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第54話



――――――必殺必中


東堂燐音の居合とはそういうものだ。

我王羅栖墓に転生してからというもの、相手の攻撃でまともにダメージを貰ったことなどない。

同じ鬼の力を持った羅異堕戦ですら明確なダメージなどなかった。


だが東堂燐音の攻撃は違う。


「がぁ!」


斬りこんでくる燐音の刀を必死で止める。

自分の感覚では完璧なタイミングでの”合わせ”だったが、相手のほうが何枚も上手だった。

抜刀された刀は脇腹を斬り裂き、肋骨の方へ食い込んできている。


激痛に耐えながら俺は東堂燐音の刀へ金平刀を”合わせ”続ける。


「お前……無茶苦茶な」


俺は鬼の力で増幅された力と五感を駆使し、燐音の振るう刀と全く同じ軌道へ金平刀を重ね合わせたのだ。

これが今の俺にできる精一杯の防御方法だ。

鬼のように上がった動体視力で相手の動きを真似するだけに集中するだけでいいので、技術的に負けていてもなんとか首の皮一枚繋がったのだ。


脇腹は無事ではないが。


「逃がさねえぞ!」


そこからは怒涛の連撃を繰り出す。

力を籠める度に血が体から流れ出るのを感じるが、そんなのは気にしていられない。

何故なら先ほどから東堂燐音の殺気が治まらないからだ。


次に居合の準備をされたら死ぬ。

一度目はなんとかなったが、二度目でまた同じことができても今度は致命傷になるだろう。

だからこそ振るう刀を止めることが許されるわけもなく、技術的に勝てるわけもなく、ただただ最速で攻撃を繰り返すのみ。


幸いといっていいのか、東堂の居合に二撃目はなく、一瞬の間に付け込んでこちらのペースへと持ち込めた。

ここからは自分の馬鹿高い身体能力を活かし、圧殺を狙う。


だが、流石東堂といったところだろうか。こちらの力任せの攻撃を難なくいなし始めた。


「お前のその剣。可憐の手ほどきを受けたな? 見苦しい程度の東堂流が入っているな」

「それはお褒めの言葉かな! 姉弟子様!」


俺の言葉に少しむっとしたような表情になる。


「お前のその力任せの剣と東堂流は相性が悪い。やめておけ、まだ自己流で振り回している方が幾分かマシだ」


俺は焦る。

東堂のこの余裕。

すでに全ての攻撃を捌けるという確信。

そして、時間がもたらす俺の敗北。

このままでは血が足りず、出血死を免れないだろう。


それをわざと狙っているだろう東堂がニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「我王、時間がないぞ。どうする?」


燐音の狙いはなんだ?

俺ならどうにかしてくれるという小鳥先輩の言葉……。

私の何がわかるという燐音の気持ち……。


考えても無駄か。

俺は小鳥先輩が何を知っているのかを分からないし、燐音のことなど可憐の姉ということしかわからない。


ならこの状況でできる最大限のことをするだけだ。


「おおおおおーーーーー!」


再び力いっぱいの連撃。

血が飛び散るが気にしている余裕はない。


東堂燐音は俺を試している。

そして我王の特徴といえば、圧倒的なステータス。


もっと強く、もっと速く。

ただそれだけを追及していく。

最早防御など気にしていられない。


「お前には驚かされたな。さらにギアを上げてきたか……だが私が見たいのはそんなものではないぞ?」


やはり燐音は俺に何かを期待しているようだ。

だからこそ引く気はないのだろう。五年もの間家を出てなにかしらの問題を解決しようとした。

だがそれは未だ叶わず。


そんな時に現れた我王 羅栖墓という異分子。

自分でいうのもなんだが、我王は他の人たちとは格が違う。

ラスボスとしてのポテンシャルがいかんなく発揮されており、これから成長してくる主人公への最大の壁となるように仕組まれているみたいだ。


少なくとも、設定上絶対勝てないアンチシステムと斬り合えるほどのおかしさは持っているのだ。


(なんだ……俺すげえじゃねえか)


そう思えるとなんだか体が軽くなったように感じた。


燐音は俺の攻撃を受けるために刀を構える。


(受けた後左下へ流すんだろ?)


俺の予想した通り、燐音は俺の攻撃を左下へ流した。


(なら右側はがら空きだよな!)


圧倒的なステータスを駆使し、俺はわずかに体勢が崩れたような状態から蹴りを繰り出す。

本当にわずかな体勢崩しだが、燐音はそれを上手く利用し俺をコントロールしていたのだ。

それを先読みと身体能力で無理やり崩しにかかる。


「ああ! それだよそれ! 我王! お前のその覇鬼! それが見たかったんだ!」


覇鬼? 鬼のオーラのことか? それなら最初に斬り合ったときには纏っていたと思うが。


「小鳥の言っていたことは本当だったな」


なんか納得してくれたので良かったのだが、それなら俺の蹴りを掴んで止めた手を放して欲しいのだが……。


「すまんな。久しぶりに楽しくて止まれそうもないんだ」


東堂燐音はそういうと、左手に待っていた刀を下から上へと動かしていくのだった。

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