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短編大作選

ヒットマン VS フィットマン

 女社長がいる。誰もが羨む美貌。誰もが好きになる可愛い笑顔。誰もが憧れる敏腕。誰もが腰を抜かすほどの富。そして誰もが度肝を抜かすほどの敵の数。

 僕は彼女のファンのひとり。明るく美しく輝いている彼女。仕事に必要な能力を全て兼ね備えている彼女。しかし危険回避能力はほぼ0といっても過言ではない。僕はそんな彼女の少し抜けているところも含めて好意を抱いている。


 フリーターがいる。誰もが惚れる可愛い笑顔。誰もが惚れる可愛い仕草。誰もが慕う愛嬌。誰もが嫉妬する女性ファンの多さ。誰もが項垂れる頭の悪さ。誰もが驚愕するだらしなさ。誰もが腰を抜かすほどの貧。そして誰もが度肝を抜かすほどの運の良さ。

 僕は彼の天然なところを憎めない人間のひとり。明るく元気で周りを照らしてくれる彼。誰の懐にでも自然に入り込める彼。人を癒す力でいったら群を抜いている彼。しかし社会適合能力はほぼ0といっても過言ではない。僕はそんな彼の少し天然な姿に癒しを貰っている。


 殺し屋がいる。誰もが恐れる顔面。誰もが距離を取る威圧感。誰もが羨む観察眼。誰もが羨む判断力。誰もが息を呑む超一流の銃の腕前。誰もが抱いている優しい心を一切持ち合わせていない薄情さ。そして誰もが度肝を抜かすほどの銃の命中率。

 僕は彼を途轍もなく怖いと思っているひとり。狙った獲物はほぼ確実に仕留めることの出来る彼。誰にも見つからず的確な判断が出来る彼。しかし狙撃での命中率が100といったら過言になる。この世に100%なんてごく僅かしか存在しないのだから。僕はそんな彼から狙われないように毎日大人しく過ごすと決めている。




 女社長は颯爽と歩く。人が溢れ返った街の中を。歩くだけで優しい風が吹き抜ける。誰もが目を奪われ交通は妨げられる。さらさらと靡く黒髪。スッと着こなすスーツ。そして何よりも光輝く柔らかなスマイル。


 フリーターはキョロキョロと歩く。美しい女性が溢れる街中を。歩くだけで何人もの美女が瞳に映る。脳が女性で埋め尽くされ何度も誰かと接触する身体。すぐにひとりの女性に目が止まる。さらさらと靡く黒髪。スッと着こなすスーツ。そして何よりも光輝く柔らかなスマイル。


「お姉さん? 僕と一緒にカフェでも行きませんか?」

「あなた可愛い顔してるわね? いいわよ」

「ありがとうございます」


 殺し屋は平然と歩く。全身を黒で包まれた服装で街を。ターゲットの女社長が人混みに紛れながら颯爽と通り過ぎる。この曜日のこの時間の女社長の順路は決まっている。まず電気屋で店内を一通り見て回る。次に30分ほど漫画喫茶で漫画を読む。そして最後に人気のない路地裏の古本屋に立ち寄る。殺し屋は女社長の行動全てを把握している。女社長が電気屋に向かっていることを殺し屋はしっかりと目で確認した。そして古本屋がある路地裏の近くに聳え立つ、この街で一番高いビルへ移動を開始した。


 僕はもし女社長のような美しい女性が街を歩いていても声は掛けられない。彼女に目は奪われるとは思うが波風は立てたくない。その点では普通に話しかけたフリーターは凄い。彼は明るく元気で僕にないものを全て持っている。そして彼には男の僕でも惚れてしまうような可愛さと愛嬌がある。だから女社長が惚れてしまうのも納得できる。あれだけの美貌を持つ二人が惹かれ合うのは必然と言ってもいいだろう。その点ではあの美しすぎる女社長を見ても好意が芽生えず殺意が全く消えなかった殺し屋が一番凄いと言っても過言ではないだろう。




