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第50話

 所属するチームを探し小一時間経つがこれといったところは見つからなかった。

 各チーム色々と特色があり面白いのだが、フィーリングというのだろうか何か物足りなさを感じていた。


「なんかなぁ。もっとこう、他とは一線を画すような雰囲気のところはないかな?」

「一線を画すような雰囲気ですか? それなら生徒会長氷室先輩の所属するチームとかになると思いますわよ」


 氷室かぁ……。恐らく学園最強であろう男だ。

 今のところ赤獅子、氷室、この二人が実力的に飛びぬけているという情報はなんとなく聞いている。

 赤獅子は今後戦う機会があるだろうから、狙うべきは氷室の方だろうか。


 といっても必ず強い相手がいるチームでなければならないというわけではない。

 むしろ自分のチームは激弱でも構わない。面白さが大事なのだ。

 それを考えるなら強い氷室や赤獅子と同じチームは避けてわざと敵対すべきか……。


 そんなことを考えていると校舎の窓から気になる建物が目に入った。


「花菱さん、あれは何?」


 近代的な本校舎とは対照的な、オンボロの木造家屋が森林庭園の中にポツンと建っているのだ。


「羅栖墓様よく見えましたわね。言われなければ気づかなかったですが……あれは私にもわかりませんわ」


 謎の建物。それも周りの雰囲気とは一線を画すような状態である。


「これは行くしかないな」


 分からないなら直接乗り込む。これが一番手っ取り早い。

 羅栖墓となってから行動が大胆になっていると思うが、今までを振り返るとそう動いたほうがよさそうという判断でもあるのだ。

 強い力をもって調子に乗りすぎると身を滅ぼしかねないが、逆にその力を怖がるあまり動かなければ失うものもある。


 端的にいうなら動かないのが不安ということだ。


「お兄様は面白そうって思ってますね?」


 千聖が悪戯を楽しむような笑顔で問いかけてきた。


「そりゃあな! あんな目立つ建物何もないわけないからな!」

「目立つ……羅栖墓じゃなきゃ見逃してるレベル」


 そんな見つけにくいのだろうか。俺にはとても目立つ雰囲気に見える。確かに木々に覆われて建物自体は見にくいのだが、近代的な校舎と時代が逆行するような森林は嫌でも目に入ってくるはずだ。


 首を傾げながらも気になる建物へと全員で向かった。


「ごめんくださ~い! 誰かいませんか~?」


 俺が声をかけると屋内からドタバタと何やら慌てているような音が聞こえてきた。

 どうやら中にいる住人が出てこようとしてくれているようだが、タイミングが悪かったのか物が割れるような音もした。


「き、君たちなんのようかな? 見ない顔だけど」


 中から出てきた人物は女の人でバスタオル一枚であった。


「あー、お風呂の途中でしたか。タイミング悪くてすいません校舎からこの建物が見えて興味が湧いたので寄らせてもらったんですけど、よければお話しさせていただけませんか?」

「なるほどなるほど! 是非お話しをしようじゃないか! どうぞ入ってくれたまえ!」


 風呂上がりだからなのか女の人は顔が赤く火照り、俺がお話しを聞かせてくれないかと尋ねると少し興奮気味に招き入れてくれた。

 正直うさん臭さしか感じないが、それがまたこの建物への興味を増幅させてくる。

 ここまできて何もありませんでしたはあり得ないだろうという期待感を胸に扉をくぐる。


 女性は風呂に入る直前だったのか、特に髪などは濡れておらずそのバスタオル姿と散乱した物が慌てていた様子を物語っていた。


「さあさあ、久しぶりの客人で私は嬉しいよ。といってもずっと一人ぼっちでさみしい奴だとは思わないでくれ。これでも一緒に活動しているパートナーはいるんだ」


 このひとは男の俺の前でこんなに肌を露出しても恥ずかしいと思わないだろうか? いや、肌の露出度でいえばこういった服もなくはないが……。


「そうですね。まずは服を着替えて話しませんか? 何かの間違いで見えそうですよ?」

「私の裸ならいくら見られても構わないのだが、そうだねそこの女の子の視線が怖いから着替えてこようかな。少し失礼するよ」


 女の人が見た方向へ視線を持っていくと千聖がにっこりと笑っていた。


「羅栖墓様。私少々お手洗いへいって参りますわ」


 花菱さんがトイレへと向かう。

 特に迷った様子もないのでトイレの場所はすぐわかったのかもしれない。

 待っている間に部屋の中をぐるっと見回してみると、なにやら白衣のようなものが掛かっていた。


「何かの研究でもしているのか?」

「あちらになにやらすり鉢のようなものがありますね」


 何かの研究をしているのだろう、白衣やすり鉢の他に顕微鏡や何かの材料がところかしこに置かれていた。


「やあやあ、待たせたね。お茶も入れたからどうぞゆっくりしていってくれたまえ。ん? 一人少ないようだが……」


 女の人は白衣が標準装備なようで、真っ白な白衣の下にニットの服を着ていた。

 そして、花菱さんがいないことに気付いたようでそのことを口にすると、タイミングよく花菱さんが現れた。


「羅栖墓様! 何やら面白そうなものを見つけましたわ! これ、激しく動いていて何やら湿っぽいですわ!」


 花菱さんがお手洗いから戻り、その手に持ったモノを見た俺たちは一瞬何が起きたのかわからず固まってしまった。


「ギャー! それは片づけ忘れた私の……!」


 女の人が叫んだのと同時に悟った俺は、花菱さんの手にある”大人のおもちゃ”からそっと視線を逸らしたのだった。

お久しぶりです! 更新停止していましたが最終構想がある物語なので再開します。掲載開始当初と文章が大分変っているので順次今に合わせて修正していきます。

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