表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

禁止裁判

 「き、禁止カードって、いったい・・・。」

 

 長老の話を受けての俺の質問は、少しバカっぽいものかもしれなかった。もちろん俺も禁止カードが何なのかは知っている。強すぎて環境を壊してしまい、メーカー側から使用を禁止されるカードのことだ。だが、こちらの世界、見たところモンスターたちが住んでいる世界で、禁止カードとはどういうことだろう。それに、なぜカードメーカー「オオナミ・ロード」の名前を、この世界の長老が知っているのだろう。

 

 「ふむ、なにから説明したらよいだろうか・・・。我々が今いるこの世界は、おぬしが元いた世界とは密接につながっている。だからこそわしも向こうの世界のことを少しばかり知っているわけだが。こちらの世界の活力は、向こうの世界での我々の存在感に大きく依存している。平たくいうと、向こうの世界で我々のカードが売れれば売れるほど、我々の世界の活力は大きくなっていくのだ。」


 話をより深く聞くと、長老のいう活力とは、モンスターたちの活力のほかに、太陽の日照時間や、農作物の収穫量などにも関わってくる概念のようだ。要は俺が元いた世界で「ファイトマスターズ」のカードが売れれば売れるほど、こっちの世界は発展していくということだろう。

 

 「向こうの世界で実際にカードをプレイしていたおぬしはよく知っているであろうが、ゲームのバランスを崩すカードが長く環境に居座った場合、そのカードゲームの売り上げは大きく落ちる。プレイヤーたちがその環境、デッキに多様性の無さに飽き飽きし、ゲームをやめてしまうからだ。そうなるとこの世界の活力はガクッと落ちる。現にちょっと前までこの世界の惨状はひどいものだった。日照時間は4時間ほどしかなく、皆がふさぎ込んでおった。こうした状況を変えるために動いているのが、上位統治者という存在だ。」


 「そ、それってもしかして、『大砲機械兵・キャノ』が禁止になる前のことですか?」

 「大砲機械兵・キャノ」。数か月前に禁止されたそのカードは、その制限改定前に猛威を振るっていた。キャノとあと何枚かのカードを組み合わせることで、簡単に1ターンだけで相手を倒せてしまうのだ。やっている方は気持ちいいかもしれないが、やられた方はたまったものではない。

 

 キャノのコンボが流行り出してすぐ、環境はキャノ一色になった。猫も杓子もキャノデッキ、という感じだった。そんなゲームが人を惹きつけられるわけはない。キャノの禁止前、「ファイトマスターズ」の売り上げはみるみる落ちていったのだった。


 「その通りだ。売り上げの悪化、すなわちこの世界での活力の衰退を招いたキャノは上位統治者『オオナミ・ロード』に目を付けられ、禁止カードに指定され、地の底に落とされた。わしの頭の中にはキャノが禁止カードに指定される『禁止裁判』の様子が鮮明に残っておる。わしの能力の一つ、『記憶転送』を使っておぬしにもその映像を見せてやろう。」


 そういって長老が目をつむると、俺の頭の中に一つのイメージが浮かび上がってきた。


 浮かび上がってきたのは、ある建物の中の映像だった。その建物の作りは、俺が元いた世界の裁判所に似ているものだ。証言台に当たるような場所にいるのは、俺もよく見たことのある存在、「大砲機械兵・キャノ」だった。


 「お、俺は悪くねえ!!俺はやらされていただけなんだ!!誰がすき好んでワンキルなんてしたいと思うんだ!!俺ははめられたんだ!!利用されていただけなんだ!!俺は悪くねえ!!俺は悪くねえ!!」


 キャノはそう言って証言台で喚き散らしている。その様子はむしろ哀願と言ってよいかもしれなかった。いや、それでも俺はお前に何度もワンキルされたこと今でも恨んでるけどな。


 そんなキャノの悲痛な叫びを聞いているのは、裁判長席に当たる場所に座っているスーツ姿の男性だ。機械兵であるキャノとスーツ姿の男性が対面している図はとてもアンバランスだ。大きな眼鏡が反射する光で、男性の表情はほとんど読み取れない。彼が上位統治者集団、「オオナミ・ロード」の一人だろうか。男性が口を開いた。


 「判決。『大砲機械兵キャノ』、禁止。」


 「ま、待ってくれ!待っtうああああああ!」


 判決が下された瞬間、キャノの足元に大穴が開き、キャノはそこに吸い込まれるように落ちていった。キャノが落ちた後のその場所は、水を打ったように静まり返っていた。これが長老から送られた記憶のすべてだった。


 「これが『禁止裁判』だ。禁止を宣告されたものがどこへ行くのか、どうなるのかを知るものはいない。はっきり言えるのは、禁止を宣告されたら終わりということだ。さっきも言った通り、おぬしの能力は強すぎる。『オオナミ・ロード』に目を付けられたら、おぬしもキャノのような運命を辿りかねないのだ・・・。けっしておぬしの能力はみだりに使ってはならん・・・。」


 長老から告げられた衝撃の事実。どうやらこの能力をフルに使ってのハーレム形成は、俺のかりそめの夢だったようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