祝福の鐘
「今日はこれで終わるです。お疲れ様でした」
心春ちゃんの合図で今日の合唱同好会の活動は終わり、みんなが帰る支度を始めました。
今日の練習も楽しかったなぁ、なんてことを考えていると、
「さやか、来週の結婚式の話なんだけど……」
菫先輩から予想外の言葉が飛び出しました。
「菫先輩、結婚するんですか!?」
驚きのあまり、紗耶香先輩の返事を待たずに大きな声を出してしまいました。
「うふふ、実はそうなの。ね、さやか?」
紗耶香先輩の腕に抱き着いて、少し照れた様子で菫先輩が答えると、
「……っ、違うわよ。親戚というか、宝条家の分家の娘さんが結婚するの。それで、家柄の関係で私たちも出席することになっているのよ」
頬をほんのり赤くしながら紗耶香先輩が説明してくれました。私はまたはやとちりしてしまったようです。
「そうなんですね、すみません……」
「……わかってくれればいいけど、もう少し落ち着いてくれると助かるわね。菫も、話がややこしくなるから悪ノリしないで」
「はーい」
紗耶香先輩に怒られても菫先輩は楽しそうです。
「いくらなんでも結婚は早いと思うぞ、和音」
「私も同意見ですね。少し考えればわかることです」
当たり前とはいえ、若菜ちゃんと心春ちゃんにも言われてしまいました。穴があったら入りたいです……。
「結婚するなら、やっぱりジューンブライドが憧れよねぇ」
菫先輩、スタイルがいいからウエディングドレス似合いそうだな……。
「ヨーロッパの方の言い伝えらしいわね。結婚や出産を司る女神が守護する月が6月だとか」
「そうなんですか。詳しいんですね」
若菜ちゃんが尊敬の眼差しを送ると、紗耶香先輩は「……別に、普通よ」と言いながら、ちょっとだけ照れ臭そうにしています。
「ジューンブライドなんて、ブライダル業界の陰謀じゃないですか。梅雨の時期に客を確保しようとして、あることないこと言ってその気にさせてるだけです」
なるほど……そんな理由もあるんですね……。
それにしても、結婚なんて、私にとってはまだまだ先の話で、そもそも結婚なんて想像もつきませんが、いつか素敵な人と巡り会って、幸せに暮らせればいいな、なんて思うのでした。