 女社長が笑顔で話す。モダンな雰囲気のオシャレなカフェで。人が行き交うのを眺めながらオープン席で紅茶を飲む。隣にいる男性に癒されながらケーキのフォークも進む。見通しのいい未来と風景に優雅に舌鼓を打つ。


 フリーターが憎めない可愛い笑顔で女性を見つめる。週に一度は足を運ぶ絶品ケーキが有名なカフェのオープン席で。愛嬌を振り撒きながら、カッコよさと美しさを兼ね備えた女性の魅力を吸収する。行き交う人々に自然体で楽しい姿を存分にさらけ出す。


「まだ時間大丈夫ですか?」

「うん。本屋に寄る予定だったけど大丈夫。こうしていた方が楽しいし落ち着くしね」

「僕もです」


 殺し屋は疑問と冷や汗を垂れ流しながら古本屋を見つめる。少し肌寒いビルの屋上で来るはずの女社長を待ち続ける。屋上の手すりに取り付けられた細長い銃が虚しく佇む。古本屋の明かりが消される。隣の明かりや街全体の明かりもポツポツと消えてゆく。姿を現さない女社長に殺し屋は殺し屋らしくなく、肩を落とした。そして情報収集の欠如を嘆いていた。


 僕はモダンな雰囲気のオシャレなカフェなんて行ったことがない。これからも一生縁のない場所であると自負している。女社長とカフェに行ったフリーターは羨ましい限りだ。女社長には少し気難しい一面がある。彼女は男性や女友達ともそれほど仲良くしない。誰ともあまり深く関わらない。すぐには心を許さずに距離をとる。そんな彼女があんなに笑い、あんなに距離を詰めた。もうフリーターを崇めるしかない。オシャレなカフェに誘い、女社長を笑わせる。彼は女性が喜ぶツボを全て知っているといっても過言ではない。一方で、肩を落とし項垂れる殺し屋。無敵と言っていいほど完璧だった彼のあんな姿なんて一生見たくなかった。




 女社長は建物が少ない道を進んでゆく。周りに高いものや遮るものがほとんどない田んぼ道を進んでゆく。隣に人懐っこい男性を携えながら。女社長はいつもより警戒心が薄くなっている。隣で寄り添う男性に警戒心をとろかされてしまったためだ。笑顔と幸せはどんどん暗がりの奥の方へと消えていった。


 フリーターは隣の女性に程よく甘えながら自宅へと歩みを進める。女性の肩に手を置いたり、時折優しいボディータッチを交えながら。目には薄暗い空の下で美しく笑う女性の姿しか映っていない。周りにあるほとんどのものは二人の中に入り込んでは来なかった。まさに二人だけの世界。何もない田んぼ道には二人の愛だけが溢れていた。


「読書が好きって本当に意外だったな」

「そうですか?あとマンガも大好きなんですよ」

「えっ、どういうマンガが好きなの」

「僕は特に少女マンガが好きなんですけで、家に沢山ありますよ」

「本当に?じゃあ、あれもある?」

「何ですか?」


 殺し屋は何もない田んぼ道を進んでゆく。周りに高いものや遮るものがほとんどない見晴らしのいい道を進む。前には丸見えの男女が二人。他に誰もいない静寂に包まれた道を隠れながら歩いてゆく。女社長を会社から尾行し、ここへと辿り着いた。諦めずに殺し屋は再び女社長の行動を探っていた。ここなら見つからずに撃ち抜くことが出来る。絶好の暗殺環境。殺し屋は隙あらば狙うという気持ちが乗り移った体勢で二人を狙っていた。


 僕は女社長がこんなに無防備だとは全然思ってなかった。普段は男性はもちろんのこと女性とだって距離をとっていたはず。それなのにフリーターの人懐っこさ一本で警戒心を解いたのは驚きである。それに隠してくれるものがほぼないにも関わらず周りにこんなに目を向けないなんて思わなかった。敵が多いのに女社長が無防備なのはどうかと思う。

