大丈夫なんですか?
トメさんが入院してるなんて知らなかった。
私は思わず本で隠していた顔を出した。
「大丈夫なんですか? 」
恥ずかしさとかはどうでも良くなり、レジに乗り出し聞いてみた。
「うん。大丈夫だよ。ただの検査入院だから。」
「よかった。」
ホッとしたのも束の間、トメさんが心配すぎてバイトさんの真ん前まで来ていた。
「あっ、すいません。つい興奮して……ってトメ婆? 」
「あれ? 自己紹介してなかった? トメ婆の孫の水原楓です。」
普通のバイトさんだと思っていたけど、お孫さんだったんだ。
しかも顔だけじゃなく名前まで綺麗だ。
「木ノ本美来です。 」
互いにお辞儀をし合った。
「ちなみに美来ちゃんの事はトメ婆からいろいろ聞いてるから何でも知ってるよ。」
「え? 」
トメさんは何を言ったんだろう。
変なこと言ってないといいけど。
「美来ちゃん、友達がいないんだってね。ダメだよ一度きりの高校生活なんだから友達作らないと。」
変なこと喋ってた。
今度トメさんの入院している病院に行って説教しないと。
「でも、トメ婆は美来ちゃんならきっと友達できるっていつも言ってる。」
大福ぐらいは持っていってあげようかな。
「で、今日は何か買いに来てくれたの? それとも昨日の買った小説の感想を言いに来てくれた? 」
「昨日の小説、すごい面白かったです。まだ買ってから1日しか経ってないのに何回も読み直してます。」
何でだろう、さっきまで緊張してたのにトメさんの孫だと思うと喋れる。
「それはよかった。」
楓さんは笑ってそう答えてくれた。
それが嬉しくてその小説の感想を延々と伝えた。
「まだ1日しか経ってないのにすごいね。 そんなにハマってくれたんだ。」
「すいません。こんなに語ってしまって仕事の邪魔ですよね。もう帰りますね。」
やってしまった。
いくら相手も本好きだからって、ここまで語られると引かれちゃうよね。
「あ、待って。」
帰ろうとドアを開けた私を呼び止めこちらに来た。
「これ、読んでみて。」
そう一冊の本を渡された。
「正直お客さんあんまり来ないから暇なんだよね。だからまた感想聞かせてくれないかな? 」
渡された本は今日語りに語った本と同じ作者の本だった。
「は、はい! 帰ってすぐ読んで明日また来ます! 」
正直二日連続で夜中まで本を読むのはキツイと思う。
「そんな急がなくてもいいけど、美来ちゃんが来るの楽しみに待ってるね。」
そんなこと言われたら何が何でも明日感想を言いに来ます。
とドキドキ高鳴る心に誓った。