男の人ってこんな感じなんですか?
「じゃあ、そのたくさん書いた感想を読ませてもらおうかな。」
「結構量ありますけど、店の方はいいんですか?」
楓さんは普通にレジで読もうとしたので尋ねてみた。
「いいよ、いいよ。どうせこの時間はそんなにお客さん来ないし。もし来たら美来ちゃんに対応してもらうしね。」
「え!?」
友達もいない私が接客なんてできるはずがない。
本気で言っているのだろうか。
「冗談だよ。」
冗談だった。
「大事なお客さまにそんなことはさせませんよ。こちらに座って待っててください。」
この本屋はそこまで大きくはないのだが座って本を読めるスペースが少しある。
私は言われた通りそこで待つことにした。
感想を読む楓さんの横顔は相変わらず綺麗で、本ではなく楓さんを見てしまう。
さっき大学の講義って言ってたから大学生なんだ〜。いくつなんだろう。好きな食べ物はなんだろう。趣味はやっぱり読書かな? 読書だったらいいな。
見れば見るほど楓さんのことを知りたくなってしまう。
楓さんが私の感想を、私が楓さんの顔を見続けること数時間。
感想を読み終わったのか楓さんが私の方を見て手招きしてきた。
「読み終わったんですか?」
私はレジに向かった。
「こっちちょっと入ってきて。」
なぜか楓さんはレジの中に入れてくれた。
そして楓さんは窓の外を指差しその先には綺麗な夕日があった。
「わぁ! すごいですね。何年もここに来てるのに初めて見た。」
目を細めないと見えないくらいまん丸に輝いていた。
「レジの中からじゃないと見えないみたい。俺も働くようになってから知ったんだ。」
「よかったんですかね? ただの客が見ちゃっても。」
「いいよいいよ。こんな綺麗な景色一人で見るなんてもったいないし。」
確かに一人で見るには勿体無い。大事な人と見たい、そんな景色だった。
「あと美来ちゃんはただの客じゃないよ。大事なお客さん。ってさっきも言ったでしょ?」
「それ、来るお客さん全員に言ってますよね?」
「バレた?」
バレたっていうその笑顔、さっきの夕日より綺麗です。
「あ、でもその中で一番大事なお客さんは美来ちゃんだよ。」
「え?それって………」
「だって一番買ってくれるからね。」
なんなのだろう。男の人ってみんなこんな感じなのだろうか。
「もう!からかわないでくださいよ。」
そう言いながら窓に目をやると、夕日は沈んでしまっていた。
「あっ、夕日。」
「もうこんな時間か、そろそろ店閉めないとね。美来ちゃんも気をつけて帰りなね。」
楽しい時間はあっという間だなぁ。
明日も来ますって言ったら引かれちゃうかな。
「は、はい。じゃあノートを。」
「あ、このノート今日一日借りてもいいかな? まだ感想読めてないし。ダメかな?」
「ぜひどうぞ。じゃあ明日取りにきますね。」
やった。明日も会えるかも。
「ごめん、明日は本屋休みなんだ。」
会えなかった。流石に四日連続は欲張りすぎた。
「だからもしよかったらなんだけど、大学まで来てくれないかな?」
「え?」