 この流れだとフリーターが暗殺の黒幕なのかと少しだけ思ってしまった。フリーターが警戒心を解いて殺し屋が銃で狙う。この二人が合うはずもなくそんなことは絶対に無いとは思うのだが。僕もマンガは大好き。ジャンル関係なく幅広く好きでキュンキュンする少女マンガも好き。今のところ、殺し屋が一歩リードしている。このままではフリーターが女社長の心を撃ち抜く前に、殺し屋が心臓を撃ち抜いてしまうかもしれない。




 殺し屋が生い茂る木の陰から二人を見る。銃口を二人へ向けて微動だにせず息を殺す。そして狙いが定まると殺し屋は引き金をそっと引く。辺りには銃声だけが響く。二人はアスファルトへと倒れ込む。殺し屋の口はあんぐり開いたまま。状況を確認し、すぐにその場から立ち去っていった。


 女社長は道の真ん中にいる。男性と寄り添い、笑顔を男性だけに振り撒いて。すると女社長は男性に急に抱き付かれた。そして、じゃれるように地面へと倒れていく。銃声が耳に入ることなく。女社長は誰にも見せてこなかった女の顔を男性に見せる。頭をナデナデされてさらに顔は綻び、女社長からも男性を抱き締めた。


 フリーターは道の真ん中にいる。女性と寄り添い、愛嬌と人懐っこさを女性だけに振り撒いて。好きの感情を抑えずに道の真ん中で急に女性へと抱き付く。自分の家であるかのように。じゃれあい転げている二人の近くを銃弾が通り抜ける。他の音が聞こえなくなるほどの爆音が二人をずっと包み続けている。防音のワイヤレスイヤホンから流れるロックンロールにより二人はずっと二人だけの世界で戯れていた。


「僕はあなたのことが大好きです」

「私も好きよ」

「嬉しいです」

「私も嬉しい」

「さっきの曲どうでしたか?僕が大好きな曲なんですけど」

「私も好き」


 僕は殺し屋が銃でターゲットを外すことなど無いと思っていた。なのに外した。しかも偶然フリーターの行動によって避けられるという形なのは驚いた。弾を一発しか込めないという殺し屋プライドも分からなくはない。でもフリーターと女社長のラッキーを甘くみてはならない。察知されていたかもと思っているような殺し屋の口を開けた顔はヤバかった。殺し屋に運が無さすぎたというよりも、二人の運が良すぎたと言う方が合っているかもしれない。

 銃声ってイヤホンをしていたら聞こえないものなのだろうか。爆音で音楽を流していても銃声なら普通は聞こえそうだが。本当に聞こえないのであれば防音の技術ってすごいんだなって思う。フリーターが偶然避けたのか、それとも凄腕ボディーガードとして近づいて守ったのかは正直僕にも確証がない。そんなことよりも狭い道とはいえ、道の真ん中で耳をシャットアウトしてたら車に轢かれる危険があるので他の人は真似しないで欲しい。

 僕は思う。女社長はフリーターに完全にハートを盗まれていると。もう何をされても許してしまいそうな雰囲気さえ漂わせている。あの女社長がここまで変わるとは思っていなかった。やはりフリーターは凄い。敏腕フリーターと呼ぶべきだ。僕は女性を道に倒しはしないが、美しい女性からなら道に倒されてもいいと思っている。あと、あのイヤホンが防音イヤホンだとしたら絶対に欲しい。さっそく通販サイトで見てみることにする。




 殺し屋は女社長を尾行している。隙あらば女社長を撃ち抜くために。慎重に準備を重ね狙いを定めて一発で仕留める。その方が波風は立たない。しかしこのままではいつまで経っても依頼は遂行出来ない。

 殺し屋は辺りを見回しながら跡をつける。辺りには疎らに人が行き交う。周りに被害が及ばない状態になったら引き金を引く。その時までゆっくりと離れながら二人の後ろを歩く。弾も複数込めた。あとは狙いを定めて放つだけ。

 殺し屋は物陰に潜み、隙を見せたターゲットに向けて銃を構える。しかし二人は走って建物の中へと消えていった。そこは鉄で覆われた立派で頑丈な建物だった。その日の任務は失敗に終わった。


