第32話
「お!あれは東堂さんだな!」
俺がはモニター会場で試合を見ていた。
俺が直接見に行かないのは、東堂さんと花菱さんの試合が被ったりして結果的に全然見れないということになってしまうからだ。
東堂さんは、魔法使いの男の子と戦っていた。
「ん?あの魔法使いなんか幼くないか?」
俺がそう呟くと……。
「お兄様! あの方は中等部からの飛び級で入られたアルフォンス・サルバトーレ様です!」
「うわっ!」
なんと千聖が隣に座っていた。
「いつの間に……」
「フフッ! 悪戯成功ですね!」
千聖は花も恥じらう笑顔で悪戯の成功を喜んでいた。
なにこの子! めっちゃ可愛い! 妹にしたい!
義妹でした。
「あの男の子飛び級って優秀なの?」
「はい! とっても優秀で私たちの年代のトップですよ」
「千聖と同い年?」
千聖は中等部2年である。
「はい! ちなみに魔法使いではなく錬金術師ですよ!」
「え! 土魔法使ってると思ってた。」
「あれは、周りの”物”を錬金してるんですよ。」
「彼体術もすごくない?」
体捌きが見事なのだ。
俺の勝手な想像だが、錬金や魔法などの攻撃方法が間接的なものを得意とする奴は格闘が苦手だと思っていた。
「ええ、でも彼の真骨頂はこれからですよ?」
「真骨頂?」
「はい、彼が天才と言われる所以ですね! 東堂さんには出し惜しみできないでしょうから見れると思いますよ」
そう言っていいると、アルフォンス君が徐々に押され始めていた。
「出ますよ!」
千聖がそういうと同時にアルフォンスの手元が光った。
ガキン!
剣と剣がぶつかり合う音だ。
「ん?剣?」
「はい、彼は剣が得意ですがそれだけではありません」
アルフォンスが距離を取ると、剣を”投げつけた”。
「え? 何で投げた?」
「彼の真骨頂ですよ!」
「?」
俺の頭が? でいっぱいになったとき答えが示された。
なんと、アルフォンスが次から次へと短剣を錬成して投げ始めたのだ。
「ええ! どういうこと?」
普通錬金術というのは周りの物を作りかえる術だ。
彼は何もないところから練成しているように見える。
「彼の真骨頂、空気を短剣に変えることができるんです!」
「く、空気?滅茶苦茶だな!」
「ええ、短剣という制限はあるものの実質無限に作り放題です。」
投げ終わって地面に転がっている短剣は時間が経つと消えていった。
「弾切れがない上に、秀でた体術と剣術で私達の世代で並ぶ者のいない天才ですよ。」
天才とは凄まじいな。
俺も鬼の力は大概だと思っているが、ああいった人物が俺と同じ力を持ったら絶対かてないな。
「お!」
試合の中で動きがあった。
短剣の弾幕を東堂が潜り抜けたのだ。
そのまま接近戦に持ち込もうとする。
「ダメ!」
千聖が叫んだ瞬間東堂の足元が光った。