出会いですか?
「いらっしゃい、あ、もしかして美来さんですか? トメ婆から聞いてます。 ゆっくりしていってくださいね。」
私はびっくりしてしまい、お辞儀をして逃げるように小説コーナーに行った。
(新しいバイトの人かな? でもトメさんそんなこといってなかったしな。)
とりあえず気まずいのですぐ目当ての本を手に取りお会計をすることにした。
バイトであろう男の人が本にカバーを付けている間、私はその人のことをじっと見ていた。
黒縁のメガネをかけており、短くも長くもないちょうどいいぐらいの黒髪で顔は女性のような綺麗な顔をしていた。
「お待たせしました。」
カバー付けが終わったので声をかけてくれたのだが、見とれていた私は気付かず無視していた。
「あの大丈夫ですか?」
「ひゃい! 」
急にバイトさんの顔が近くに来て、変な声を出してしまった。
今、私はすごく顔が赤くなっているに違いない。
「はいこれ。」
本を渡されたので受け取った。
「今日でた新刊だね。読み終わったら感想教えてね。」
一刻も早くここから出たかった私はとっさに頷いてしまい、本屋をでた。
「ありがとうございました。」
本屋をでて深呼吸をし、落ち着くことにした。
「スーハー。」
男の人と話すのなんて、パパと先生も抜いたら3年ぶりくらいだった。
正確には一方的に話しかけられていただけだったのだが。
「かっこいい人だったな。」
ふとそんな言葉がこぼれ落ちた。
「トメさんなんでいなかったんだろう? まぁ今度会った時に聞いてみよ。」