲い掛かった。


不意打ちにも関わらずクローンは俺の攻撃を防いできた。


自動反撃(オートカウンター)だ。生半可な攻撃はどこからしても防がれるぞ」


そういいながら燐音は自身のクローンを吹っ飛ばしていた。

なるほど。ちゃんと自動反撃の反応速度を上回らないと通らないのか。


「それにこいつらは結構丈夫だ。ビルを吹っ飛ばすぐらいでちょうどいい」


なんか過激な基準なんですけど! まあ、俺と燐音ならビル吹っ飛ばせる……かな?

とりあえず割と力を入れても大丈夫ということなので、今度は反撃されない程度に攻撃を試みる。

すると、俺の掌底に反応できなかった可憐クローンは壁に激突して床に崩れ落ちた。


「手加減しすぎじゃないか? まさかお前可憐が可愛いからって!」

「そんなわけないだろ! むしろお前が力を入れすぎなんだよ! ビル吹っ飛ばすほどの力はいらないじゃないか」


燐音は不器用なようだ。

アドバイスに従って強めに攻撃するようにはしたが、最初の感触からしてそこまでの力を入れなければならないわけではなかった。


「それで、どうだ?」


燐音の問いかけに俺は頷く。


「大丈夫だ。いけてる」


俺の言葉を聞いた燐音が自身でふっ飛ばしたクローンをこちらに投げつけてきた。

その意図をくみ取った俺は、そのままクローンを抱きとめる。


「ありがとう」


いつの間に後ろに回ったのか、燐音が抱き着いてきた。


(こ、これは! 後ろと前から柔らかいサンドウィッチが!)


まだまだほんの一部だが、俺が燐音達を救えることが証明された瞬間だった。

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