 殺し屋は抜かるんだ道を進む。緑が生い茂る自然豊かな空間をひっそりと。反省点はきっちりと踏まえた。もう失敗は出来ない。証拠を残さないことよりも、依頼を成し遂げることに重きを置く脳みそになっていた。

 殺し屋は周りに何もない草原へと導かれる。そこにはポツンと物置のような倉庫のような建物が立つ。男女は逃げるようにその小さな建物へと入ってゆく。もう逃げ場はない。目撃者になるものはいない。第三者を傷付けることもない。絶好の暗殺日和。

 殺し屋はペラペラの壁一枚隔てた場所にいる二人が出てくるのを銃を構えながら待つ。二人が扉から出てきた瞬間に殺し屋は引き金を引こうとした。しかし、二人は完全防備で姿を現した。

 殺し屋は弾を放つのを躊躇った。防弾チョッキに加え、下も防弾、そしてヘルメットに至るまで全てが防弾仕様になっていた。殺し屋の強い信念もそれらによって跳ね返されてしまった。


 女社長は建物の建ち並ぶ通りを進む。隣にいる愛らしい男性と手を繋ぎながら。周りにはちらほらと人が歩き、次々と鉄で覆われたガッシリとした建物へと入ってゆく。女社長も笑顔で走る男性に手を引かれながら中へと消えてゆく。そこは脱出ゲーム館と書かれた看板が付けられた不気味で怪しげな建物だった。


 フリーターは緑に囲まれた長閑な土地を進む。隣にいる美しい女性と手を繋ぎながら。昔からハマっている遊びが間近に迫り、顔からは微笑みが止まらない。最新の道具たちが詰まった鞄はパンパンに膨れ上がっている。

 フリーターはポツンと立つ倉庫のような建物を見つけると、欲望が抑えきれず走り出す。女性の手を握り、勢いよく建物の中に入ってゆく。逃げ込むように。フル装備へと着替えると二人はサバゲー仲間をキョロキョロと待ち続けていた。


「この前の脱出ゲームすごく楽しかったよね」

「うん、かなり難しかったけど楽しかったね。サバゲーも同じくらい楽しいからさ」

「初めてでどんなものかも分からないけど、凄く楽しそう」

「これは軽いけど、本物の銃弾も防ぐほど頑丈な防弾チョッキなんだ」

「へえ、本格的だね」


 僕はフリーターの運の良さが本物であると確信した。女社長があれだけ敏腕な殺し屋のターゲットであるにも関わらず、これだけの長い期間逃げることが出来ているのだから。頑丈な建物という回避に相応しいものがピンチの場面で登場したり。ピンチのときに頭の先から足の先まで完全に頑丈な防具で覆われるという環境になったり。フリーターのラッキー度は半端ない。

 僕にもラッキーを分けてほしいくらいだ。脱出ゲームが僕も意外と好きだから行ってみたい。でも、一緒に行ってくれるような友達は誰もいない。それに一人でそういう場所に行くのも気が引ける。そういう場所に一緒に行ってくれるような友達が欲しい。フリーターのラッキーを僕の交際運にまわして欲しいみたいなことを思ったりしている。

 僕はこのままでは一生殺し屋は女社長を暗殺することが出来ないと思う。殺し屋の腕がフリーターの幸運を上回るとはどうしても思えない。フリーターのサバゲーのときの銃捌きは見事なものだった。殺し屋に負けないほどの命中率を誇っていた。このままではフリーターが殺し屋を殺してもおかしくないとまで思ってしまっている。サバゲーの腕前が本物のフリーターが殺し屋を殺す方が展開的に面白いし、インパクトもあるなと思い始めてきた。たぶん、そんなことは起こらないのだが。




 女社長はステージの隅にいる。自らの会社の式典のために。見晴らしのいい緑に囲まれた会社の壮大な敷地。その様子は前に集まるギャラリー、取り囲むビルの窓際にいる社員、遠くのビルの屋上にいる人にさえも丸見えだった。その会場にはもちろんあの男性の姿もあった。式典は進み、女社長がステージに上がろうとすると一人の人物が女社長に掴みかかった。


