第10話
ドカーン!
部屋のすぐ隣で待っているので戦闘音が聞こえる。
「扉開くかな?」
ゲーム時代に他の人が戦って待つという場面がなかったためわからない。
「でも、俺が入ることで失敗とかなったら悪いな。」
と、言いつつ扉を開けた。
中を覗き込むと、
「東堂さん!突っ込みすぎず攻撃を受けすぎないで!」
「網谷さん!折をみて下がって回復を!後衛に多少の被弾は許容してください!」
「来栖さんは隙を見て攻撃を!被弾は絶対しないでください!」
花菱京香が指示を飛ばしていた。
できる女って感じだ。
ドレスといえばドレスという服を着ているのだが、戦闘の邪魔にならないようになのかシンプルでタイトな作りになっていた。
お嬢様と戦士を見事に両立させたファッションセンスである。
「ぐあっ!」
盾使いの網谷が吹っ飛ばされ俺が開けている扉のすぐ隣にぶつかった。
「おい、大丈夫か?」
「東堂さん! しばらく前衛は一人で持ちこたえて下さい! 来栖さん網谷さんの治療をお願いしますわ!」
「はっ、はい!」
来栖が網谷の治療に駆けてきた。
前線に目をやると、ボスのミノタウロスがこれでもかと東堂を襲っていた。
確かゲーム時代は来栖が東堂を助けに行ってしまい、網谷の回復を怠って負けてしまう。
この行動により花菱京香に嫌われてしまい、嫌がらせが始まるのだ。
そして、助けられた東堂は来栖を意識するようになる。
原作通りに進みそうなこの状況どうしようか?
と、想い詰めた表情で東堂可憐を見つめる主人公が目に入った。
あのまま助けに行っても助けられないが、女の子とむふふな関係になれる。
何だか妙に邪魔したくなったな。
来栖がついに我慢できなくなり走り出す。
花菱がそれに気づき叫ぶ。
「来栖さん!戻って!」
しかし来栖は聞く耳を持たず突っ込む……こけた。
凄くかっこ悪いが、擁護するとこけたのは俺が足を引っかけたせいだ。
俺は来栖を拾い上げ花菱の足元へ投げる。
「グエッ!」
「花菱さん! 来栖を頼んだ!」
「羅栖墓様! なんで……」
何で入れたかって?
そんなもんは知らん! 入れたのだから入れたのだ!
東堂がミノタウロスの斧を受け止めながら膝をついた。
「よし!これでむふふな展開は阻止したな」
流石に助けないとまずそうなのでミノタウロスを殴る。
バコーン!
巨体を壁にめり込ませながらもこちらを睨む。
ミノタウロスが壁から這い出ようとした。
「許さんよっと!」
飛び蹴りを喰らわせてそのまま壁の住人にしておく。
「ありゃ?」
ミノタウロスが粒子となって消えた。
「弱!」
「あ、」
東堂と目が合った。
「大丈夫か?」
「え、あ、はい。助けてくれてあり…」
「羅栖墓様ぁ~!」
金髪縦ロールが俺に抱き着いてきて東堂の言葉が最後まで聞こえなかった。