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カエシテ。

作者: 愛生

それぞれの過去。失ってから気づいても意味ない、事もないかも知れませんね。

 出会ったのは、もう二十年以上前になるのでしょうか。


友人の紹介で初めて会った日の事は覚えていますか。きっと私は貴方に一目惚れだったと思います。

身長も男性からすれば低い方、けれども顔が好きだった。器が大きかった。怒らない人だった。

 当時、私には数年お付き合いしていた方がいました。両親はその方と結婚をすると思っていた。

プロポーズも受けていたが断り、お別れしました。そして、貴方と出掛けたり、パチンコしたり。

凄く楽しかった。友人同士でパチンコに行く事があった時、貴方は遅れて来ましたよね。

来た瞬間、姿を見つけた時大袈裟かと思われてしまうかも知れませんが、貴方だけ輝いて見えて。

自然と笑みが零れたんです。

 初めてです、誰かをこんなにも好きになったのは。

毎日が楽しかった。些細な言葉でも貴方から言われると胸がググッと締め付けられる程嬉しい。

その時代は携帯なんてまだなかったから自宅の電話で夜は電話して、それだけで幸せと感じました。

男性経験が少ないとは言えない私で、貴方と出会うまではちゃらんぽらんに生きていたけれど、

貴方に出会い、貴方に恋して、本当の幸せを手に入れた瞬間が苦しい。

 

 貴方からのプロポーズの言葉、はっきり覚えていますよ。

結婚してからお義父さん、お義母さんと色々な事がありましたね。

その時も貴方は私を一番に考えてくれ、助けてくれた。温厚な貴方が怒っていた姿忘れません。

なかなか授かれなかった子供。三年目にして私のお腹を選んでくれて、舞い降りて来ましたね。

 つわりが酷かった私が、「ご飯は要らない。食べられない。」と言って家を出て行こうとすると、

貴方は少し怒って、「お前だけの体じゃない。」って引き止められたなぁ。

生まれたのは女の子。名前は、「お前が頑張ってくれたんだから決めな。」と言ってくれました。


 家族三人で出掛けたり、妹夫婦と出掛けたり、私たちの両親も連れて出掛けたり。

楽しい時間はあっという間で、別れは突然来るもの。

老後の約束もしたでしょう?お金も何も要らないからずっと側に居てね。って言ったら頷いてくれたのに。

どうしてこんなにも早くに離れて行ってしまうの。貴方以上の人にはもう出会えない自信しかないよ。

もうこの世に貴方の体は存在しないのに、この気持ちは何処にぶつければいいの。

 人は声から忘れていくらしいよ。本当だなって実感してます。

貴方の事を想わない日はないのに、声だけは思い出せなくなってきました。ごめんね。


 誰よりも優しく、器も大きい。口数は少ないが人に好かれるタイプ。甘党でお菓子が大好き。

ファッションセンスはないし、私が買ってきた服は「派手」と言って着てくれない事も。

子供は嫌いだけど、我が子を溺愛し、娘は見事にパパっ子になりましたよ。今も変わらず。

好き嫌いが多かったね、でも貴方の娘は好き嫌いのしない子に育ちました。


 姿形、もうこの世にありませんが私は今も一番貴方を愛しています。

出来る事なら今すぐにでも逢って、溜まりに溜まった話を聞いてほしいのよ?

最近では、夢にも出てきてくれないなんて意地悪な人。

貴方は今でも私の事を愛してくれているのかな、って考えて寂しくなります。


 寂しいよ。約束したのに破らないでよ。逢いたい、貴方に逢いたい。

ずっと過去に縛られたまま。それでいい、いいんです。でもただ、「カエシテ。」

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