第11話
「それでこれからどうするの?」
「羅栖墓様と式を挙げますわ!」
「そういうことじゃないんだけど...」
先ほどから花菱さんが首に手を回して離してくれない。
俺にとっての死神が首に纏わりついているのでどうも落ち着かない。
まぁこんなに柔らかい死神なら連れていかれても...
いかんいかん! しっかりせねば! もう少しで冥府へ連れていかれるところだった!
「は、花菱さんと我王君はつ、付き合っているの?」
東堂さんが聞いてきた。
「私と羅栖墓様は結婚を前提としたお付き合いをする前ですわ!」
まるで恋人みたいな言い方だが、付き合う前で結婚を前提としてるのね。許嫁かな?
「じゃ、じゃあまだお付き合いはしていないんだね!」
「残念ながらまだ子供を授かってはいませんわ。」
花菱お嬢様は付き合ったら子供を授かるらしい。
「わ、私にもチャンスが……」
おいおい、まさか東堂さんが俺を? いや、吊り橋効果というやつだろう時間が経てば落ち着くだろうさ。
「東堂さん! 羅栖墓様は我王グループのトップですわ! それを知ってのご覚悟ですか?」
本人を前にやめてほしい話である。
「花菱さん! 今はそういう話じゃなくて、ダンジョン攻略をどうするかだよ!」
「あら、失礼いたしましたわ。そうですね、正直これ以上は無理だと思いますわ。まだ30分残っているとはいえ、疲弊しすぎましたわ」
周りの来栖や網谷もうなずく。
「皆さんもそれで良さそうなので”私達”は戻りながら何かいいアイテムがないか散策をしてきますわ」
「了解」
俺はそれを聞いてその場から去ろうとする。
「あ、あの!」
東堂さんに呼び止められた。
「ん?なんですか?」
「まだ、登るんですか?」
東堂さんがついていきたそうな反応を見せる。
「ああ、ミノタウロスくらいならまだまだ余裕だからね!」
暗に”ミノタウロス如き”に苦戦してるなら来るなということだ。
「あ、その、助けてもらったお礼をしたいのでID教えてもらえませんか?」
勘違いだったらしい。
「ID?いいよ。」
「あ、ありがとうございます!」
「あー!私はまだ教えて頂けてないのに! 羅栖墓様私だけ除け者なんて酷いですわ!」
そう、花菱京香には教えていなかったのだ。
だってお昼とか、お昼以外もしつこく連絡してきそうだったし何より死神に連絡先を知られたくない。
しかし、ここで教えないというわけにもいかず、結局全員と交換した。
ぼっちで始まった攻略で友達ができたようだ。