可愛いんですか?
次の日
結局楓さんから借りた本は面白すぎて読み終わってしまった。
何でこの作家さんのこと知らなかったんだろうと思うくらい面白い。
「鈴木風太さんか。」
通学中、いつもみたいに本は読まずその作家さんについて調べていた。
しかし何もわからなかった。
作品自体は数冊あるみたいだけどヒット作と言われるほどの作品はないみたい。
「楓さんなら知ってるかも。」
楓さんとの会話のネタが増えたので嬉しかった。
授業中もノートに書くのは楓さんに話す小説の感想。
早く授業が終わらないかと時計ばかり気にするがちっとも針は進まない。
「じゃあ今日はここまで、ちゃんと復習しておくようになー」
やっと終わった。
結局、読書感想文かってくらい感想を書いた。
周りが部活とかに行く中、私は楓さんのいる本屋に急いだ。
「そういえば、一昨日も昨日もいたけど今日もいるのかな? 」
いくらトメさんが倒れてその代わりと言っても本業は大学生な訳で、毎日これるほど暇ではないはず。
「さすがに三日連続でいるってことはないよなぁ。」
そう思うと急に寂しくなった。
さっきまで今日も会えるんだと思っていた分落差が激しい。
ガックシと肩を落としながら、私のためにいてくれるかもしれないという淡い期待を捨てずに本屋に向かった。
本屋に着くと淡い期待は崩れ去ってしまった。
そもそも本屋自体が空いてなかった。
「しょうがないし、また明日来よう。」
帰ろうとした瞬間声をかけられた。
「あれ? 美来ちゃん?」
私はその声がすぐ楓さんのだと分かった。
「ごめんね〜大学の講義が長引いちゃって、もしかして待っててくれてた?」
「い、いえ。 たまたま通りかかっただけなので。」
何でこうも嘘ばかりついてしまうのだろう。
こんなこと言ってしまったら、店に入りづらいではないか。
違うんですよ楓さん。本当はあなたに会いに来たんですよ。
と言いたいけど言えない。
またまたしょうがないから帰ろう。
「そっか、じゃあたまたま通りかかったついでに寄ってかない?」
「え?」
「昨日待ってるって言ったし、本の感想も聞きたいな。」
まさか楓さんの方から誘ってくれるなんて。
ドキドキし過ぎて口から心臓が飛び出しそうだ。
「もしかしてまだ読めてなかったかな?」
固まっていると不安な顔をした楓さんが聞いて来た。
「いや、読んでます! 感想もたくさんノートに書いて来ました!」
そういうと楓さんはフフッと笑った。
「あ、ノートに書くなんて気持ち悪かったですかね?」
今度は私が不安そうに言うと、違う違うと言いまた笑った。
「そうじゃなくて、読書感想文みたいで可愛いなって。」
「か、可愛い…。」
そんなこと初めて言われた。