 フリーターはステージ上へと駆け上がる。そして愛する女性にへばりつく女を必死で剥がそうとする。辺りはザワザワが続き、騒然となる。フリーターの元カノと名乗る女の暴走は止まらない。女社長への恨みが更に彼女の身体を活発にさせる。世間でそれなりに有名な女の暴走に緊張感と荒れた空気が共存していた。


 殺し屋は確信していた。今日でもどかしさは終わると。今日で女社長の息は絶えると。殺し屋は遥か遠くのビルの屋上からステージを見下ろす。背景で緑が見守る前方がガラリと空いた空間を見下ろす。女社長がステージの中央へと立つ。周りには誰もいない。銃を構え、慎重に狙いを定める。唾を呑み込む。微妙な調節を行う。そして引き金に手を掛ける。しかし、そこには大きな壁が立ちはだかった。

 殺し屋はどうしても銃弾を放つことが出来なかった。一人の女性が女社長に被る。そしてステージから力ずくで引きずり下ろそうとしている。冷や汗を流し、苦笑いを浮かべ、焦りの色が隠せない。ターゲット以外を撃つことは理に反する。女社長だけしか殺らない。最悪巻き込んだとしてもフリーターまでしか殺らない。そう決めていた。

 殺し屋の後ろからは制服を着た屈強な男達が一気に距離を詰める。殺し屋は一歩も動かず捕まるのをただ待っていた。一本の通報から警察は彼を逮捕するに至った。それは殺し屋がいるビルの関係者からのものだった。


「何かゴメンね」

「私は全然大丈夫だから」

「ただの元カノで今は何の関係もないんだ」

「あれだけ想ってくれる人がいて、モテるってことは凄くいい男ってことだよ」

「僕、他の人なんてもう好きにならない」

「私も」

「あれっ、ない。スマホ忘れてきちゃったかも」

「私とはいつでも繋がっているから大丈夫!」


 僕は女社長を殺そうとした取引相手の女性をよく知らない。でもその女性は女社長のことを勘違いしているのではないかと思っている。優れすぎている、美しすぎている。それは目標にしなくてはいけない存在。殺し屋に殺しの依頼をするなんて言語道断。

 フリーターは頑張る女社長を助けるために神が仕組んだ救世主だと思っている。女社長をナンパしてきたフリーターの自由な行動がこの世界に平和をもたらした。女社長を殺し屋から守ったのは偶然じゃない、必然だ。

 僕はこう思う。女社長は社長でありながら好きな男性になると流されてしまうタイプだと。僕はこう思う。フリーターは優しさや包容力も持っているがほぼ強運だけで生きてきたタイプだと。僕はこう思う。殺し屋は本来は完璧な人間だが何かが崩れたとき、もう元には戻せなくなるタイプの人間だと。そして心配すると焦ってしまうタイプの人間だと。

 僕は警察に殺し屋の居場所を教えた人物がフリーターではないかと予想していた。しかし通報したのはビルの関係者だと言っている。それに彼女の会社の大事な式典にフリーターはスマホを忘れてしまっている。それだけではフリーターが殺し屋のいたビルの関係者ではないと言い切れない。でもスマホを持ってないと電話できないし、たぶん通報したのは誰とも全く接点のないビル関係者だろう。結局、女社長を最後に助けたヒーローが何の関係もないビル関係者だったなんて。

 元カノもヤバイ人だった。あんなに人が注目している式典で掴みかかるとか僕には考えられない。しかも式典のメインみたいな存在である女社長に。その結果、元カノが女社長に被って殺し屋の仕事を遅らせた。まさに悪の正義といったところだろうか。例えるなら、悪い怪獣が街を助けたみたいな感じだろう。僕も活躍したかった。女社長にいいところを見せたかった。僕もヒーローになりたかったけど、なんせ極度の引っ込み思案なもので。

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[良い点] フリーター凄いですね……ナイスフリーター!! [一言] 題名だけ見て、ヒットマンが様々な人の心にフィットするフィットマンと仲良くなる話かな~……という、自分でも意味が分からない予想をたてて…
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